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- / ISBN・EAN: 4523215060882
感想・レビュー・書評
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1時間40分の宗教曲のよう。
心洗われます。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
文化の違いがあって、敬虔と言う言葉を真にわかるわけではないが、そういう人たちの心が喜ぶことの中に美味しいものを食べるもはいってるということ。
カトリックがわかれば、もうちょっと深くわかるのかも。 -
デンマークの寒村で神に仕えて慎ましく生きる老姉妹と何十年も代り映えない生活を続けている老いた住人達。
前半はそんな彼らの人生におけるイベントがいくつかピックアップされ、現状の閉塞感や排他的な雰囲気を観ている人に丁寧に伝えていきます。
後半は、前半ほとんど目立たなかった「バベット」の独壇場です。老姉妹ではなく、戦争の中、ある伝手で姉妹を頼ってきた女性なので、タイトルの人物なのに後半まであまりエピソードもなくどういう事かと思っていたくらいでした。
内向的でコミュニティとしても限界を迎え始めていた住人たちの心が、元超有名店のシェフだったバベットが作る料理によって、ゆっくりとほぐされて、優しくなっていく様子、生を取り戻した姿に、静かな感動を呼び起こす作品でした。 -
19世紀のデンマークの辺境の村にマーチーネとフィリパの老姉妹と、家政婦のバベットの住む家がある。
姉妹は牧師だった亡父の教えを受け継ぎ、貧しい人達への施しで生きている。
美しい姉妹には、若い頃に求愛者がいた。姉のマーチーネに惹かれたのは地元で謹慎中の遊び人騎兵隊隊士のローレンス。姉妹と触れ合うことで清冽で敬虔な生活に憧れを見出すが、姉妹の父が解く神の言葉に自信を失い立ち去る。
妹のフィリパの前に現れたのは、高名なフランス人バリトン歌手アシール・パパン。精神的行き詰まりから旅行に出た村で美しく賛美歌を歌う彼女に惹かれた。だが自分の心が動くことを怖れたフィリパはパパンの出入りを断った。
宗派の教えでは、人間に愛や欲を否定している。父は娘たちがただ施んしなどの善行と神への信心だけで生きることがこの世の使命だと思っている。姉妹はこうして誰の求愛を受け入れることなく年老いていった。
35年後。パパンからの手紙を持った中年女性が現れた。それがフランス人女性で料理人のバベットだった。パリ市街戦で家族も家も失ったバベットは身一つで生き残り、親戚のいるデンマークに渡る。それを知り合いのパパンが、姉妹に手紙を託して頼らせたのだ。
パパンからの手紙はいまだにフィリパへの慕情に溢れていた。美しい想い出。あなたの歌声は今でも心に響いている。きっとあなたは愛しい子どもたちに囲まれて穏やかな生活を送っているのだろう。今自分は孤独な老人だ。だが天国で私はあなたの歌をまた聞くことができる。人生は墓場で終わりではないのだ。
その手紙を懐かしく読む姉妹。彼女たちも家族など作ってはいないのだ。
姉妹は相変わらず信者の集まりを続けていたが、新たな信者は増えず、昔ながらの村人たちは年を取り頑固で過去の諍いを思い出して揉め事を繰り返していた。
そこで姉妹は、懇親のため亡父の生誕100周年と称して軽い集まりを催すことにする。
そんなときにバベットに手紙が来る。
パリにいた頃に買った宝くじの1万フランの大金に当選したというのだ。姉妹は彼女のために喜びはするが、複雑な気持ちもあった。きっと彼女はこの家から出てフランスに戻るだろう。老境の自分たち二人で信者たちの面倒を見られるのだろうか。
バベットは、姉妹に「お父様の生誕祭で、本格フランス料理での晩餐会にさせてください」と願う。そして「費用は全部出させてください。この家にきてから初めてのお願いです」と説得する。
数日後、合わせて12人の晩餐のために、バベットが買い付けた山程の食材が運び込まれる。
生きたままのうずらやウミガメ、まるごとの豚、見たことのない多くの野菜、新鮮そのものの果物、最高級のワイン。
だがそれを姉妹や村人たちは複雑な気持ちで見守る。
慎ましい生活を送る辺境の村ではみたことのない食材は、あまりの贅沢に感じた。邪悪な力すら感じるくらいに。
姉妹と村の人々は、「贅沢な食事に惑わされて悪魔の囁きに負けてはならない。料理は、食べるが味わうことはしない。話題にもしない」と誓い合う。
辺境のカトリックの教えは「天国に持っていけるものは人に与えたものだけ」なのだ、贅沢など決して味わってはいけない。
晩餐会の噂を聞いたパリの将軍から「牧師に世話になったので」と参加の申し込みが来る。
それはかつてマーチーネに心惹かれたローレンスだったのだ。ローレンスはマーチーネと離れたあと、反動のように出世に生きていた。だが心は虚しかった。はたして自分の人生は正しかったのだろうか。その答えを見つけたい。
そして晩餐会の当夜。
調理場面がね、よいのですよ。
うずらの毛をむしり、パイに詰めてトリュフを飾る。
パンケーキにはラップ理のキャビアとクリーム
貝をソースで思いっきり煮詰める。
ケーキに果物とシロップを飾ってゆく。
これを田舎の狭いがいかにも使い込まれた台所で、バベットがたった一人で切り回すその手際の良さ、無駄がないが優しい動き。思いっきり自分のできることをする、あとを考えずに自分のすべてをつぎ込む。楽しかっただろうなあ。
台所の隅で、将軍の御者もしっかりおもてなしされ、すごく満ち足りた顔して味わったり、ちょこちょこと手伝っている姿もなんかいい。
サーブするのはバベットの甥っ子なんだが、バベットがしっかり指示して甥っ子も働き者で、お客さんの残り物をちょこっと味わったり、うん、いかにも家庭の優しい食卓。
だが村人たちは、その料理に最大限の警戒心を持って接する。
一人料理の素晴らしさを称賛するローレンス将軍。最高級のワインにシャンパン、最高級の食材、本物の本物。そして思い出す。かつてパリで称賛された女料理人がいた。この料理はまさに彼女の作ったものだろう。料理を恋愛にさせる腕前。精神と肉体の欲を同一にさせる腕前。
名誉と出世に生きた自分の選択が正しいのか間違っているのかもうそんなんことはいいのだ。神の恵みは無限大。それをを感謝の気持で受け入れよう。神の愛に条件など無い。選択したものも、拒絶したものもすべて与えられる。
最初は頑なに料理を楽しむことを拒絶する村人たちだったが、そのあまりにも見事は料理と、ローレンス将軍の称賛に、徐々に雰囲気が柔らかくなる。過去の諍いも笑いながら打ち明け合い「知ってたよ。自分もやってやったからおあいこだよ」なんて笑い話になる。
ローレンスは別れ際マーチーネの手を取り告げる。
ずっとあなたのことを思っていた。体は離れているが心は繋がっている。これからもあなたを身近に感じ続けるだろう。
客は帰り、だが温かい雰囲気の残る台所で、姉妹はバベットに、すばらしい料理だった。お客様も喜んでいた。パリに戻ってもあなたを忘れない、と告げる。
だがバベットは静かに答える。パリには戻りません。待っている人もお金も有りません。宝くじの1万フランは全て使いました。芸術家として生きることは、生活が貧しくても心は豊かです、という。
そう、宝くじの1万フランは、かつてバベットが努めていた高級ホテルでの12人分ぴったりだったのだ。
そこの常連が歌手のパパンであり、彼は「世界中で芸術家の心の叫びが聞こえる。最善を尽くす機会がほしい」
こうしてデンマークの辺境の村の夜はふけてゆくのだった。 -
フランスから戦争で疎開したデンマークの漁村は、信者が減り老人しかいない先細りする新興宗教的(教祖を娘二人の父とする)の限界地域。そこで給料もいらないと20年女中として働くバベットが宝くじを当てた。姉妹は彼女が晩餐を用意したいという初めての望みに答えるが、見たこともないような悪魔的食材に驚くも……
デンマーク映画初めて見たかもしれない。ちょっと自虐的で、そういう国民性を描く映画、めちゃくちゃ好きだ。終わりよければすべてよしな人生になりたいわね。おそらく父に結婚を禁止され、貞操を貫いてきた姉妹にはそれぞれ父を裏切れる機会もあったが、それをしなかった。そんな彼女たちは10代と同じ生活をおそらく変わらずずっと続けている。まさに修道女である姉妹のところに避難してきたバベットは、居場所がないフランスから疎開してきた存在である。記憶に残る晩餐をひらき、そしてその晩餐を経験したすべての人を幸せにした。食事の力とは、信仰の力とは。バベットが姉妹に仕えて20年。その語らないストイックさが、愛情が、波のように響いてくる作品です。名作。 -
ずっと以前に晩餐会の場面から見た事があった。なにやら貧しそうな村で老人ばかりが集まりバベットと称する女性の作った豪華なディナーを食べている。食べ終わった後はみな幸福感を感じた、というものだった。おいしい食事のもたらす幸福感は途中から見ても感じた。今回最初から見て、そのおいしい食事のもたらす幸福感は同じく感じたが、その経緯とかがわかり、ちょっと疑問に感じた事があった。
ユトランド半島の寒村。教義を開いた父の教えを老姉妹が今も守っている。晩餐会に至るまでには実に49年の月日が流れている。1836年、1871年、1885年と、姉妹の若かりし頃の恋愛、バベットがやってくる、そして晩餐会だ。
晩餐会は、妹の元思い人パパンの紹介で住むことになったバベットという元料理人が作った料理に、姉の元思い人の軍人も招いてあり、父の生誕100年記念行事でもあった。
疑問1 姉妹の父は家庭を作ることを重視しない教えを創始したが、自身では姉妹を設けているのに、姉妹の恋人には暗に去ることを求めた。これは矛盾ではないか。姉妹は父の教えに囚われすぎ、自身の家族を作る、という別の幸福を父によって逃されてしまったのではないか。
疑問2 姉の思い人の軍人は、姉妹の父の教義に触れなにやら無常感を抱き、自ら教会を去った。しかしそこには暗に父の去れ、という空気を感じる。が、軍に戻ると名家の娘と結婚した。だが49年たって姉に会うと、やはり姉こそ思い人だ、という描き方。軍人の妻は愛の無い結婚をされたのか? 名家の娘がかわいそうではないか。
ユトランド半島、1800年代で描かれたこと。
・ユトランド半島というのは辺境であるらしい
・ユトランド半島の寒村に住む人たちの食事は簡素、というより粗食。特に主人公姉妹の食事はバンをビールで煮込んだものと魚のスープ。それに比べパリではバベットの作ったようなフルコースの宮廷料理があった。
・漁村であるから、何か白身の魚が干してある。が、その魚でとてつもなくおいしい食事を作っているわけではない。
しかしこれらのことを差し引いても、バベットの晩餐会の食事には目をみはる。特にウズラのパイ。かりかりにローストされたウズラの小さな頭を軍人がぱりぱりと歯で噛む。これが印象的。
原作者はカレン・ブリクセンの同名小説。ブリクセンは映画「愛と哀しみの果て」の原作者でもあり、アフリカでの生活を描いたそれは自伝的作品。でなんとデンマークの紙幣の肖像になっていたということだ。
1987デンマーク
2021.9.12BSプレミアム -
テレビで放映されたので、久しぶりに見た。
クスッと笑うシーンもあり、秋の夜長にはよい作品。
おいしい料理は人を幸せにする。