山月記

著者 :
  • TRkin (2012年9月27日発売)
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感想・レビュー・書評

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  • 短いのになんだかぐっときた

  • 短い詩集のような本なのにとっても幻想的で刹那的で美しいです。

  • 人間誰しも李陵的なもの持ってるよね。

  • 李徴ヨリノケイショウヲキク

    曰く、
    「今思えば、全く、己は、己の有もっていた僅わずかばかりの才能を空費して了った訳だ。人生は何事をも為なさぬには余りに長いが、何事かを為すには余りに短いなどと口先ばかりの警句を弄ろうしながら、事実は、才能の不足を暴露ばくろするかも知れないとの卑怯ひきょうな危惧きぐと、刻苦を厭いとう怠惰とが己の凡すべてだったのだ。己よりも遥かに乏しい才能でありながら、それを専一に磨いたがために、堂々たる詩家となった者が幾らでもいるのだ。」

  • 今、読むと虎になった原因に耳が痛い。

  • ・己は詩によって名を成そうと思いながら、進んで師に就いたり、求めて詩友と交って切磋琢磨に努めたりすることはしなかった。かといって、又、己は俗物の間に伍することも潔しとしなかった。共に、我が臆病な自尊心と、尊大な羞恥心との所為である。
    ・己は次第に世と離れ、人と遠ざかり、噴悶と慙恚とによって益々己の内なる臆病な自尊心を飼いふとらせる結果となった
    ・人生は何事をも為さぬには余りにも長いが、何事かを為すには余りにも短いなどと口先ばかりの警句を弄しながら、事実は、才能の不足を暴露するかも知れないとの卑怯な危惧と、刻苦を厭う怠惰とが己の凡てだったのだ

  • 最初に読んだのは高校生の時だが、何度読んでもやはり名作。自分への戒めにしたい本。
    李徴が「失敗の科学」を読んでいれば虎になることはなかったかもしれない。
    「臆病な自尊心と尊大な羞恥心」。

  • 文章が芸術的に綺麗。

  • 何故こんな運命になったか判らぬと、先刻は言ったが、しかし、考えように依よれば、思い当ることが全然ないでもない。人間であった時、己は努めて人との交わりを避けた。人々は己を倨傲だ、尊大だといった。実は、それが殆ど羞恥心に近いものであることを、人々は知らなかった。勿論、曾ての郷党の鬼才といわれた自分に、自尊心が無かったとは云わない。しかし、それは臆病な自尊心とでもいうべきものであった。己は詩によって名を成そうと思いながら、進んで師に就いたり、求めて詩友と交って切磋琢磨に努めたりすることをしなかった。かといって、又、己は俗物の間に伍することも潔しとしなかった。共に、我が臆病な自尊心と、尊大な羞恥心との所為である。己の珠に非あらざることを惧れるが故に、敢えて刻苦して磨こうともせず、又、己の珠なるべきを半ば信ずるが故に、碌々として瓦に伍することも出来なかった。己は次第に世と離れ、人と遠ざかり、憤悶と慙恚とによって益々己の内なる臆病な自尊心を飼いふとらせる結果になった。人間は誰でも猛獣使であり、その猛獣に当るのが、各人の性情だという。己の場合、この尊大な羞恥心が猛獣だった。虎だったのだ。これが己を損い、妻子を苦しめ、友人を傷つけ、果ては、己の外形をかくの如く、内心にふさわしいものに変えて了ったのだ。今思えば、全く、己は、己の有っていた僅かばかりの才能を空費して了った訳だ。人生は何事をも為さぬには余りに長いが、何事かを為すには余りに短いなどと口先ばかりの警句を弄しながら、事実は、才能の不足を暴露するかも知れないとの卑怯な危惧と、刻苦を厭う怠惰とが己の凡てだったのだ。己よりも遥かに乏しい才能でありながら、それを専一に磨いたがために、堂々たる詩家となった者が幾らでもいるのだ。虎と成り果てた今、己は漸くそれに気が付いた。それを思うと、己は今も胸を灼かれるような悔を感じる。

  • 読んだことがあることに読んで気づいた。
    好きな文の流れ。

    「如何にも自分は隴西の李徴である」
    と、応えるところが鋭利で切ない。

    臆病な自尊心と尊大な羞恥心
    この2つを自覚しているだけで李徴は立派。
    気付いていない人間が大半なのに、僅かな人間の心が戻る時間に考え李徴は気付いている。

    己の志を先にし、妻子のことを後で話したことに対する反省。
    そして、もうこの道を通らないで欲しい、という忠告。とどめに自分の姿を晒すことへの優しさ。責任感の強さ、潔さ。

    ラストは、文字なのに絵のように美しい。

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著者プロフィール

東京都生まれ。1926年、第一高等学校へ入学し、校友会雑誌に「下田の女」他習作を発表。1930年に東京帝国大学国文科に入学。卒業後、横浜高等女学校勤務を経て、南洋庁国語編修書記の職に就き、現地パラオへ赴く。1942年3月に日本へ帰国。その年の『文學界2月号』に「山月記」「文字禍」が掲載。そして、5月号に掲載された「光と風と夢」が芥川賞候補になる。同年、喘息発作が激しくなり、11月入院。12月に逝去。

「2021年 『かめれおん日記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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