- Amazon.co.jp ・電子書籍 (394ページ)
感想・レビュー・書評
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夏目漱石の小説は小中学校の国語の教科書で取り上げられている小説のように口語調で書かれたものばかりではない。「草枕」や本書のように文語調で書かれたものもある。これまでに読んだ文語調で書かれた漱石の小説は、理解できない言葉や文章に少なからず出くわし、ひっかかりひっかかり読み進めなければならない。それでも、会話と会話の間の登場人物の心理戦、自然、世俗、人物像の描写がとても面白い。この小説では会話における心理戦の描写と、「Aはイである。Bはロである。Cはハである」のフォーマットを繰り返し適用した世俗の描写が卓越している。Kindleでマーカーを引いたところ数知れずである。
本にはいろいろな楽しみ方があると思う。ストーリーを楽しむもの。僕はシャーロックホームズシリーズや山崎豊子の小説が好きだ。次に表現の美しさを楽しむもの。川端康成や夏目漱石の小説がいい。そしてストーリーと表現が一体となって作り出す世界観を楽しむもの。安部公房、江戸川乱歩(探偵物も書いているが奇怪・変態物がいい)、太宰治などを僕は愛読している。村上春樹は最近の性的描写が前面に出る傾向が受け入れられなくて読むのをやめてしまった。
「虞美人草」は美しい文が散りばめられた上に哲学・思想的会話が挿入され、更に会話と会話の間に心理戦が繰り広げられる。朝日新聞に連載していたということもあろう、即興の落語のようにこれらが繰り返されて最後の「オチ」でちょこっとした変化をつけてストーリーがようやく形づくられる。だからストーリーの印象は弱く、ストーリーからメッセージを読み取ることは難しい。途中の文章の中に共通して繰り返し繰り返し出て来る何かにメッセージが隠れているのかもしれない。その何かは分からないが、部分部分を味わうだけでも僕には十分であった。 -
百折れ千折れ(ももおれちおれ)
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今年最初の本はこれ~~。夏目漱石の処女作。
すげ~~。初めて書いたとは思えない出来。さっすが文豪は出だしから違うのねぇ。
まぁ、前半はちょっと難しい文体で書かれてて、後半になると読みやすくなるのは、まぁいいとして。。。
藤尾親子の計画的乗っ取りよりも、小野って男はほんといい加減な奴だなぁと思った。小野さえしっかりと小夜子だけみていたら、こんな騒動は起こらなかったのにねー。
私だったら宗近を選ぶけどね~。
でも最後は一応めでたく終わって良かった!
読んでて、人生の指針みたいな事がいっぱい書かれてて、新年早々、頭を使ったわぁ。 -
「虞美人草」(夏目漱石)を読んだ。これはまだ読んでなかったんだよな。『大仰な』といえば言える文体ではあるけれど、まあ何と言っても百年前の小説だから。それに会話の部分はさすが漱石だし。筋書そのものはそんなに奇抜ではなくむしろ普遍的な感じではあるけれど、面白かったし、私としては好き。
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家父長制に自分なりのやり方で挑み敗れた藤尾よ
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悪女が怖い作品と聞いていたが、通して感じたことは、小野の方がよほど悪い。当時はこれで良しとされていたのだろうか?今では藤尾や義母のような考え方はする人はいるだろうと思う。だからこそ、そのギャップが面白い。宗近がいなければ、この作品はどのような顛末を迎えていただろうか。「真面目」を語る下りは私自身の心を打つものでもあった。「真面目とはね、君、真剣勝負の意味だよ」「真面目と云うのはね、僕に云わせると、つまり実行の二字に帰着するのだ」素敵な言葉だと思う。年に一度くらいは、真面目にならなければ。
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読了
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面白かった〜!
小野さん、おいおい。
義母さん、あなたが悪い。
宗近君、かっこよすぎ。糸子さんも素敵。