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感想・レビュー・書評
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陰謀論に根拠はないことを認識するのはとても重要。明治期から現代まで日本で噂される陰謀論を、その論者が根拠とするものが虚構であることを説明している。
筆者の主張には大いに同意するが、一方で気になる点もある。そのような陰謀を信じてしまって行動した結果として歴史が動いてしまったことはあるのではないかということである。例えば近衛文麿の言説や、コミンテルンの陰謀論を切って捨てている点である。陰謀を実行する人たちはそのものは誇大妄想主義者だろうが、ヴェノナにあるような陰謀の実行者に接していた人たちがどのようなリアクションをとってしまったかは考察の余地があるのではないだろうか。
例えば筆者が切って捨てた近衛文麿の発言は、自分自身がゾルゲ事件に巻き込まれて政策判断を誤ったと考えていたためだとすれば、やはり陰謀が歴史を動かすこともあるといって差し支えないとも思える。
ただ、同時に重要なのはそのような陰謀は結果からみて過大評価されているにすぎないということで、だれかの思惑による行動がずばり実現したような大層な代物ではないということであろう。
陰謀論の恐ろしさは陰謀そのものではなく、実際に権力をもつ意思決定者がそのような陰謀が存在すると信じてしまって判断を誤ることにある。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
歴史が苦手ながらなんとなく陰謀史観には惹かれてしまう。
今、流行っているものをなんとなく概観したくて購入した。
歴史苦手なのでどっぷり陰謀史観にハマることもないが歴史関連本を読むのにも四苦八苦してしまう。歴史をおさらいした上で再読しようと思う。
終章の陰謀史観の特徴はとても有用だった。 -
したり顔で「実は知っている人は知っている話だけれど・・・結局ヤツらが世界の政治・経済を牛耳っているのだ」との話を聞くことが多い。この種の話題に対しては、なんて返せば良いのか未だわからない。(戯れ言としての発言ではなく、結構マジ顔で言われるので。。。)
そういう思考停止の都合のよい解釈は、荒唐無稽だと笑って済ませられればよいのだが、大体の場合は差別を正当化する根拠として持ちだされるので大変にタチが悪い。
この本は、読者の立場からするとまぁ面白くないが(著者自身も仕方なく書いている感じがありあり)、とにかく歴史学者の責任としてガツンと批判し続けて頂きたいと思う。 -
戦前戦後の、日本の話題が中心。
都市伝説的な意味での「陰謀」の歴史を語っている。いつ頃語られ出したのか、元ネタはあるのか、そして内容は“真実”なのか。
多くの文献をあたって、かなり網羅性を持って分析が為されているのはすごい。ただ、読み物としては一つずつの話が短めにしか扱われないので、ちょっと消化不良気味になる。
戦前の「日本がアジアを征服するぞ」的な話は、陰謀というよりは(ぼちぼち)本気だったんじゃないだろうかという気はします。