森に眠る魚 [Kindle]

著者 :
  • 双葉社
3.73
  • (15)
  • (31)
  • (21)
  • (4)
  • (2)
本棚登録 : 374
感想 : 27
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (372ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 我が子の受験を通して、ママ友との関係に翻弄される女性たちの物語である。

    なぜそんなにひねくれているのか、なぜそんな些細なことを気にして傷つくのか、とイライラしながらも、同じ女性としてわかりすぎるくらいリアルな心情に、一気に読み進めてしまった。

    「○○ちゃんのママ」ではなく、1人の女性として扱われたいと思いながらも、結局は子供を通してしか自分の存在を確かめられない登場人物たち。幸い、私には仕事があり、家庭以外の世界もあるけれど、専業主婦である彼女たちにはそれがない。どうしたって狭い世界にしか生きられなくて、その中でもがいてみるものの、なぜかうまくいかないママ友との関係。誰も悪者ではないけれど、ほんの少しの思い違いや意識のズレから、仲の良かったはずのグループがばらばらに引き裂かれてしまう。ママ友ではないけれど、そういうことってあったよな、と思い出された。

    あと、何よりかわいそうなのは子供たち。「この子にとって最善の道」という名のもとに、母親たちに振り回される。親は子供のことを一番に考えているつもりでも、結局自分のために子供を追い詰めてしまっているかもしれない。私も同じことをしてしまっていないか振り返ったりした。

    この物語は読み終わっても決して気分がすっきりするものではなく、同じような境遇の女性に読んでほしいかと言ったらなんとも言い難いが、そうそう女性ってこういうところある、と共感したい人にはおすすめしたい。

  • 同じ子を持つ母親として、読んでおいて良かったような悪かったような。
    何かをすることで、他人がどう思うか、思っているのかを考えて行動しなくては。でもそれを考えすぎて、容子みたいに被害妄想が激しくなるのも考え物。
    私も他人の目を気にしすぎる所があるので、“人は人、私は私”という言葉が印象的だった。
    最後は、皆また仲良くなって終わりという感じではなかったので現実味があった。
    肩脱臼の話は本当に悔しい。

  • 母親業というものは充足感を味わうのがこれほど難しいのかと括目してほしい。ここで描かれている母親たちは、私たちとそれほどかけ離れているだろうか。身勝手だったり弱かったりしても責められるほどではない、にも関わらず充足から遠いところにいる。「世界が終わるようなショックを味わったとしても、世界は終わらない。残酷なほど正確に日々はまわる。」日々を生きるということは波打ち際で砂の山を作り続けること。

  • 女性たちのどろどろな感情を、倫理的な揺れ動きを含んで善悪双方をとらえてリアルに書くのが本当に上手だ。角田さんの小説は基本的に好きだけれども、この一冊はどうしようもなく苦しくて、印象に一番残る。

  • 子育てをしていた頃の事を思い出して胸がヒリヒリと痛む様な思いで読みました。私が住んでいる地域は田舎なのでお受験もなかったし極端に生活レベルの違う人も居なかったのでこの本の内容よりは穏やかだったと思うが、根底は見栄やグループになじめない孤独感や子育ての不安、何故か夫が居るのに夫では心の支えにならない(笑)あの頃の嫌な感情が心の中によみがえりました。

全27件中 21 - 27件を表示

著者プロフィール

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。90年『幸福な遊戯』で「海燕新人文学賞」を受賞し、デビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で、「野間文芸新人賞」、2003年『空中庭園』で「婦人公論文芸賞」、05年『対岸の彼女』で「直木賞」、07年『八日目の蝉』で「中央公論文芸賞」、11年『ツリーハウス』で「伊藤整文学賞」、12年『かなたの子』で「泉鏡花文学賞」、『紙の月』で「柴田錬三郎賞」、14年『私のなかの彼女』で「河合隼雄物語賞」、21年『源氏物語』の完全新訳で「読売文学賞」を受賞する。他の著書に、『月と雷』『坂の途中の家』『銀の夜』『タラント』、エッセイ集『世界は終わりそうにない』『月夜の散歩』等がある。

角田光代の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×