- Amazon.co.jp ・電子書籍 (372ページ)
感想・レビュー・書評
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我が子の受験を通して、ママ友との関係に翻弄される女性たちの物語である。
なぜそんなにひねくれているのか、なぜそんな些細なことを気にして傷つくのか、とイライラしながらも、同じ女性としてわかりすぎるくらいリアルな心情に、一気に読み進めてしまった。
「○○ちゃんのママ」ではなく、1人の女性として扱われたいと思いながらも、結局は子供を通してしか自分の存在を確かめられない登場人物たち。幸い、私には仕事があり、家庭以外の世界もあるけれど、専業主婦である彼女たちにはそれがない。どうしたって狭い世界にしか生きられなくて、その中でもがいてみるものの、なぜかうまくいかないママ友との関係。誰も悪者ではないけれど、ほんの少しの思い違いや意識のズレから、仲の良かったはずのグループがばらばらに引き裂かれてしまう。ママ友ではないけれど、そういうことってあったよな、と思い出された。
あと、何よりかわいそうなのは子供たち。「この子にとって最善の道」という名のもとに、母親たちに振り回される。親は子供のことを一番に考えているつもりでも、結局自分のために子供を追い詰めてしまっているかもしれない。私も同じことをしてしまっていないか振り返ったりした。
この物語は読み終わっても決して気分がすっきりするものではなく、同じような境遇の女性に読んでほしいかと言ったらなんとも言い難いが、そうそう女性ってこういうところある、と共感したい人にはおすすめしたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
母親業というものは充足感を味わうのがこれほど難しいのかと括目してほしい。ここで描かれている母親たちは、私たちとそれほどかけ離れているだろうか。身勝手だったり弱かったりしても責められるほどではない、にも関わらず充足から遠いところにいる。「世界が終わるようなショックを味わったとしても、世界は終わらない。残酷なほど正確に日々はまわる。」日々を生きるということは波打ち際で砂の山を作り続けること。
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女性たちのどろどろな感情を、倫理的な揺れ動きを含んで善悪双方をとらえてリアルに書くのが本当に上手だ。角田さんの小説は基本的に好きだけれども、この一冊はどうしようもなく苦しくて、印象に一番残る。
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子育てをしていた頃の事を思い出して胸がヒリヒリと痛む様な思いで読みました。私が住んでいる地域は田舎なのでお受験もなかったし極端に生活レベルの違う人も居なかったのでこの本の内容よりは穏やかだったと思うが、根底は見栄やグループになじめない孤独感や子育ての不安、何故か夫が居るのに夫では心の支えにならない(笑)あの頃の嫌な感情が心の中によみがえりました。