狼と香辛料III (電撃文庫) [Kindle]

著者 :
  • KADOKAWA
4.24
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感想 : 7
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感想・レビュー・書評

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  • 4.3

  • 剣と魔法ではなく、商人の知識とスキル(そして本作では度胸もそこに加わってくる)でトラブルに立ち向かうこのシリーズは一作目は為替差益、二作目は信用取引ときて、この三作目は「投機的バブル」に加えて「裁定取引」を組みわせて降りかかる難題を切り抜けようとする。劇中では大して時間が経っていないはずなのだが、主人公ロレンスの商人としてのスキルは凄まじい勢いで成長しているようだ。

    ただし本作においてはロレンスはその商人としてのスキルを、彼の人生の目的である“儲け“のためには使わない。彼が本作で街を走り回り、脂汗を流して商人としてのスキルを総動員するのは、彼の元を去ってしまおうとするホロを留めるためなのだ。


    過去二作で大冒険を繰り広げたせいで勘違いをしてしまうところなのだが、劇中ではロレンスとホロが出会ってから、まだ1ヵ月も経っていないことになっている。 会話を聞いているとまるで長年連れ添ったカップルのようではあるが、少なくともロレンスは二人の関係が盤石であるとは思っていないらしい。 正確に言えば、本作の途中までは二人の絆は強いと信じていたのだが、 とあることをきっかけにその信頼は急速に崩れてしまうのだった。

    何百年も生きている狼であるホロが偶然ロレンスと出会ったのは、 ロレンスが持っている麦がホロを土地に縛り付ける”呪い”を解いたことがきっかけだった。そしてそのくびきを解かれたホロは、 自分の故郷である北方の土地ヨイツを目指すことを夢見る。ロレンスは旅の同行者(しかも美少女)を得たいがために、彼女の望みを叶えると約束をし、彼らは北方のヨイツを目指して旅をしているのだ。

    しかしホロはまだ知らないが、彼女が目指すヨイツと言う土地はこの時代は既に滅びてしまっており、 行商人であるロレンスはその街の名を聞いた事がなかった。 心優しい(?)ロレンスは自由になったばかりのホロにそのことを告げることが出来ず、話を切り出すタイミングを探っている間に今作の舞台となるクメルスンに辿り着く。

    そしてこのクメルスンという街で、 2人はアマーティという魚の仲買人に出会う。ロレンスよりは少し年若いこの商人は、いわゆる一目惚れをホロにしてしまい、猛烈なアタックを開始する。老獪なホロは当然アマーティを手玉に取るのだが、ロレンスに届いた手紙を読んで「ヨイツがすでに存在しないこと」そして「ロレンスがそのことを隠していたこと」を知り激しく動揺。ロレンスと激しい口論をした後に、アマーティとの婚姻契約書にサインをしてしまう。そこには銀貨1,000枚と引き換えに、ロレンスはホロを解放すると記載がされていたのだった(ホロはアマーティに、彼女は借金を返済するためにロレンスと同行していると嘘を伝えていたのだった)。

    最終的には彼女の全ての行動は、ロレンスに「彼女に対する本当の気持ち」を伝えさせるための戦略だったとわかるのだが、彼女との口論や婚姻契約書を見て動揺したロレンスはそんなことに一切気付くことが出来ない。なんとかアマーティとの婚姻を止めさせようと、クメルスンの街を駆け回り、アマーティの金策を止めるための策略を練ることになる。


    こういった感じで、過去二作と比較して「ホロとロレンスの関係」に焦点を当てた本作は、よりライトノベルらしい王道の展開を見せる作品といっていいだろう。ただしその関係を保つために、あるいは二人の関係を確かめるための方法が、全て商売に関するスキルと度胸というのがいかにもこのシリーズらしい。

    終幕で全てが明らかになってみれば、結局お互いがお互いに小細工を弄している間に問題が大きくなってしまったということがわかるのだが、今回ばかりはホロがロレンスという”若造”を正しく理解していなかったという面が強いように思う。結局最後にはロレンスが謝って一件落着・・・となるのだが、流石に少しはホロも反省して、ロレンスに素直になっていくのだろうか。何せ本作では、ロレンスは商売で大損することよりもホロとの関係性を優先したわけで、そのことの重要性を少しはホロもわかってやれよ、と小言の一言も言いたくなってしまう。

  • 商売以外のロレンスがちょっと頼りないのも微笑ましい。

  • 2024.01.21.audible

    アマーティのどんな言動がホロを怒らせたのか知りたい。

    Amazonの本の紹介
    行商人のロレンスと狼神ホロが、冬の大市と祭りで賑わう町クメルスンへと着くと、若い魚商人・アマーティがホロに急接近してきた! ロレンスとホロの間に微妙な気持ちのすれ違いが生じ、あらぬ誤解が……。 ロレンスとアマーティそれぞれの商売をも巻き込んだ大騒動が始まる!

  • (2023/38)二巻に続いて信用取引を軸にした話だが、今回の方は投機的な値動きを見せる商品で仕手戦のような様相も。本業を持って根を張る商人であれば大きく手を出すべきではないとされる取引を仕掛けていかなければならない事情を持ってしまったロレンス。そろそろホロとの関係に覚悟を見せろという展開。周りから見れば明白なだけにね。

  • シリーズの中でも特に好きな話。後半の、ロレンスとホロの心理描写はそれぞれ納得がいき、かつ驚きもある。場面的なカタルシスもある。アマーティのその後が気になるところ。

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著者プロフィール

第12回電撃小説大賞《銀賞》を受賞し、電撃文庫『狼と香辛料』にて2006年にデビュー。

「2023年 『新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙IX』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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