ここは退屈迎えに来て [Kindle]

著者 :
  • 幻冬舎
3.30
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感想 : 32
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感想・レビュー・書評

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  • 読もうと思った理由
    著者の「あの子は貴族」が面白かったので他も読みたいと思ったから

    地方・退屈な女性の感情がうまく書かれていて面白かったです。読みやすくてほぼ一気に読んでしまいました。

  •  テンポが良くて面白いです。地方都市の閉塞感をてんこもりにした8編の短編はすべて「女性」が主人公。特に最初の2編と文学賞受賞作の「十六歳はセックスの齢」の女性2人のコンビが楽しいです。
     僕のイチオシは「君がどこにも行けないのは車持ってないから」。連作の中では珍しく、「女性の自立」を暗示した終わり方なんですが、やっぱりアメリカ在住の僕はこういう展開が好きなんだよね、と思ってしまう。
     連作集の「たて糸」である椎名くんのいかにもありがちな変貌ぶりは男から見ても哀しい。これに限らず、地方出身/在住者には身に沁みる話が多いけど、それだけならばこの本を知るきっかけとなったブクログ友の「ひきこもり女子」や「残念店長」のブログの方が、実話である分、重い。
     地方と都会、女性と男性、リア充とそれ以外、など、いろんな読み方ができる本です。キンドル版は特に安価なのでw、お薦め。
     ところで、どうしてこれ映画化されないんだろ。オムニバスみたいにすれば簡単なのに。あるいは、1つか2つの話を軸にして編集するか...。

  • 2012年刊行。
    窓際三等兵が言及しているのを見て、そう言えば読んでなかったとポチッた。「16歳はセックスの齢」がいちばん面白かったかも。作者はこの後は小説家じゃなくてエッセイストになってしまったらしくて残念。この本から影響を受けた作品、いろいろ思い浮かびますな。

  • 東京から田舎に帰ってきた人や、ずっと田舎にいる人たちの物語です。田舎ならではの閉塞感、息苦しさを感じます。けれど人によっては住みやすい良いところなのかもしれません。

    8つの短編が収録されていますが、私が特に好きだったのは『やがて哀しき女の子』です。昔はあんなに可能性があったはずなのに、結婚したいだけの月並みな女になってしまった町いちばんの美少女。田舎で、大人になるとは、こういうことだと切なくなります。

  • なんて可愛い乙女たちの本。舞台は田舎町で、椎名くんという一人はいたような学年のアイドル的男子にまつわるオムニバスもの。中高生時代にとてつもなくキラキラしていた椎名くんは、それに憧れていた女の子たちがおばさんになりかけているように、よくいる自動車教官のおっさんになっている。でも、憧れていた女の子たちの心には今も身近な王子様だった椎名くんが息づいていて、白茶けて先の見えている人生の中で小さな拠り所になっている。

    現代らしい女性にまつわるエピソードの共感性に加えて、小気味よくテンポのいい文章が読んでて爽快。昔は夢も希望もあった女の子たちが(読者の私がそうであるように)、社会の風潮にのまれて、結婚という他人任せの身近な幸せで自分を慰めようとしてしまうのが悲しい。
    だから、タイトルが「迎えに来て」で、やはりかつての王子様である椎名くんに頼ってしまうんだよなぁ。そして、自分で自分を確立できる人間は、男女関係なく椎名くんやそれに該当する女子のことなんてもう忘れている。

    好きなエピソードは山下南と森重あかね、新保ゆうこ。友情は恋愛よりも優先されることはなく、それは健全なのだけど、完璧だった関係が第三者によって変わっていくのは山下南の言うとおり「寂しい」。新保ゆうこは記述トリックというにはちょっとズルいな、と思った。でも面白かった!
    一番すげえな、と思ったのは岡田薫ちゃん。彼女は完璧な男女関係って現実には存在しないことを本能的に分かっていて、椎名くんをモデルに理想の恋愛対象を空想で作りあげ、友達と約束した16歳のセックスの約束を力技で乗り切ってしまった。もうここまで来ると、強いなぁ〜と思うし、結婚やセックスという社会の圧力からひらりと逃げる女らしい柔軟性を感じて、最後のエピソードとしても痛快だった。

  • 東京から地元に返ってきた子とかの短編集。学生時代かっこよかった椎名の感じ、具体的に誰とは浮かばないけど、めちゃくちゃ居そうだなと思った。
    「全然パッとしない自分も、行き当たりばったりに無意味に過ぎていく人生も、東京の喧騒にごたまぜになれば、それなりに格好がついて見えた」「いまはこの、ぼんやりトボケた地方のユルさの、なんとも言えないわびしさや切実な寂しさだけが、すごくすごく、本当に思えた」「クルマ買ったらいろいろ教えてあげる。イエローハットとか行こ~」とかときどき刺さる。

  • 好み!
    「ファスト風土化する日本」「夜露死苦現代詩」などを参考文献にしている。
    ファンタジー寄りよりも、問題意識から落とし込んでいて、かつ、ストーリーとしてもおもしろいもの書ける作家さんは他の作品も読みたくなる。

  • ロードサイド小説、というらしい。
    国道沿いの田舎が舞台となった、短編小説。

    みんな、くすぶった気持ちを抱えてて、かといって捨て去ろうともしない。
    田舎から東京に出る、って、そんな象徴的なものかとも思うけど。
    わたしも一応そういう身なので。

    椎名みたいな人、いるよな、って思った。
    薫ちゃんが椎名を神格化してしまうの、わかるー、と思った。俗欲的に見れないのだ。
    スペシャルなフィルターがかかるもので。

    居場所や役割を実感しきれずに、ここではないどこかを夢見たくなる人もいるだろうし、そういう気質を持つ人にとっては、本書は刺さる箇所のある本だと思う。私は悶絶しながら読んだ。

    という後書きが強烈だ。

    そういう気質。
    地元で幸せそうに楽しく暮らす友人と、なんでも話せるけど、分かちきれないひとかけらだと思った。

  • 田舎の都会への切ない憧れと輝いていた?青春の思い出、ほろ苦さがいい味だしてる。ただ最初の3編はいい。しかしそれから、特に後半は息切れだと思う。前半3作は星4.5で後半は2。ガイジンの主人公の短編は1といったところ。
    椎名という、クラスか学年に一人いるような、当時輝いていた男子を巡る、あこがれと現実と思い出とほろ苦さが各短編を継いでいる。
    現在から考えると、まだ豊かさの余韻が残ってるような時代背景のように思える。みんな大したことをせず稼いでもいないのに何か余裕があるw
    読んでいる最中に、ある詩人が監督した映画「岡山の娘」のすごく印象に残っている
    "もう何もすることながないと、会う人すべてが言った。2008年夏、岡山"
    というコピーを、何度か思い出した(苦笑)。

  • 富山出身の著者による、田舎の若者たちが代わり映えのしない冴えない毎日の中で、それぞれの恋愛をしていく様を、登場する8人の女性の視点でオムニバス形式で描いたもので、着眼点は斬新であり、豊かな表現力で、つまらない日常を鮮やかに描き出している秀作。

    けだるい日常が繰り返される地方都市では、こういう感じで人間が歳をとって、家庭を持ち、またその子どもたちが同じような人生を歩んでいくんだろうなと思わせる。

著者プロフィール

山内マリコ(やまうち・まりこ):1980年富山県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。2008年「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞し、12年『ここは退屈迎えに来て』でデビュー。主な著書に、『アズミ・ハルコは行方不明』『あのこは貴族』『選んだ孤独はよい孤独』『一心同体だった』『すべてのことはメッセージ小説ユーミン』などがある。『買い物とわたし お伊勢丹より愛をこめて』『山内マリコの美術館はひとりで行く派展』『The Young Women’s Handbook~女の子、どう生きる?~』など、エッセイも多く執筆。

「2024年 『結婚とわたし』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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