「納品」をなくせばうまくいく [Kindle]

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  • 日本実業出版社
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感想・レビュー・書評

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  • アジャイル信者による納品なしビジネスモデルの本。



    序盤に事例紹介、中盤にビジネスモデル、終盤に考え方について書かれている。作者はアジャイル信者で、アジャイルっぽく仕事しようとしたらこういうビジネスモデルになったらしい。感覚的なところは俺とそっくりだったので、非常に驚いた。俺はアジャイルとかどうでもいいから。



    モノ作りがしたいだけの俺の考え方を述べると、以下のような感じになる。

    【モノ作りがしたいだけの俺の考え方】
    納期を守りたくない。
    ⇒しんどいから。
    納品したくない。
    ⇒めんどくさい。変更する度に納品とかやってられるか。
    終わりのない仕事はしたくない。
    ⇒デスマーチは嫌だ。同じことをずっとやるのも嫌。
    顧客と話したくない。
    ⇒リスクを丸投げしてるだけのくせして、いいたいことだけいうな。
    ドキュメント書きたくない。
    ⇒メンテナンスしないなら作るだけ無駄。

    俺の思考回路でこれを改善する方法を考えると次の流れになる。ITが業界ごとブラックな原因のすべてが1にあるので、これをなくさないとダメだ。なので、納期を約束しないようにする。納品とかめんどくさいので、WEBサイトに公開して、自分で保守しよう。サービスとして使ってもらおう。サービス化して使ってもらってフィードバックもらえば、4はやらなくてよさそう。自分でサービス作ったら、好きに止めれるから3も解決だな。5は作るの止めればすむ。ということで、俺の結論は、「自分で会社を作って株主になってサービスを作って提供して売れたら、好きなモノ作りだけできる」というものだ。


    俺のやり方はヒットしないと生きていけない大博打だが、作者のやり方は少しずつ積み上げていけるやり方だ。1、2、5を解決し、3と4を我慢する妥協案かな。そこからさらに突き詰めていて、これをやると必然的に顧客がかわってくる。既存のウォーターフォールモデルだと「リスクを外出しできる」規模に限られるが、納品なしモデルだと「大きすぎるリスクをいっしょに背負ってくれる」感覚に近くなるためだ。


    思考回路は違うために結論が違っているが、途中の感性は似すぎてて気持ち悪かったw




    俺はアジャイルに全く興味がない。アジャイルは技術者視点で作られたもので、顧客視点がなかったから。出てきたときからうさんくさいと考えてた。今もうさんくさいと思ってる。開発方法論の中でビジネスを語っても何の説得力もないから。今も昔もシステム開発がうまくやる方法はたったひとつで、それは「顧客と仲良くなること」だ。要するに、リスクを外出しする仕事の仕方ではなく、パートナーとしていっしょにやっていこうと思っている顧客とだけうまく仕事が回る。それはウォーターフォールとかアジャイルとか関係ないよね。というのが俺の見解。

    単純に開発方法論だけ変更してもうまくいく訳ない。こいつらあほか。というのがアジャイル信者に対する俺の素直な感想だ。作者はそれをビジネスの問題に結び付けれているところがすごい。



    作者のビジネスモデルでいくと、あとは、ギルド自体の質の問題だろうな。ギルドの規模が大きくなると、悪い素材が混じってくるから、そういうのをはじき出せるようにしないと、一発で他のSIerやコンサルと差がなくなるからね。


    それ以外には、人と話をしたくないエンジニアは非常に多いから、ほとんどすべての開発者を救う訳でもないというところに注意が必要か。


    いや、一番はあまり儲からないというところかw



    一括請負保険業モデルから二人三脚モデルに変更したら、顧客層が変わってしまった。というのが一言で言い表したときの表現だなw

  • ソフトウェア開発の形態は難しいのですが、すごく分かりやすく読みやすく理解しやすくまとまっています。技術者の本は大抵ちゃんと説明しようとするがために字が多くなり難解になりがちですが、倉貫さんの説明にはそれがなく、仕事と同様に読み手のことをよく考えられた文章なのだなと思いました。
    アジャイル、リーンスタートアップ、ワークライフバランス、、そういったことを経験から導き出されて結果、実践されていると感じました。形から入ったとか全く感じられません。だから説得力があってすごく納得しました。ターゲットもはっきりしています。
    技術本などよりこちらを読んだ方が勉強になるんじゃないかと思いました。
    この方法はこれまで納品で死んでいたソフトウェアを、納品で産まれて育っていくものに変えてくれると思います。ソフトウェアが本当に(社会に、企業(経営)に、人生に)役立つものとしての地位を確立できるのではないでしょうか。日本はこれが苦手だったように思います。これを機にソフトウェアが日本の強みに変わっていけたらいいなと思いました。

  • ソフトウェア業界定番のビジネスモデルである「一括請負」受託開発に対して、よりモダンな開発手法でもって変革を試みる会社のお話。

    ソフトウェア開発会社にとっては「納品」がゴールだが、そのシステムを利用する側にとってはそこからがスタートである。であるならば、「納品」をゴールにするのではなく、システムを作りそして成長させるという納品の先までを見据えることが真の顧客サービスに繋がるという主張には頷くばかり。

    SI業界の今後を先んじて体現しているかのような稀有な会社像をかいま見える良い本でした。

  •  
    ── 倉貫 義人《「納品」をなくせばうまくいく 20140620 日本実業出版社》kindle
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/B00LSQ8G4W
     
    (20211129)
     

  • ソニックガーデンによる「納品のない受託開発」。Clubhouseでソニックガーデンの話題が出たので、そういえばと手に取ってみた。日本における受託開発の闇をどうにか変えたいというのがDXR(2)に底通する問題意識。最近流行りのD2Cとかスタートアップとは相性良いのだろうな。これをスケールさせるにはどうすれば良いのだろうか?
    まだ読み終わってはないけど、平鍋さんのアジャイルスタジオよりも、ビジネスモデルとしては突き抜けてそう。

  • 顧客専属のエンジニアになる。
    でもそれって個人として変化が止まりそうな気がしてしまう。
    のれんわけで独立と教育。果たして専属エンジニアから急になれるもんなのか

  • コミットメントには、結果の保証と、努力の保証の2種類ある。通常、ソフトウエアの開発契約には、結果の保証を求められるが、これが問題を引き起こす。一見不合理に見える、努力の保証コミットメントがうまくいくというのがこの本の趣旨(だが、コミットメントに対する分類は私の用語であり、この本には書かれていない)。まったくその通りなのだが、人を信じることができない人たちには、この本の内容を受け入れることはできないだろう。

  • 「月額制を導入し、社員として同じ立場として、ベストを尽くす。残業はしない。」よいと思いました。

  • お客さんにとってもエンジニアにとっても理想的な枠組みだと思いました。現状、なかなか既存の仕組みからは抜け出せないですが、ぜひこのムーブメントが広がっていくのをこの期待したいです。

  • 変化が加速する時代のソフトウェア開発モデルの実験。権力の分散(『第五の権力』)に伴うビジネスモデルの変革の実例。

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著者プロフィール

株式会社ソニックガーデンの創業者で代表取締役社長。1974年生まれ。京都府出身。小学生からプログラミングを始め、天職と思える仕事に就こうと大手システム会社に入社するも、プログラマ軽視の風潮に挫折。転職も考えたが、会社を変えるためにアジャイル開発を日本に普及させる活動を個人的に開始。会社では、研究開発部門の立ち上げ、社内SNSの企画と開発、オープンソース化をおこない、自ら起業すべく社内ベンチャーを立ち上げるまでに至る。しかし、経営の経験などなかったために当初は大苦戦。徹底的に管理する方法で新規事業はうまくいかないと反省。徐々に管理をなくしていくことで成果をあげる。最終的には事業を軌道に乗せて、その社内ベンチャーをマネジメント・バイ・アウト(経営者による買収)することで独立を果たして、株式会社ソニックガーデンを設立。ソニックガーデンでは、月額定額&成果契約の顧問サービス提供する新しい受託開発のビジネスモデル「納品のない受託開発」を展開。その斬新なビジネスモデルは、船井財団「グレートカンパニーアワード」にてユニークビジネスモデル賞を受賞。

「2023年 『人が増えても速くならない ~変化を抱擁せよ~』 で使われていた紹介文から引用しています。」

倉貫義人の作品

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