ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか [Kindle]

  • NHK出版
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感想・レビュー・書評

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  • このくだりを読むだけで本書の価値はまぎれもない。「アメリカ人は競争を崇拝し、競争のおかげで社会主義国と違って自分たちは配給の列に並ばずにすむのだと思っている。でも実際には、資本主義と競争は対極にある。資本主義は資本の蓄積を前提に成り立つのに、完全競争下ではすべての収益が消滅する。だから起業家ならこう肝に銘じるべきだ。永続的な価値を創造してそれを取り込むためには、差別化のないコモディティ・ビジネスを行なってはならない」

  • 車の中で聴くオーディオブック5冊目は、2015年ビジネス書大賞『ゼロ・トゥ・ワン』。
    これが書かれた当時は、著者ピーター・ティールはペイパルの共同創業者で、フェースブック初の外部投資家で…あたりが枕詞だったと思うが、今や時の人。シリコンバレー界隈にあってただ一人、当初からトランプを推し、政権移行チームにも加わった。彼がトランプを推したことについてはここでは取り上げないが、(民主党の)大きな政府に反対であることは、本書からも伝わってくる。
    ところで、本書のタイトルになっている0から1を生み出すという発想、ワタシには既視感があった。意外に思われるかもしれないが、それは少し前に本書同様オーディオブックで聴いた『仕事は楽しいかね?』だ。同書の中では、リーバイスなど現存する企業の創業の経緯などを具体的にいくつも挙げているが、これらは0を1にしたケーススタディと言っていいだろう。創業者が自身の頭で考え、気づきを得て、それを形にして世に出す。ティールが指摘するのは、いわゆる世間の常識に拘ったり流されたりするのではなく、自分の頭で考えることの重要性だ。だからこそ、本書ではのっけから「賛成する人がほとんどいない真実は何か?」と問いかける。
    実際のところ、ティールは自身で考えに考えている。本書がすっきり明快に感じられるのが何よりもその証左だ。常識から持ってきた発想や言葉ではなく、初めから終わりまですべて自分の考えに基づいている。そんな本書が送り出すメッセージは、常識を疑え、ということだ。世の中を変えるようなものは、常識からは決して生まれてこないことを彼は強調する。
    こう書くと、世の中を変えたいなどと思っていない人には本書は響かないのか、というツッコミがありそうだが、さにあらず。世の中を変えることはできなくても、自分を変えることはできる。そのためのヒントが本書には散りばめられている。それはちょうど『仕事は楽しいかね?』の中で繰り返し指摘されていた「明日は今日とは違う自分になる」に通じるものだ。
    『<インターネット>の次に来るもの』を読んでいる時に本書を意識し、本書を読んでいる時に『仕事は楽しいかね?』を意識した。続けて読んだ3冊が、ワタシの中で奇妙につながった。

  • Paypal創業者の著者がリーンスタートアップを切る内容。スタンフォード学生向け起業論の講義がもとになっている。
    シリコンバレーの通説(リーンスタートアップ等)を真っ向から否定。異端児的な創業チームを組み、明確なビジョンと計画をもち、ニッチ市場で独占から始めるべし等、ティール氏の主張が明確だった。
    あいまいな楽観主義の現在において、世界を変えるイノベーションを起業家として狙うよりも、確実に利潤が取れるプロフェッショナル系(投資銀行、PE、コンサル、弁護士)に人気と人材が集まっているという解説は納得感があった。

    【メモ】
    ・ティールが最も重視する質問「世界に関する命題のうち、多くの人が真でないとしているが、君が真だと考えているものは何か?」
    ・ティールは、優秀な学生が戦略コンサル、弁護士、投資銀行などのキャリアに就き、「あいまいな楽観主義」のもとづいた小さな成功(選択肢が広がるだけ)しか手にせず、社会を大きく深化させる力を持たないことを批判する
    ・企業には成功の方程式は無い。あるとすれば、第一原理からビジネスを捉え、思いがけない場所に価値を見出している
    ・水平的/拡張的進歩:成功例をコピー(1 to n:グローバリゼーション)
    ・垂直的/集中的進歩:新しい何かを行う(0 to 1:テクノロジー)
    ・テクノロジーはコンピュータに限らない。物事への新しい取り組み方、より良い手法はすべてテクノロジー。
    ・スタートアップとは、君が世界を変えられると、君自身が説得できた人たちの集まり

    ✕ドットコムバブルから学んだシリコンバレーの教訓
     1.少しずつ段階的に前進する事
     2.無駄なく柔軟である事(リーン)
     3.ライバルのものを改良する事(既存市場)
     4.販売でなくプロダクトに集中する事(バイラルマーケティング)
    〇むしろ逆の原理
     1.小さい違いを追いかけるより大胆に賭ける
     2.出来の悪い計画でも、ないよりよい
     3.競争の激しい市場では収益が消失する
     4.販売はプロダクトと同じくらい大切だ

    ・永続的な価値を創造してそれを取り込むためには、差別化の無いコモディティ・ビジネスを行ってはならない

    ・非独占企業:市場が「交差 ∧ and」する場所を自分たちの市場と位置付け、自社の独自性を誇張する
    ・独占企業:自分たちの市場を、市場の「総和 ∨ or」と定義づけ、独占的地位をカモフラージュする

    ・独占企業は金儲け以外のことを考える余裕がある。非独占企業は、完全競争下で目先の利益を追うのに精一杯
    ・進歩の歴史とは、より良い独占企業が既存企業にとって代わってきた歴史

    ・独占企業の特徴:Proprietary Technology、ネットワーク効果、規模の経済、ブランド
     プロプライエタリ・テクノロジー:独占的優位性をもたらす点で、二番手より10倍以上優れる必要あり
     ネットワーク効果:小さな市場の独占から始める
     規模の経済:販売増加に係る限界費用を抑え、当初デザインに組み込む
     ブランディング:表面を磨きあげても、その下に強い実体が必要
    ・小さく始めて独占⇒規模拡大、破壊しない、ラストムーバーになる

    ・未来の四つの見方(楽観的、悲観的)×(明確、あいまい)
     明確な楽観主義:アメリカ、1950~70年
     あいまいな楽観主義:アメリカ、1982年~
     明確な悲観主義:中国、現在
     あいまいな悲観主義:欧州、現在
    ・曖昧な楽観主義者は、時間がかかる新製品開発に代わり、既存のものを作り直そうとする。
     投資銀行家:既存企業の資本構成変更
     弁護士:論争解決、他者の事案の立て直し
     PE・コンサル:改善により既存企業の効率化
    ・どうやって富を作り出すか分からないときに唯一利潤をあげる金融は、あやふやな未来にピッタリの業界

    ・金融化された世界のカネの回り方
     創業者(使い道が分からない)⇒銀行預金
     銀行(投資先が分からない)⇒機関投資家のポートフォリオ分散
     機関投資家(運用の仕方が分からない)⇒株のポートフォリオに分散
     企業(資金使途が分からない)⇒投資を控えてFCFを増やして株価をあげようとする。配当増 or 自社株買い
    ・お金が目的達成の手段となり、目的でなくなるのは具体的な未来においてだけ

    ・ダーウィン主義(進化論)がゼロから新ビジネスを立ち上げる方法に当てはまるとは限らない。シリコンバレーでも環境に「適応・進化」する「リーンスタートアップ」が流行りの戦略。
    ⇒「リーンであること」は手段であって目的じゃない。スタートアップにおいてはインテリジェント・デザインこそが最適(例:顧客の意見を聞かないジョブズ)

    ・創業者が会社を売却するのは、具体的なビジョンがないから。(買収価格が高すぎる)⇔盤石な計画と意思がある創業者にとっては価格が低すぎ、売却しない

    ・VC投資の総額はGDPの0.2%以下。だが、支援先企業は、民間雇用の11%を創出し、これらの企業が生み出す収益はGDPの21%に上る

    ・ティールの法則:創業時がぐちゃぐちゃなスタートアップは後で直せない
     創業チームの技術的能力や補完的スキルも重要だが、お互いをどれだけ知っているか、上手くやっていけるかも重要。起業前に経験の共有があるほうが良い
    ・取締役は3人が理想、上場前は5人を超えない
    ・フルタイム、同ロケーションが前提
    ・アーリーステージではCEOの年収は15万ドルを超えてはならない
    ・自社株という報酬形態は、社員の意識を未来価値の創造へと向ける
    ・スタートアップ(カルト)⇔コンサルタント(ニヒリズム)

    ・売り込みだと分からないのが一流のセールス(アカウント・エクゼクティブ、事業開発、IB、政治家)
    ・(マス)バイラルマーケティング⇒マーケティング⇒セールス⇒コンプレックス・セールス(高額商品)

    ・すべてのビジネスに共通する7つの質問
     1.エンジニアリング:ブレイクスルー技術がある?
     2.タイミング:適切か?
     3.独占:小さな市場で大きなシェアが狙える?
     4.人材:正しいチーム作りが出来ている?
     5.販売:作るだけでなく、届ける方法は?
     6.永続性:10~20年生き残れるポジショニングか?
     7.隠れた真実:独自のチャンスを見つけている?

    ・創業者は平均ではなくアウトサイダー
     おたく、サヴァン症候群 ⇔ アスリート、カリスマ

  • Paypalの創業者であり、本書の著者であるピーター・ティールはかなり”人を選ぶ”経営者だ。素晴らしいビジネスパーソンであることは間違いないし、語り口を聞いていても魅力的な人物である。

    一方で、その常識に縛られない考え方は時に摩擦を起こすし、なかなか受け入れ難いと感じる人も多いだろう。時に選民意識が滲み出るような彼の言説を聞いていると、勝者の傲慢を感じる時もあるのだ(自分もそういう人間だ)。

    そういった先入観があったので本書はなかなか手にしていなかったのだが、実際に読んでみるといい意味で裏切られた。

    まず、本書では確かに彼の思想が語られているが、思ったほど傲慢のトーンでは描かれていない。むしろ、若者たちの背中を・・特に自分が”優秀である”と思う若者の背中を押すような内容になっている。

    もう一つは、プロダクトを作るということに対する示唆が非常に多く含まれていることだ。Lean Startupを馬鹿馬鹿しいと断じる彼の思想は王道とは違うと思われがちだが、実際にプロダクトを生み出すことが求められるポジションで働いた自分のような人間からするとすごく真っ当なことを言っていると感じられた。

    若い人が読むとその毒気にやられてしまうかもしれないと思いつつ(それもまた良いのだろうけど)、プロダクトを志す人は是非手に取った方が良いだろう。

  • ・賛成する人がほとんどいない、大切な真実
    ・ベビーブーマーを雇うな

  • 仕事の価値として、1→10より0→1を作り出す事のほうが価値が高く、且つやり甲斐が有り面白い事だと思う。またここには雲泥の差が有る。

    しかしそこに真に取り組めるのほんの一握りの研究者や起業家のみ。その思想や世界観に触れられる本書の内容を大変貴重に思う。

    具体的に役立つ知識になった・重要だなと思った点。

    (0→1を実現出来る事業、チームの特徴等)
    ・競争にさらされない市場独占状態を作り出せる見込みがあるか(競争にさらされる市場はそもそも革新性が無く退屈)
    ・一緒にいたいと思えるチームであるか(人生において大切な時間を過ごすのだから積極的に一緒にいたいと思えない人と過ごすのはおかしい)
    ・経営層の給料が高過ぎないか(嵩過ぎると利害関係の不一致を引き起こす)
    ・会社が目的としている事に強く共感できること(自分が入社する場合)
    ・人間と共存していける技術であること(人と対立するコンピュータ技術は上手くいかない)
    ・経営者が技術に強いこと(本気で目的達成する気あるなら必然的に強いはず)

  • はじめに
    1 僕たちは未来を創ることができるか
    2 1999年のお祭り騒ぎ
    3 幸福な企業はみなそれぞれに違う
    4 イデオロギーとしての競争
    5 終盤を制する
    6 人生は宝クジじゃない
    7 カネの流れを追え
    8 隠れた真実
    9 ティールの法則
    10 マフィアの力学
    11 それを作れば、みんなやってくる?
    12 人間と機械
    13 エネルギー2.0
    14 創業者のパラドックス
    終わりに 停滞かシンギュラリティ―か

  • ピーター・ティールといえば、トランプ支持者ということで物議を醸しているけれど、独特の考え方は面白い。

    「隠れた真実」を探す、というところがとにかく大事で、誰も賛成しないが大切な真実を見つけることによって世界をガラッと変えることができる。
    成功した起業家がやっていることはそういうこと。

    「べき乗則」の考えも興味を引かれた。
    ざっくり言うと、圧倒的に勝てるものにリソースを集中させる、ということかな。

    起業を成功するための手法論的な部分も多く書かれているけど、人生に向かう考え方に示唆が多くあると思う。

  • 良書。ものすごく刺激になる。

    一言でいうと、「独占」を作り出すことが重要 という内容

  • WEB業界辺りに属していると否が応でも評判を耳にするティール教の聖書。評判を含め内容についてはちらほら耳にしていたので、いつか読めばよいかと放置していたのだが、会社で行う合宿の課題図書になってしまったので真剣に読了。
    結論としてはこのタイミングで読むべき最良の本だった(読み終わって即座に二周目を読み進めています)

    WEB業界において幸運にも事業の設計や開発、運用をしたり、場合によっては会社そのものを設計、開発、運用をしたりする経験を一応はしております。
    昨今のWEB業界はホラクラシーだとかリーンスタートアップとかが流行っていると思います。実際にその辺りの要素を取り入れて事業や会社を運営していたりするのですが、やってるとトップダウンの欲望がチラホラと顔を覗かせるんですよね。その度に自分の心に言い聞かせて気持を落ち着かせてはいるのですが、ぶっちゃけ違和感を拭い切ることは出来なかったりします。
    本書、というかティール先生語録はその気持について充分すぎるほど明確な思考で持って答えてくれています。本当に今このタイミングで読めてよかったと感じる一冊です。誤解を恐れずに言えば明確なビジョンの無いボトムアップやホラクラシーは単なる責任逃れになりがちだし、最低限の事業計画の無いリーンスタートアップはスモールビジネス製造機でしかないし、絶対的な信頼が作られる前にチームビルディングとか情報共有とか頑張っても「スタンドプレーから生じるチームワーク」なんてうまれっこ無いのです。
    ちょっとテンションが上がって余分な事も書いてしまった気がしますが恐れずに本音を書けるチャンスを与えてくれたティール先生に感謝すると共に早く二周目に戻ります。
    既にベストセラーでこの界隈の人は基本的に読んでるとは思いますが、全てのスタートアップ関係者にオススメの一冊です。

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