- Amazon.co.jp ・電子書籍 (184ページ)
感想・レビュー・書評
-
昨年あたりから急に関心が高まり、邦人人質の殺害でピークに達した感のあるイスラム国(もしくはIS、ISIS、ISIL、Daash)。その性質や来歴、中東に与えた影響を概説。時事的な内容を扱いながらも、歴史的経緯も含めて多面的に分析がなされ、極めて濃度の高い一冊になっている。一冊読むならこれでいいのではないでしょうか。
とくに、イスラム国の台頭を、シリア・イラク周辺の地政学的な文脈だけでなく、近年のグローバル・ジハード運動の文脈とも絡めて分析している点がとてもよい。イスラム教の支配を回復しようとするこの思想的・行動的な運動の大きな流れの中に、イスラム国もまた位置付けられる。こうすることで、ほかのグローバル・ジハード運動との関連性も相違も見えてくる。(アルカイダやボコ・ハラムもまたその文脈から分析さることができるだろう)
そうして捉えると、ただ残酷な軍事集団としてのイスラム国ではなく、政治的・宗教的に極めて重要な論点をもった姿が浮かび上がってくる。そこを理解しないことには、イスラム国という現象と対峙することは難しい。中東、イスラムと、なかなか馴染みのない事柄であるからこそ、その背景を含めた理解が大切になる。
余談。グローバル・ジハード運動のそのものは、かなり理論的に精緻な思想を持っているよう。アブー・ムスアブ・アッ=スーリーの『グローバルイスラーム抵抗への呼びかけ』などは、本書の概略を読む限り、ネグリ=ハートの『<帝国>』と近しい構図を持っているように思える。西欧的価値観の支配という<帝国>に抵抗するマルチチュードとしてのグローバル・ジハード運動。その分散化され中心を持たない運動は、必然的にドゥルーズ=ガタリとも共鳴する。そうした理論的背景が実際に実践されているかどうかはともかく、20世紀の重要な思想的問題をしっかりと踏まえているようだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
フランチャイズ化されたアル・カーイダとか、分かりやすかった。