21世紀の資本 [Kindle]

  • みすず書房
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感想・レビュー・書評

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  • 資本(ストック)と国民所得(フロー)、資本と労働の分配、経済格差の問題を100年以上のスケールで論じたもの。
    文量が多く途中飽きを感じたが、論理は明確で分かりやすい。複数の本に分けても良いぐらいに情報が詰まっている。

    著者の主張を大分ざっくりまとめると以下のようなもの。

    ・20世紀前半の欧米諸国は現代以上に格差の大きい世界。二度の世界大戦を経た資本ストックの棄損や重税を受けて格差は大幅に縮小。一方、ここ20〜30年はこの格差が再び拡大している。
    ・この300年で資本の形態は、大部分の農地から住宅+その他の金融財産等に変容。
    ・資本所得は労働所得よりも格差が大きい。
    ・20世紀は労働所得の重要性が高まった時代。金持ちでも貧民でもない中間層が出現。
    ・歴史的に資本収益率(r)は経済成長率(g)よりも高いのが定常状態。そのため、資本には加速度的に累積される性質がある。
    ・低成長が見込まれる21世紀は、資本の格差が拡大する懸念。格差是正には、資本自体に課税する累進的な資本税を世界的に導入する必要。

    巷のピケティ論は本書を読んでないと思われる理解の誤りや、ただ自論への我田引水に利用するものも見かけるので、本書を実際読むのが良いと感じた。
    本書では「資本家vs労働者」のような階級闘争の図式が導入されているわけではないし、政治思想よりは経済学のアプローチを徹底して採用しているのも良い点。
    私自身も極端な経済格差が正当化される社会は良くないと思っているし、そうした格差を制限しても経済効率を損なうことはないだろうと考えているので、著者の主張は大分共感できた。

    また、話の大筋とは関係が薄いが興味深かったのは、経済発展のため資本規制を容認している点。外資を制限しつつ貿易面では自由を享受する中国の政策を評価しているところは面白かった。

  • フランスの経済学者トマ・ピケティ氏が書いた、2014年の英語版でベストセラーになったマクロ経済本。

    18-21世紀の資本と所得を20カ国のデータを統計し分析している。難しい数式や極はないので読みやすい。

    紙728頁、電子版928頁とボリューム有り。

    @BizHack1
    #21世紀の資本
    https://amzn.to/3Fxk8E8

    2023/03/19

  • 資本収益率(r)が、産出と所得の成長率(g)よりはるかに大きいとき、恣意的で持続不可能な格差が生まれるというのが大きな主張だ。指数関数が持つ力を考えればこの「r>g」という不等式が巨大な格差を生むというのは理解できる。

    r>gが起こるのは歴史的な経験であり、確たる理由があるわけではない。仮にg>rであれば無制限な借金が成り立つ、という反実仮想はあるが、それも想像に過ぎないのがポイントである。

    本書は第一部で様々な議論の地ならしを行った後に第二部でr>gの歴史的経緯を丹念に観察する。第三部では格差の構造を観察し、第四部では政策提言に踏み込む流れになっている。

    歴史的な経緯を見ると、以下のことがわかる。

    1. 不動産の平均的な資本収益率は3%〜5%程度、対して株式は7〜8%なので、現代の金融資本主義がこのまま進展すると恐ろしい格差が生まれる。これは民主主義にとっても良くないことである(しかもより大きな資本のほうが資本収益率は高い)
    2. 20世紀において格差の縮小が進んだのは2つの大戦が様々な資本を破壊した上、戦後復興の段階でgが大きく伸びたことや戦費・その他のために「没収的な」課税が行われたからである。
    3. 富の保有割合という意味では過去も現在も下位50%の貧しさは変わらないが、20世紀の後半に上位50%のなかに中間層が生まれたことがこれ以前の時代とは異なる。

    歴史を概観することは様々な洞察をもたらしてくれる。たとえば「昔は定期預金が高い利率で……」という昔話をする人がいる。だいたいは「今の低利率は経済の衰退を示すものだ」という話に繋がるが、経済の衰退を示すのに定期預金の利率の話が相応しくないことは歴史を見れば一目瞭然だ。歴史的事実として、非常に高い経済成長率はキャッチアップの段階でしか発生しない。

    ピケティの主張は左派的ではあるが、単純なポジショントークに陥らないためにも事実を押さえることは大事だろう。

    政策提言としては「累進的な資本課税」が提唱される。ただしこの前提としては国際間での協調が必要であるという辺りは共同研究者であるSaez, Zucmanによる『つくられた格差』でも述べられていた。実際、イタリアなどが単独で導入しようとした際には大失敗に終わったそうだ。

    国際間で協調するには、つまり租税回避をどうやって止めるかという話になると流石に歯切れが悪くなる。EUの役割に理論的な期待はされるものの、どこか諦めが漂う筆致である。『つくられた格差』のほうが威勢良く書かれていたが、やはり画餅なのであろう。

    最後になるが、14章に面白い警句があったので引用しておきたい。

    > ベル・エポック期のフランスの経験が示すように、経済的、金融的なエリートたちは、自分の利益を死守するためなら、天井知らずの偽善ぶりを発揮する——そしてここには経済学者たちも含まれる。

    サプライサイド経済学者と経済エリートの結託という現象を見ていると、21世紀の資本主義には暗い未来しか見えない。

  • ベストセラーになったトマ・ピケティの『21世紀の資本』読みました!
    ここにこんなことが書いてあります!
    「お金がお金を生むスピードは、働いてお金を稼ぐスピードよりも常に早い」
    資本主義の世の中では、どんなに頑張って労働しても資本家の方が早くお金を手に入れられるということです。
    極貧の人は世界中で減っているかもしれませんが、お金持ちとの格差は広がっていきます。
    資本主義社会の中で、どのように頑張れば豊かになっていくのかは考えて頑張る必要があると改めて思わせてくれる本でした。

  • この本は、18世紀から今日までの富と所得の格差がどのように変化していったかを、世界各国から得られたデータをもとに解き明かし、「格差は拡大しているのか、それとも縮まってきているのか」という伝統的なテーマについて、これまでの思い込みと事実の欠如が目立つ議論に終止符を打ち、客観的なデータに基づいた結論を導き出そうとする野心的なものだ。 

    僕はもともと西洋の近現代史に興味があったが、この本で描写されている富と所得の変動と、ヨーロッパの政治史を見比べてみて、社会や国際情勢の変化が人々の所得や貯蓄に多大な影響を及ぼしていることに驚いた。
     アメリカやヨーロッパ各国、そして日本の経済的変動に関するデータがグラフの形でも多く含まれているので、731ページという長大なボリュームの割には読みやすいが、膨大なデータから結論を導くと言うこの本の性質上飛ばし読みが難しく、ある程度の覚悟を決めてじっくりと取り掛かる必要があると思う。
     逆に、ありがたいことに専門的な単語にいちいち解説がついているので、僕のような経済学の素人でも読み進めていけばそれなりに内容を理解できた。この春休みに読み応えのある作品を求めている人にはぜひおすすめしたい。
    (文科Ⅲ類・1年)

    【学内URL】
    https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000017583

    【学外からの利用方法】
    https://www.lib.u-tokyo.ac.jp/ja/library/literacy/user-guide/campus/offcampus

  • ものすごく分厚くて、飛ばし飛ばしで理解できる範囲で読んだ。
    FIREを目指すうえで読んでおきたい内容だった。
    相続の部分は特に興味深く、それから発展して贈与のこととかも考えてみると面白い。

  • 格差社会を説得力のあるデータで明らかにする。
    ・「r > g」つまり、資本収益率(rate of return on capital)が経済成長率(growth rate of the economy)よりも大きければ、格差は広がる。
    ・格差を緩和させるために、世界的な累進資産税を設けることを主張っしている。

  • 700ページ超の内容で読みごたえがある。こちらは流し読みで、おおよその筆者の考えがわかれば、良しとした。

    格差が歴史上最も広がりつつある中で、自分の富だけでなく、社会全体を見て、社会に目を向けて欲しい。

    世界的な累進資産税を導入することで富の格差が抑えられるのではと描いてあるが国際協力や政治統合が必要なため、難しいところでもある。

    何回でも読みたい本。
    この本に描いてあることの実現は難しいかも知れないが、1歩ずつ進めて行けば、理想に近づけそうだ。

  • ようやく読破。
    難解な内容ではないがやや冗長でとにかく分厚い。
    ピケティの主張は明解で筋が通っているが理想論で,為政者がこの本に書かれた政策を取るはずはなく…
    この本の刊行から6年,世界の進む方向はとうぜん今のようになるよね。

  • これを読めば、なぜアダム・スミスの本は『国富論』と題されているか、カール・マルクスの『"資本"論』なのか、そして本書の題が『21世紀の資本』なのかが分かる。言い方を変えると、古典派は資本ストック、つまり国民所得の計算を土台にしたが、新古典派は産出フロー、つまりGDPを土台にした。ピケティはもう一度、資本に話を戻した。
    水の民営化は公的資産を見える化し、売却して、公的債務を返済してチャラにしようとする作戦。売却できれば公的資本の純資産はプラスマイナスゼロ。

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著者プロフィール

フランス国立社会科学高等研究院の研究所長、パリ経済学校の教授、ならびにグローバル不平等研究所の共同主宰者。とくにLe capital au XXIe siècle (2013)(山形浩生・守岡桜・森本正史訳『21世紀の資本』みすず書房、2014年)、Capital et Idéologie (2019)、Une brève histoire de l’égalité (2021)の著者として知られる。

「2023年 『差別と資本主義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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