満洲暴走 隠された構造 大豆・満鉄・総力戦 (角川新書) [Kindle]

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  • KADOKAWA
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感想・レビュー・書評

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  • 個人的な感想ですが、
    今、日本社会が、満洲国が崩壊に向かっているかのような状況にあると思っています。
    またまた、考えすぎだよ、この本の影響受けすぎだよ、と思うかもしれませんが、
    今の政府も国民も、当時のそれと、そんな変わらないような感じがしてしまう。つまり、狂っています。

    当時も、少なくない国民が、きっと、「これは、ヤバい、うまくいかないよ」と思っていたはずですが、
    結局は、暴走は止められず、破滅的な結果を生み、現代でさえも、その時の問題に、
    呪縛されています。今、個人ができることは、何か?ほんと考えさせられる。
    あるモノは、政治に参加し、あるモノは、経済的に何とかしようとし、
    あるモノは、お金を貯める。もっと良い行動はないかと思い、この著作を手にしました。
    かなり、良いヒントを得ることができました。

    この20年で、あっという間に、
    日本が政治的にも、経済的にも急速に落ちぶれて
    今は、それを隠そう、隠そうという空気が、
    日本中を覆っている。それか、現実を見ないことにしようと。

    有効かどうか関係なしに、ノリで、政権が運営され、
    経済政策も、失敗、成功という判断がつきにくいほど、
    無責任に、金だけを使っている。

    先の大戦で、44年以降の戦死者が太平洋戦争における死者の7割以上がその期間に集中している。
    大事な判断を先延ばし、先延ばしにして、結局、犠牲は、全て国民が被る。
    それは、今も変わらないだろう。
    コロナ禍で日本人を取り巻く状況は一変しました。
    正確に言うと、もう日本は崩壊状態にある(もしくは、崩壊している)と、
    わかってしまいました。

    戦前の大本営発表のようにファクトとはかけ離れた内容を、
    平然と垂れ流すマスコミ。
    自分だけ良ければいいとマスクを大量に買い込むものや、
    そしてあり得ない価格で、売るもの、
    独善的な正義で、ただ他者を影で批判するもの、
    コロナをきっかけに、今までよく見えていなかった、
    日本の現況がわかるようになりました。

    日本が既に先の敗戦の時のように、
    破滅に行っている状況にあると、
    少なくない人が感じているはずです。

    サラリーマンの方は、リストラに怯え、
    社内の空気は、ますます、ぎすぎすし、
    足の引っ張り合いが横行するようになりました。
    協力するよりも、没交流、やるかやられるかかの状況にあります。


    事業者の方は、いつ潰れるかわからないで状況に陥り、
    資金繰りに奔走するが、先が見えない状況にあります。

    それらの状況から発生する言いようのないストレスの矛先は家族や他者に向かい、
    安全地帯であるはずの家庭が、
    ストレスフルな環境になっています。

    街を歩けば、今にでも、怒号をあげて怒り出す瞬間の人や、
    殺人者を見るような目で、人びとをにらみつけるもの、
    ただただ、現況がよくわからず、いやいや会社に行く人々、、、、

    まるで今の日本は、戦場です。
    まるでというか、戦場そのものになっています。
    おそらく今の日本人の平均のストレス値を測ったら、
    最前線で戦っている兵士と似たようなストレス値になっているでしょう。

    以前の敵は外国でしたが、
    今回の敵は、自分達になりました。
    自国民同士による凄惨な殺し合いを行っています。
    物理的な暴力を使わないで、
    精神的ハラスメントを徹底的に日本人同士でやりあっています。

    問題を解決するには、今の状況を正確に認識することが最優先ですが、
    それをしないで、ただただ、人を傷つけているのが、今の日本です。

    こういう状況の時、私たちはどうすればいいでしょうか?
    私の考えは、「現況を徹底的に理解する」ことだと思っています。
    これは、この著作で、執行氏が行ったことと基本的な同じです。

    自分の哲学を確立し、魂を燃やすように生きる、
    例え笑いモノになろうが、批判されようがです。

    コロナ禍で、コロナ禍対策本が大量生産されていますが、
    そういったものは、大して役に立たないでしょう。
    現在では、どうやって、生き残るか、それぐらいの意識が必要になっています。

    今、日本では、精神的ハラスメントによつて、多くの人が、
    廃人・狂人同然となっています。
    中には、歩くのも怖い人もいると思います。
    その感覚は、非常に正確だと思います。
    なぜなら、日本は、今、戦場になっているからです。

    こういう状況で、どうしたら、生き延びられるか、
    そのヒントをこの著作から、多くもらいました。

    先の大戦で、1944年以降のたった1年足らずの戦死者が、
    太平洋戦争における死者総数の7割以上に集中しました。
    これは、大事な判断を先延ばし、先延ばしにした結果です。
    犠牲は、全て国民が被りました。

    今、自分達の社会も、このような状況になっています。
    毎日、毎日、多くの犠牲者が、大量に生まれています。
    今回は、戦死者という数でもなく、コロナに感染した数でもなく、
    人間性を著しく失った人間、「狂人」の数です。

    政治が悪いんだ!リーダーを変えればいいんだ!
    そんな小手先の改革では、もう何も改善しない状況に、
    日本はなっています。

    絶望感に打ちひしがれている人もたくさんいると思います。
    自死という選択肢を考えている人もいると思います。
    ただ、何も、反抗しないで、そのように選択するのは、
    本当に愚かだと思います。
    考え方を変えれば、この絶望的な状況でも、たくましく生きることもできます。

  • 満洲や旧日本軍の話題を、ここまで読みやすく構成した本ははじめてだった。
    難しい表現や所属、数値の羅列などを極力避け、石原や永田といったキーパーソンのキャラクターを立てて、時系列の事件もストーリーを踏まえて解説することで、ややこしい一連の流れがすらすらと入ってくる。
    「難しいことを、誰にでも分かるように説明すること」の教科書としても、読み返す価値がある。
    戦前日本を舞台にした漫画などをよんでこの時代に興味を持った、普段あまり本を読まない人にもおすすめできる。

    満洲事変から太平洋戦争での敗戦という、日本を破滅させた構造について、筆者はポジティブフィードバックの威力を強調する。
    スマートフォンが普及する→ゲームやアプリの開発が進み、さらに使いやすくなる→さらにスマートフォンが普及する
    (A→B→C→A→B→C→A→B→C・・・)
    といった、ある結果が連続的に次の原因となり循環する、相互促進作用を生み出すと、進行はとてつもない勢いとなる。

    満洲では清代後期から大豆生産が驚異的な拡大をした。
    大豆油の搾りかすが肥料として需要が高まり、いくら作っても売れるようになった。
    当時は華南の綿花やさとうきび生産の肥料となり、日清戦争後は日本にも多く輸出された。
    1909年のハーバーボッシュ法完成以降、窒素を含む化学肥料は世界から飢餓を急速に無くしていくことになる。
    化学肥料の普及以前は、大豆や鶏のフン、チリ硝石などの窒素を含む物質が肥料として世界の食糧生産を支えていた。
    このあたりはThomas HagerのThe Alchemy of Airに詳しい。
    かつて豊かな森林地帯だった満洲は地力がやせておらず、大豆生産に最適だった。
    1906年に南満州鉄道株式会社が設立され、開墾で伐採した森林は馬車と線路の資材になり、
    馬車→鉄道駅→列車→港のサプライチェーンが軌道にのった。
    流通の進歩は満洲大豆を国際商品にし、1920年代には生産が爆発的に拡大した。
    こういった現象を要因Aが何%ととらえるのではなく、相互促進、ポジティブフィードバックとしてとらえるとうまく理解ができる。



    満州鉄道は主要都市と港を結び、旅客と大豆運搬で莫大な利益をあげていた。
    しかし満州国建国後はソ連との戦闘を念頭にした軍の要望で、人のいない国境地帯に向けていくつもの支線を建設し急速に収支を悪化させていく。
    旧日本軍の代名詞といえる軍人の暴走はなぜ起こったのか。

    日本人全般の特徴として、原則に固執せず、既成事実に弱いということを筆者は指摘している。
    すでに起きてしまったことを受け入れ、何とかうまく処理する態度を賢明と捉える。
    大日本帝国憲法でも現地の指揮官が軍を無断で動かすことは当然重罪であった。
    しかし満州事変では、政府に無断で軍を動かした結果、満洲占領というとてつもない戦果をあげる。
    結果がどうであれ、法に従い罰せられるべき指揮官が、むしろ英雄になってしまった。
    これ以降軍人たちは「結果がうまくいけば何をしてもいい」と行動するようになり、政府や軍司令官の統制がきかなくなってしまった。

    原則がない、というのは白洲次郎が「プリンシプルのない日本」で繰り返し指摘していたところだ。
    原則=プリンシプル が無いということは、例えば会員制のゴルフ場なのに会員ではない政治家に恫喝されればプレーさせてしまったり、組織の利益のためには、相手によって言うことをかえたり、組織や個人のアイデンティティを貫かないさまを言う。

    こういった態度がポジティブフィードバックで自己増殖すると、組織は機能不全になる。
    この構造は戦前の日本特有ではなく、現代日本でも変わらない構造で社会が動いていることを、筆者は「わたしたちは今も満洲の呪縛にとらわれている」と表現している。

    ここでは政治には言及しないが、会社の運営

  • (電子書籍版を登録しちゃったけど、じっさい読んだのは紙の本です)
    単に満洲の歴史を描いているのではなく、「関東軍の暴走が日中戦争・太平洋戦争を引き起こし大日本帝国が滅んでいった過程」と「現代でも見られる、日本や会社が暴走しつつある過程」との類似点を描き出していて、とても面白かった。

    満洲はすんなり掌握できたのになぜ中国を掌握することができなかったのかを、2つの国の村の成り立ちから考察するのは新しい視点だった!

    日本の天皇は「守られる王」であって「守る王」ではない、というのは目から鱗。

  • 先の日本の戦争は本当にただの自爆。今も似たようなことを始めてる。

  • おもしろい。
    立場主義であるのは日本だけにとどまらないように思う。

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著者プロフィール

東京大学東洋文化研究所教授。1963年、大阪府生まれ。
著書『「満洲国」の金融』『貨幣の複雑性』(以上、創文社)、『複雑さを生きる』(岩波書店)、『ハラスメントは連鎖する』(共著、光文社新書)、『生きるための経済学』(NHKブックス)、『経済学の船出』(NTT出版)、『原発危機と「東大話法」』(明石書店)、『生きる技法』『合理的な神秘主義』(以上、青灯社)、『生きるための論語』(ちくま新書)、『満洲暴走 隠された構造』(角川新書)ほか

「2021年 『生きるための日本史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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