斜陽の国のルスダン

著者 :
  • 密林社
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本棚登録 : 23
感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (154ページ)
  • / ISBN・EAN: 4560491328503

感想・レビュー・書評

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  • 馴染みのない国を描くときどんな態度で臨むべきなのか、というのは創作をする人間の末席にいていつも考えている。
    グルジア、グルジア、と書かれているけれど、当の「グルジア」の人たちは「それはロシア語読みだから『ジョージア』と呼んでくれ」と言っていた気がして、調べたら日本では表記をジョージアに固めたそうだ。
    だけどグルジアの歴史ものはグルジアという表記で統一されてるのは、書き手としていい姿勢なのかな?とは思うけれども、地名の変化で混乱するのは平成の大合併で何度も経験したこと…などとこの本と関係ないところでグルグル悩んでいた。

    歴史として面白く読めたのですが、文章の好みとして、文が淡白に感じたのが少しもったいなく感じましたが、好みの問題ですね。
    ルスダンはどう美しいのか、髪を複雑に編むとあるけど具体的にどうなのか、二人の結婚式と祝宴とかをもう少し情緒というか、雰囲気たっぷりに書いてほしかった、という完全なる個人の好みです。

  • とっても良かった。歴史小説が苦手な人にもお勧めの一冊。

    ディミトリの献身的な姿に、一旦目標を決めた人は軸がぶれないから強いし、敵対した時に容赦がないから怖いなと思った。
    ルスダンも読み進めるうちに印象がどんどん変わってくるから、いやはや素晴らしいなと思った。
    一通り全部読んでその後もう一度序章を読み返すと、見えてくる風景が違ってきます。

    とってもおすすめな一冊。

  • 同人誌の感想ということでブログに書いています(ながい)
    http://ouryorkbar.blog94.fc2.com/blog-entry-340.html

  • (2022/10/16読了分)ルーム・セルジューク朝の王族の1人、ルスダンの王配ディミトリが主人公となる演目が宝塚で演じられるのを機に、ディミトリ目線で再読。ひとじちとしてグルジア王国に遣わされ、美しき王女ルスダンに、幼馴染として共に育ちながら、立場上かなわぬ思いを寄せていたが、モンゴルの襲来、義兄ギオルギ王の死により、思わず為政者の夫となり「王配」に。しかし他国出身ゆえ、一切の権力を与えられず、ホラズムの侵攻に敗色濃厚なグルジアを救うために、父の伝で密かにホラズムと交渉すると、裏切られたと感じたルスダンが不倫に、そして、ディミトリは幽閉され。その後ホラズムのジェラールッディン王に仕えたデイミトリは、周囲がグルジアの復讐に燃える者、と見てくることを逆手に取り、裏切り者として誅されることを覚悟の上で、ルスダンのトビリシ奪回の手助けをし、殺される…と。最後の、魂だけでも、トビリシのルスダンの元へ帰って来たシーンは涙なしには読めず。◆こうなっては、キリスト教の神だろうとイスラムの神だろうと、自分を天国に受け入れてはくれないだろう。もう二度と、神に祈る資格さえ無いような気がした。(ディミトリ p.109)◆ホラズムの使者として、ルスダンのもとへ来たディミトリ◆わたくしは、貴方が的だろうと味方だろうとどうだっていいのよ!(略)貴方がこの地上のどこかで生きていてくれさえすればいいの!(ルスダン p.125)◆「グルジアとホラズムに二重の裏切りを働いた貴公のことを、後の世の人間は悪く言うだろう。だが、貴公があくまでグルジアの王配として生きたこと、このジャラルッディーンが見届けた」p.132◆あとがきに出てくるT.Soupさんは、最初に読んだ時は気づかなかったけど、いまや「ダンビアのおいしい冒険」「天幕のジャードカール」を送り出してくれてるトマトスープさんだと気づく。(2016/07/25読了分)舞台は13世紀ジョージア。おそらく史書からすると絶世の美女だったが、戦は負け続き、家臣もまとめきれず、夫には裏切られ、都も追われ…と散々な評価しかくだされなかったルスダンに、兄の意志を受け継ぎ、国を守ろうと、夫と力を合わせるも、モンゴルやホラズムの残党の前に、及ばずながら散っていった悲劇のストーリーを紡ぎあげ、魅力ある読み物に仕立てられているのには感嘆。祖母のタマラ女王にも興味がひかれた。

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著者プロフィール

小説家。脚本家。漫画原作者。筑波大学比較文化学類卒業。筑波大学大学院人文社会科学研究科一貫制博士課程中退(修士取得)。
主に西洋史に取材した創作活動を行っている。これまでの作品にオーディオドラマ脚本『暁のハルモニア』『紺碧のアルカディア』『悠久のアンダルス』『1848』『軽業師タチアナと大帝の娘』(NHK-FM「青春アドベンチャー」にて放送)。縦スクロール漫画『フローラの白い結婚』原作(LINEマンガにて連載)。

「2022年 『斜陽の国のルスダン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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