- Amazon.co.jp ・電子書籍 (342ページ)
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
映画シックスセンスを思い出させる最後のどんでん返しが見事。私の亡父が満州からの引き揚げ者であったこともあり、興味深く読んだ。酒を飲むと悲惨な昔話をしたものだが、幸いにも、亡父の家族は生き別れになることもなく無事に日本に帰還できた。その話を、真剣に聞かなかったことが今となれば悔やまれる。亡父も、自分は両親(私の祖父母)の本当の子供ではないようなことを冗談のように話したことがあったが、そしてそれは本当に冗談であったと思うのだが、冗談だとしても亡父にそう言わしめるような、複雑な事実が、戦時中、戦後の混乱時には当たり前のようにあったのだと思う。本書の最後に希望が見えるのが救い。
同著者の作品は「告白の余白」に続き2作目だが、私の評価は全く分かれた。「告白の余白」を読んだ後は、随分がっかりしたのだが、本作品を読んで、もう一作読んでみる気になった。 -
ミステリには<ノックスの十戒>というものがある。
たとえば「双子や変装による一人二役はあらかじめ読者にしらせなければならない」など「謎を解くための材料はすべてあらかじめ読者に提示しておくべきだ」というミステリ大原則のルールだ。
この大原則に則り、本書の評価が低い感想をいくつか見かけた。
私も少なからずそう思わないこともなく読んでいったが、でも本書はそれを軽く凌駕する感動の読後感があった。私はそこをなによりも評価したい。
「27年間兄だと信じていた男は偽物なのか?!」
ただこの一点を明らかにするために老いた盲目の主人公が探偵役になる本書。
ベースには太平洋戦争と中国残留孤児問題がある。盲目の人の暮らしぶりや中国残留孤児にまつわる筆致は圧巻だ。江戸川乱歩賞受賞作の名に恥じない。
主人公が「見えない」ということで、すべてが「闇」。
本書では全編を重い「闇」が支配する。
それが真相がわかる最後、世界が反転する。
これが見事だった。
主人公の「闇」が眩いばかりの「光」になった。
そこにあったのは<家族の無償の愛>。
ご都合主義といわれようと、こういう救いがあってよかった。
家族というものを再認識した本だった。
良いものを読ませていただきました。ありがとうございます。
===データベース====
村上和久は孫に腎臓を移植しようとするが、検査の結果、適さないことが分かる。和久は兄の竜彦に移植を頼むが、検査さえも頑なに拒絶する兄の態度に違和感を覚える。中国残留孤児の兄が永住帰国をした際、既に失明していた和久は兄の顔を確認していない。
27年間、兄だと信じていた男は偽者なのではないか――。
全盲の和久が、兄の正体に迫るべく真相を追う。 -
乱歩賞だから普通のミステリで終わるかなあって。
思ってたけど、違いました。
社会派推理小説であるのは事実ですが、その中での仕掛けは驚きをもたらしてくれます。本格の面白さ、驚きをこう言う社会派で出すのも含め、今に至る作品ですね。 -
全盲の主人公、満州で生き別れた兄と日本で再会した兄は同一人物なのか、目が見えない主人公につきまとう影は誰なのか。
前半は、目が見えない生活や心理描写に、目が見えない世界はどういうものなのか、また、満州残留孤児の思いや日本の対応など、知らなかった現実の世界について考えながら読んだ(参考文献の多さからもわかるようにかなり勉強して書き込まれている)。
後半は、物語としての面白さに引き込まれる。ああ、だからあの人はこう言ったのか、このときのこれはこういうことか、と前半の日常がまざったパートが伏線になっており、ぐいぐいとミステリー小説としての面白さに引き込まれる。
読後感も好き。 -
思わずジャケ買いしてしまった本。盲目の主人公目線で進む展開はこちらもハラハラの連続でした。主人公がかなり疑り深い印象でしたが、目が見えない世界で暮らすには視力以外の感覚を研ぎ澄まさなければならないから当然といえば当然なのかも…と思ったり。面白かったです!
-
2018/2/12-21読了