地下鉄道 (早川書房) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • アメリカで奴隷制度があったころ、黒人奴隷の逃亡を助ける「地下鉄道」と呼ばれる組織があったそうで、それがもしも、本当に地下を走る鉄道だったら?というフィクションなのだけど、すごく引き込まれてフィクションということをすっかり忘れて読んでいた。地下鉄道に乗って、主人公の黒人奴隷コーラがいろいろな町へ逃げる途中、都会化されて高いビル群があるような街が出てきたけど、ぜんぜん違和感なく、そこの博物館で働くとか、医療を施すところがあって、とか、まさかこんなことが実際に?!と最初思っていたくらい。考えてみればSFなんだけど。リアルさ、というか、話の流れの自然さがすごい、と。
    しかし、逃げられたかと思うたびにまた追われという展開や描写が、悪夢のように恐ろしすぎて、わたしにとってはゴシックホラーとすら思えるような。ラストは悪くないはずなんだけど、ラスト少し前で明かされるコーラの母親の結末になんだかもうすっかり気力を奪われたというか、読み終わって暗澹たる思いにとらわれた。わたしみたいに精神的によわっちい人間にとっては体に悪い読書かもとさえ(笑)。でもたぶん普通は勇気を与えられたりするはず。。。

    アメリカの人種問題、公民権運動くらいになるとまだ少し読んだり見たりする機会があってなじみあるのだけど、奴隷制廃止前の話となると、子どものころ読んだ「アンクルトムの小屋」以来かなあという感じで、あまり知識もなかったけれど、こういう事実があったのだということをつきつけられた感じもして。もっと知らなくてはいけないことがある、という気持ちにもなった。

    • たまもひさん
      こんにちは。
      これ、読もうかどうしようか迷ってるところです。私も「精神的によわっちい」ので、女性や子どもがあんまりつらい目に遭うようなのを...
      こんにちは。
      これ、読もうかどうしようか迷ってるところです。私も「精神的によわっちい」ので、女性や子どもがあんまりつらい目に遭うようなのを読んじゃうと、結構なダメージを受けてそれが尾を引いてしまうんですよねえ。
      わりにグロいのも平気で読むくせして、何言ってるんだかと自分でも思いますが。
      そう、私も「勇気をもらった」とは思えないタイプです。うーん、どうしよう。
      2018/02/15
    • niwatokoさん
      こんにちは。わたしも殺人事件だとかけっこうグロいもの読んでるんですけどねー。たまたまわたしの気分が暗めだったっていうだけかもしれません。あと...
      こんにちは。わたしも殺人事件だとかけっこうグロいもの読んでるんですけどねー。たまたまわたしの気分が暗めだったっていうだけかもしれません。あと、もしかすると、これは、フィクションだ、しかもSFなんだ、ホラーも入ってる、と思って読むと少し大丈夫かもしれません。わたしはけっこう、フィクションだってことを忘れていたので、よりダメージが大きかったかなとも思います。
      2018/02/15
  • 2016年、アメリカで非常に高い評価を受けているとの噂を聞いてからずっと読みたかったこの本、やっと読めました。まずは、こんなにエンタメだったとは!と驚いた。やっぱり、アメリカは『ハンガーゲーム』が爆売れする国だけあると、妙に納得。こんな読み方は不謹慎かもしれないけど、人種問題は横に置いておいて、虐げられた個人が人間としてのなけなしの尊厳を守り抜くために命がけで闘う物語って意味ではまさに『ハンガーゲーム』と同じテーマを扱っていると思う。そのいっぽうで、19世紀のアメリカでこんなにも残虐なことがまかり通っていたことに目を向けさせる、上質の歴史小説としての役割をきっちり果たしているところがニクい。黒人の中にも裏切者はいたし、白人の中にも信念と命を賭けて黒人を助けようとしていた人がいたこと。その強さ。同じ立場だったら、私にはそんな勇気を奮えただろうか。まず無理だ。ならば、時代に甘んじて、残酷な行為に見て見ぬふり、いや、もしかしたら自ら手を染めていたのだろうか。これ以上考えるとつらくなるからやめるけれども、そういう問いをしっかりと投げかけてくれた・・・と、こういうとき、日本人ってつい差別する側に立って考えがちだけど、私たちも差別される側になってもなんもおかしくないことも忘れてはいけないだろう。あんな目に遭わされるのなら、私は一瞬で死にたい。こんな具合に、自分の情けなさと向き合わざるをえなかったのですが、それでも物語としてとても面白かったです。土臭さと格調高さが同居しているような、力強い文体もよかった。
    コーラの逃避行のなかで一番心に残ったのは、サウスカロライナ。リベラルでいい街そうな顔して実は…ってところは、うっすら背筋が寒くなった。
    だけど、気になるのは、これ、SFなの?ってこと。 どんなフィクションにも架空の設定ってあるでしょ?その程度じゃない?わざわざSFに分ける必要もないような…。
    最後に、アメリカの人種差別を扱った小説として、名作の誉れ高い本作をもってしても、私の中で『われらが歌う時』を超えられはしなかったことは、付け加えておきたい。(それに、『われらが歌う時』のほうがよっぽどSFじゃない?時空超えてたよね?)それと、ちょうど一昨年、人種差別について勉強したときに読んだ何冊かのすぐれた新書を思い返すにつけ、このテーマに限って言えば、淡々とした事実の羅列から成るノンフィクションをフィクションは越えられないのではないか、と読みながらずっと思ってたことも事実。身も蓋もないけど。

  • 今アメリカで起きていることとあまりにかぶっていてショックである。救いは本書でも現実にも「こんなことはおかしい」と立ち上がる人がいること。

  • 19世紀前半、アメリカ南部奴隷州のプランテーションの娘コーラの、自由を求めた逃亡の記。と書くと、ノンフィクションのように思えるが、これは小説。ただ、圧倒的なリアリティーで迫ってくるから、小説であることを忘れて読みふけった。
    表題の『地下鉄道』とは、秘密裏に黒人奴隷を北部の自由州に運ぶ地下を走る鉄道のこと。もちろん、当時こんな鉄道は走っていなかったのだから、この部分は紛れもないフィクションだ。ただ、それ以外の部分、つまり奴隷のおかれた環境、主人から受ける仕打ち、奴隷同士の裏切りなどは、どれも実際に起きたことのようにリアルに、そしてもの悲しく綴られる。それもそのはず、著者の祖母はプランテーション出身であり、また、著者はかつて奴隷だった人たちから存命中に証言を得るプロジェクトに参加していたそう。圧倒的なリアリティーがあるのも納得だ。
    本書は、米国でピューリッツァー賞ほか、数々の賞を受賞しているそうだが、これはトランプ政権の誕生と無関係ではないだろう。

  • 歴史として通り一遍の知識しかなかった、アメリカという国の創成期におけるありとあらゆる限りの横暴と虐殺と差別…その中にあって地下鉄道という微かな希望をささやきあった人々の息吹が聞こえてくるような、胸がいたい作品。

    『この世は冷酷かもしれない。だが人間がそうである必要はない。拒みさえすれば。』という一文が余韻として沁みてくる…

    読後どうしようもなくやるきれず…ビリー・ホリデイの『Strange Fruit』聴いてしまった。

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