シェイプ・オブ・ウォーター オリジナル無修正版 2枚組ブルーレイ&DVD [Blu-ray]

監督 : ギレルモ・デル・トロ 
出演 : サリー・ホーキンス  マイケル・シャノン  リチャード・ジェンキンス  ダグ・ジョーンズ  マイケル・スタールバーグ  オクタヴィア・スペンサー 
  • 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
3.71
  • (41)
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  • (8)
  • (4)
本棚登録 : 447
感想 : 92
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988142372314

感想・レビュー・書評

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  • 楽しみにしていたトロっち(ギレルモ・デル・トロ監督...)アカデミー賞受賞作。
    絶対好きなんだろうなあ、という、やめたほうがいい謎の確信をなんとか抑えつつ鑑賞。
    結果、やっぱり好きな映画になってしまった...。

    いろいろなおとぎ話をイメージさせるような物語、古き良きB級映画へのオマージュを散りばめ、監督がこだわりつづけている‘異形のもの’への愛を感じさせる映画でした。

    ヒロイン役のサリー・ホーキンスは話せない役。
    だからなのか、全身からエネルギーがほとばしるような演技。喜びも悲しみも怒りも、そして悦びも。超美人ではないけれど上品な顔立ちだと思います。彼女の操る手話はとても美しい。
    彼女の‘ヒーロー’となる‘異形のもの’の造形は『ヘルボーイ』に出てたキャラと似ていますね。そういえば彼も恋をしたんだった。『パシフィック・リム』にも通じるような滑らかな動き。触られるとぽうっと光るところがいいなあ。蛍みたい。いやホタルイカか?
    彼らの敵となるマイケル・シャノン。
    ...爬虫類顔?これは爬虫類VS両生類の対決だったのか(笑)
    ヒロインへの口説き文句がウケた。ある意味とても不器用な人なのか。
    人に言えない秘密を持つヒロインの親友、リチャード・ジェンキンズ。いい人過ぎない、いい人感がほっこりさせられた。

    まさしく大人のお伽噺。
    ラストまで映画の世界に浸れました。

  • とても観たかった映画 個人的にも好きな系統の映画だったし アカデミー賞とる前から注目していたが 映画館で観たかったけど 残念ながらDVDでの鑑賞になってしまった 前評判も良かったから期待し過ぎて外れたら嫌だなぁと思ってましたが、そんな心配は要らず とても感動したし、いい作品でした。寓話であり まるで お伽話のような 舞台も時代も小物や歌も素敵で絵本の中の世界もあるけど ラブストーリーしかも 大人のラブストーリー 映画のジャンルでラブストーリーは苦手だったけど…これは純愛 true Loveだった

    ギレルモ・デル・トロが監督
    1962年、冷戦下のアメリカ。政府の極秘研究所で清掃員として働く女性イライザは、研究所内に密かに運び込まれた不思議な生き物を目撃する。イライザはアマゾンで神のように崇拝されていたという“彼”にすっかり心を奪われ、こっそり会いに行くように。幼少期のトラウマで声が出せないイライザだったが、“彼”とのコミュニケーションに言葉は不要で、2人は少しずつ心を通わせていく。そんな矢先、イライザは“彼”が実験の犠牲になることを知る。
    サリー・ホーキンスがイライザ役で主演を務め、イライザを支える友人役に「ドリーム」のオクタビア・スペンサーと「扉をたたく人」のリチャード・ジェンキンス、イライザと“彼”を追い詰める軍人ストリックランド役にマイケル・シャノン。
    「彼は不完全な私じゃなく ありのままの私を見てくれる」
    という 半魚人に恋するイライザ自身 姿かたちじゃなく本物の愛を見つけたんだなぁって 映画を観ながら応援してしまった…不思議な生き物を実験の物として扱う軍人達に暗い雰囲気に包まれ不安な気持ちで観ていたが ハッピーエンドで終わって本当に良かった
    そして ラストの詩
    「あなたの姿がなくても
    気配を感じる
    あなたの愛がみえる
    愛に包まれて私の心は優しく漂う」
    詩が流れて 思わず 涙してしまいました。

  • 「人魚姫」の話が悲しすぎるので、いつか人魚姫が救われる話を読みたいと思っていた。
    本作はいわば、人魚王子が声を失った人魚姫を救い出す話。冷戦期アメリカのあらゆるしがらみ、資本主義的ヒエラルキー、人種差別、ソ連との対立……ともかくめんどうくさいしがらみをくぐり抜けて人間(女性)が人魚に戻るまでの物語。その橋渡しをするのが映画館。というのもすばらしかった。
    そうだよな。人魚姫を不幸に陥れたのが映画ならば、人魚姫を救うべき責任があるのもまた映画だったのだよな。

  • 1962年、アメリカ。政府の極秘研究所で清掃員として働くイライザ(サリー・ホーキンス)はある日、施設に運び込まれた不思議な生きものを清掃の合間に盗み見てしまう。
    “彼"の奇妙だが、どこか魅惑的な姿に心を奪われた彼女は、周囲の目を盗んで会いに行くようになる。
    幼い頃のトラウマからイライザは声が出せないが、“彼"とのコミュニケーションに言葉は必要なかった。
    次第に二人は心を通わせ始めるが、イライザは間もなく“彼"が実験の犠牲になることを知ってしまう。
    “彼"を救うため、彼女は画家の親友ジャイルズ(リチャード・ジェンキンス)や同僚のゼルダ(オクタヴィア・スペンサー)の力を借り国を相手に立ち上がるのだが、彼女達の前には執念深い研究所の警備主任ストリックランド(マイケル・シャノン)や「彼」を研究に利用しようとするロシアのスパイが立ち塞がる。
    果たしてイライザは、「彼」を守り愛を貫けるのか?
    「ヘルボーイ」シリーズでもアウトサイダー同士の愛をリリカルに描いたギレルモ・デル・トロ監督が、人間の女性と半魚人の愛を描いたファンタジーラブロマンス映画。
    言葉が話せず孤独だが純真なイライザが、卵と音楽を通して心を通わせ、信頼し愛し合う交流が丁寧に描かれていて、アウトサイダー同士のピュアな愛が観る者をキュンキュンさせる。特にイライザと半魚人の水中のラブシーンは、アウトサイダー同士の「愛を確かめ孤独を埋め合いたい」というピュアな愛が伝わる美しいラブシーン。
    中盤のイライザたちが半魚人を研究所から連れ出すシーンやクライマックスの半魚人を逃がそうとするイライザたちと執念深いストリックランドの攻防が、ハラハラドキドキさせる。
    イライザがお伽噺にありがちな純真なだけでなく、性欲も強い意思もある等身大の女性で、ゼルダも旦那や上司に媚びない強い女性であるところが、リアル。
    イライザと親友のジャイルズの性差を越えた友情、イライザとゼルダの女性同士の友情も、ステキ。
    クライマックスのオチは、ギレルモ・デル・トロ監督の「美女と野獣」のオチに対する違和感が投影された説得力のある結末で、赤や緑など絶妙な色使いの映像美が美しい、ギレルモ・デル・トロ監督の集大成で最高傑作と言えるファンタジーラブロマンス映画。
     

  • うーん、みんなが良いって言うから期待度が高すぎて、好きだけどそんなに面白くはなかったなという感じ。いつも通りのギレルモさんでした。これで確信したけど、ギレルモさんは脚本が毎回あまりよくない。ダメ出しされてる方も大概はそこのとこみたい。ギレルモさんは自分の趣味的なことでしか映画作ってない。一番近いのはロバートロドリゲスだと思う。
    ただ、色んな監督の「成熟」という面だと(北野武の『アウトレイジ』や庵野秀明の『シンゴジラ』など)、この作品も当てはまるので、アカデミー作品賞はまあ納得かなと。『スリービルボード』の方が面白かったけど、ハリウッドはあれにはまだやらないと思う。

    アカデミー賞=面白い作品ではない、たまにちゃんと合致して面白い作品もあるけど、獲りやすい傾向の作品ってありますね。
    映画に関する映画とか、あとここ数年はマイノリティに関する映画。それと、これ言ったら身も蓋もないけど、年功序列で「こいつにそろそろあげてもいいだろう」ってあると思う。なので、その監督の面白い作品はちょい前ので、受賞した作品はそんなに面白くないことが多い。ギレルモさんだとやっぱ面白いのはパンラビとパシリムだなあ。

    いつものように全く情報を入れずに鑑賞。「彼」の腕だけチラッと写ってるスチルだけ見てたので悪い予感はしてたんだけど、『大アマゾンの半魚人』のリメイクじゃねえか!と笑。エイブじゃねえか!当然またダグジョーンズですね。
    『大アマゾンの半魚人』、観たことないけど知ってたのは『七年目の浮気』を観てたからです。ユニバーサルモンスターズのリブート、ダークユニバースシリーズあるのに大丈夫?と思ったら、ユニバーサルにリメイクを掛け合ったけど権利下りなかったみたいですね。たぶんダークユニバースがあるからだろうけど、ダークユニバースの方がコケて開店休業状態という皮肉。ギレルモさんに下ろしときゃ良かったのにねえw
    これパシリムも似た感じで、私の想像だけどハリウッド版エヴァの企画が進まなかったので、ギレルモ版のエヴァ対ゴジラを作ったんじゃないかなと思ってます。

    パシリムとの関係性で言うと、ゴジラオマージュがパシリムで、今回の『シェイプオブウォーター』はゴジラ以外の本多猪四郎作品が入ってると思う。変身人間シリーズとか『地球防衛軍』とか。ホフステトラー博士が平田昭彦っぽい。

    冒頭いきなり「ハンサムな王子の時代」とか言われて「んん?」ってなったけど、これは普通にケネディのことだと思う。カレンダーの曜日からも1962年って特定できるのだけど、13年前が釜山の戦いって1年ずれているのはミス?(余談ですが、あまりにみんなが良い良いって言うもんだから、キューバ危機の歴史改変ものになってって、「彼」との戦いで核戦争が起こったせいで冒頭の水没シーンにつながる…とか思ってたら全然違いましたねw)

    オクタヴィアスペンサーさんが『ヘルプ』『ドリーム』に引き続いてまた似たような役で出ている。マイケルシャノンもまた悪役で似たような役。典型的なサイコ野郎顔ですね。ふたりとも好きな俳優さん。

    ちょいちょい笑いがある点はよかったです。手話でFU○Kってやるのは私でもわかって面白いシーン。
    ギレルモさんがここまで社会派なメッセージを込めた作品を作るとは、と思ったけど彼はメキシコ人なのでやはり現政権にはそう思うよねと。メキシコ国境との壁の話は『マチェーテ』が名作だったけど、ロバートロドリゲスはメキシコ系で『ミミック』第2班監督してたりと、『アリータ』への布石が。

    ジャケは青いけど、中身の映像はグリーン。クロノスもパンラビも緑色の服着てるので、緑色が好きなんでしょうね。
    イライザの恋愛感情にしたがって、わかりやすくカチューシャやパンプスが赤くなる。逆にジャイルズの絵のケーキは、赤だったのに緑色にされる。
    これは同時に共産主義の赤の意味も若干あるのかなと。『ミツバチのささやき』の黒と同様。このへんもアカデミー賞を取った理由かと。

    最近けっこう注目してるのは、女性がセックスした後に「よかった♡」ってなるシーンがある映画。この映画でもあって、いやらしい意味ではなくハッピーな気分になれる。『恋人たちの予感』や『秋津温泉』、『ベティブルー』なんかにもあって、とても良かったです。

    エンドテロップのサンクス欄が、ギレルモさんの映画仲間、オタク仲間たちで楽しい。チャチャチャフィルムズのキュアロンとイニャリトゥ、ジェームズキャメロン、コーエン兄弟、エドガーライト…
    テロップにないけど先程書いたロバートロドリゲス、ピータージャクソン…と世界のオタクネットワークが素晴らしい。

    そしてスティーヴワン!!他の方のレビューで「真仮面ライダーに似てる」ってあったけど、竹谷&韮沢、そしてスティーヴワンって時代が昔ありましてね…この人も日本の特撮好きで『プレデター』や『ガイバー』やるんだけど。スクリーミングマッドジョージのお仲間で。
    「彼」はETと同じで神やキリストなんだけど、外見が気持ち悪いのは『幼年期の終り』と同じ意味合いだと思う。「もしも神様の外見が悪魔だったら?」ってやつです。

  • 序盤で早くもぐっと心をつかまれた。
    緑を基調としたカラーコントロール(ケーキまで緑!)もさることながら、部屋の壁紙や調度や小物がかわいいのだ!
    ゆで卵機。ポータブルレコードプレイヤー。
    そんな中で営まれる生活が、ミュージカル映画やテレビや音楽や絵画やに浸されながらも、几帳面に繰り返されている。
    代わり映えのない生活というと、えてして人は退屈だとか刺激がないというが、裏側からみれば丁寧な生活でもあるのだ。
    お風呂でオナニーし夢想することが日課であって何が悪い。

    ところで導入、水中でカメラがふわふわしていたが、現実を描き出してからもカメラはふわふわしている。
    つまり彼女は現実を通して夢想している人なのだ。
    このあたりの、現実忌避者/夢想家という紙一重の存在で思い出すのは「アメリ」だが、ただ家具調度といった見た目ではなく、スピリットも似ている。
    (好きなものを持つ者が、実は強いのだという卓見は「桐島、部活やめるってよ」でも描かれている)
    もちろん彼女が就いているのが掃除婦という「見えない仕事」であるのは示唆的で、現実/夢想の対比はそのままマイノリティの問題とも連結しているのだ。
    言葉を発せないのはただ身体上の特徴ではなく、話すことが許されていない当時の女性代表ともいえる。

    発端は、虐げられた者同士の出会った瞬間に感じる、友愛。
    小物として登場した卵が、異形の存在とのコミュニケーションに役立つあたり、気が利いている。
    彼の眼……瞼が上下ではなく左右に動くあたり、デル・トロらしい愛に満ち満ちたクリーチャー設計で、嬉しくなってしまう。
    幸せそうに彼女を見るのだ。話せない彼女を。手話やジェスチャーでなんとか意思疎通を図ろうとし、ある程度伝わっている様子。言葉が通じないからこそ。
    そんな魂の同胞が電気棒でむごたらしく躾けられたり(血の滲む皮膚!)、殺害計画が進んでいると聞き及んでは、もう居ても立っても居られない。
    「彼を助けられないなら私たちも人間じゃない!」と。

    このへんで色調が変わっているのに気付いた。
    インタビューにいわく、緑は現在(彼女と彼)。青は未来(ストリックランド)。オレンジは過去。そして暴力や喜びは赤。なのだとか。

    色彩と同時に彼女の世界に滲み入ってくるのは、他者だ。
    マチズモ全開のストリックランド。
    彼の造形が、ステレオタイプすれすれだが単純な悪と言い切れないところに、魅力がある。
    マチズモで他者を圧倒するが、そのマチズモに自ら首を締められている。
    わかりやすいくらい男根主義で他人を蔑ろにし暴力に傾き車や家やトロフィーワイフや子供を手に入れてもセックスのときには奥さんの口を閉めて喋らせない。
    喋れない掃除婦をセフレにしたいという、ひどい男だ。
    半魚人の彼に食いちぎられた指は、はっきりと男根の象徴。
    だから窮状進むにつれて腐ってくる。
    怒りに任せて指を千切るシーンは、凄まじい。

    他者2は、ストリックランド配下だが実はロシアのスパイのホフテストラー。
    冷徹ではないが、決して情に流されて現状を見失うわけでもない、なかなか微妙なニュアンスを、この映画に持ち込んでいる。

    さて、なんだかんだして彼を連れ出して、風呂場に匿う。
    この短期間ながらのイチャラブ生活も、大変多層的で奥深い。
    半魚人が猫を食ってしまい逃亡するのだが、逃げた先は同じ建物の1階の映画館なのだ!
    つらいときは映画館の暗がりに逃げ込む私たち自身じゃないか!分かり合える!
    このあたりで、他者3、画家の隣人ジャイルズの造形がぐっと深くなる。
    もともと彼女を励ます友人として、まずいパイやバイセクシャルや面白い場面が多かったけど。
    彼に頭を触られて、うわーそれは衛生的にどうかと思うよ、と眉をしかめ、しかしそのおかげでハゲに髪がちょっと生えてくる!
    このちょっとしたお笑いが、終盤に利いてくるのだ。

    そして、セックス。風呂場を密封して。
    1階劇場に水がぼたぼた落ちるくらい。
    窓の水滴が2つ重なる、というだけでなく、はっきりと性欲をもって交わるという事実を、誤魔化さず描く。
    ここにおいてもはや寓話ではなく、現実に踏み入ってくるのだ。
    (「美女と野獣」「人魚姫」の構図を逆にした映画、だけど、それらでは誤魔化された性をはっきりと描いた映画、でもある)
    だからここで生理的嫌悪感を覚える人がいるのは必然。
    毒は同時に味わい深い薬でもあるから。
    (少し話は逸れるが、結局彼女は彼をオナニー棒にしているだけじゃん、彼に主体性はないんじゃないか、文化の衝突っつったって猫食っちゃうくらいで、ひたすら被害者ぶるだけで、見た目長身でイケメンだから女にモテてというだけの話じゃん、という意見も、わからないでもない。が、周到に蒔かれた種のきめ細やかさを後で思い出すにつけ、そんなあらさがしなどどうでもよくなってくるのだ。)

    さて、彼女は雨の日を選んで桟橋に逃す、と決意する。
    もちろんつらい。
    だからテレビに入って、歌い、彼とともに踊る。
    モノクロになって。
    声が出ているわけだ。
    これが現実逃避ともいえるし強さであるともいえる場面で、甘美なだけでなく力強い。

    中盤から終盤に、凄まじい暴力が続くのも、デル・トロらしい。
    「パンズ・ラビリンス」で兵士が敵を撃って、倒れたところを足で押さえて2回、3回と打ち込むのを見て、震えたものだが、本作でもぎょっとするような銃撃場面がある。
    だが、彼は一度倒れ、蘇り(キリスト!)、彼女を抱えて海に飛び込み、治し、そのとき彼女の首には鰓ができて……と。
    夢想の向こう側へ行くという「パンズ・ラビリンス」の再話だ。
    ここ、単純に事実を描いているかどうかといわれれば、怪しい。
    導入と同じくジャイルズの語りで締めくくられるので、ひょっとするとジャイルズの願望や創作なのではというニュアンスが込められているので、厳然とした事実ではない別の切り口もあるという提示でもあるのだ。
    そしてまた個人的には、モンスターとして生き返った彼女が、ヒトとして彼と出会ったころを回想している=夢を見ているという解釈も、持っておきたい。
    ループものというほどかっちりしているわけではないが、夢の中で夢を見ているその夢の中でまた夢を、というボルヘス的なラストだと、思った。

    最後に、半魚人は何かといえば、アマゾンから来た異形の者。キリスト以前の神でもある。
    そしてまた、ハリウッドにメキシコからやってきたデル・トロ自身でもあるのだ。
    半魚人がマイノリティに寄り添うように、デル・トロもオタクに寄り添って、というかオタクである自身を恥じることなく堂々と、好きなものは好き、と公言してはばからない。
    蛸壺に閉じこもってぶつぶつ呟くのではなく、社会や時代も盛り込み、なおかつ、水=愛という人類史的記号を前面に出す、誰に出しても恥ずかしくない名作が、ついに出来上がったのだ。
    と、偉そうなまとめ方をしてしまったが、単純にグロテスクでかわいいものが好きなので、この世界観好き!

    番外編。シリーズ何を見ても何かを思い出す。
    ・緑および赤という色彩と水……ジャン=ピエール・ジュネ「ロストチルドレン」。
    (あ。「ヘル・ボーイ」のロン・パールマンは「ロストチルドレン」に出てるわ)
    ・家具調度およびキャラの滑稽さ……「アメリ」。
    ・唖者のサリー・ホーキンス……「レッド・ドラゴン」のエミリー・ワトソン。
    ・だんだん可愛くなっていく……「ロッキー」のエイドリアン。
    ・マイケル・シャノンのクレイジーさ……「レオン」のゲイリー・オールドマン、そしてもちろん「パンズ・ラビリンス」の義父。
    ・異形の生き物を海に還す(しかも全然別の場所に!)……「ドラえもんのび太の恐竜」のピー助。
    ・むしろ人類のほうがどうかしている……「E.T.」。
    ・公式いわく……うろおぼえだけど「美女と野獣」、未見だが「大アマゾンの半魚人」「半魚人の逆襲」。

  • 俺たちのギレルモ・デルトロが異種愛の入門編をこの世に残してくれた…。「形を変える水は愛を表すのに相応しい」と答えていたデルトロに涙した

  • THE SHAPE OF WATER
    2017年 アメリカ 124分
    監督:ギレルモ・デル・トロ
    出演:サリー・ホーキンス/マイケル・シャノン/リチャード・ジェンキンス/ダグ・ジョーンズ/マイケル・スタールバーグ/オクタヴィア・スペンサー
    http://www.foxmovies-jp.com/shapeofwater/movie/

    1962年アメリカ。「航空宇宙研究センター」で清掃員として働くイライザ(サリー・ホーキンス)は耳は聞こえるが喋ることができない。映画館の上のアパートで暮らし、親友は同じアパートに住む画家でゲイのジャイルズ(リチャード・ジェンキンス)と同僚の黒人女性ゼルダ(オクタヴィア・スペンサー)。

    ある日研究センターに新しい研究対象とホフステトラー博士(マイケル・スタールバーグ)、警備の軍人ストリックランド(マイケル・シャノン)がやってくる。彼らの研究対象はアマゾンで発見され地元では神と崇められていた謎の半魚人(ダグ・ジョーンズ)。暴力的で威圧的なストリックランドの指を噛みちぎり理不尽な暴力に晒されるこの生物に同情と興味を覚えたイライザはこっそり彼と交流を試み、いつしか互いに心を通わせるように。しかし生物が解剖されることになり、イライザはなんとか彼を逃がそうと試みるが・・・。

    時代背景がはっきりしているにも関わらず、なぜかいつどこともしれないおとぎ話感。自分自身が生きていない時代の話だからかもしれないけれど、映画館やモノクロテレビから流れるミュージカルはノスタルジックだし、部屋のインテリアはレトロ可愛く、セットだけ見れば『アメリ』を見る気分と大差ない。米ソ冷戦時代という現実もありつつ、たとえば極秘機関の極秘研究のわりに警備態勢が杜撰なところなど、このおとぎ話的世界観のおかげでツッコミを入れる気がなくなるのは利点。

    障害を抱え、けして若くも美人でもないけれどチャーミングで少女っぽさのあるイライザは『ダンサーインザダーク』のビヨークの姿と何故か重なった。『モード・ルイス』も良かったけど、サリー・ホーキンスはこの手の役が本当に上手いですね。むくわれないゲイ画家、陽気で面倒見のよい黒人女性、オタク気質の博士、どっからみても悪役のマイケル・シャノン等、登場人物たちはある意味ステレオタイプともいえるけれど、そこいらへんも含めておとぎ話の安心感。とはいえエロも暴力もあり、そこがギレルモ・デル・トロとティム・バートンの決定的な違いかもしれない。シザーハンズは触れ合えないからこその崇高さだったけれど、こちらはなんと、ちゃんと性行為が可能なのだ!(びっくり)

    魚人を演じるダグ・ジョーンズは『パンズラビリンス』ではパン役を『クリムゾン・ピーク』でも幽霊の役をやっていたデル・トロ映画のクリーチャ―専門俳優(笑)この魚人、ビジュアルは仮面ライダーアマゾンをH・R・ギーガーがめっちゃリアルに描いたらこうなるかなという感じで、気持ち悪いと美しいの絶妙のバランス。魚人なのにどこか微妙にイケメンに見える不思議。南米になら本当にこういう生物いそうだし、原始的な神の姿はこういうものかもと思わされるリアリティもある。日本だったらこれ魚人じゃなくて河童かな~とかどうでもいいことを考えていたら、ふと大昔に見たカールスモーキー石井が監督した『ACRI』というトンデモ映画(浅野忠信が人魚と恋に落ちて人魚になっちゃうオチだったような)のことを思い出したりもしました(笑)

    ストリックランドはサディスティックで傲慢でものすご~くイヤなやつだけれど、彼は彼で頑張っても出世できない、上官の命令に逆らえない等、それなりに気の毒だなと思う側面もあり。お気に入りのキャデラック壊されたらやっぱり悔しいよね。でもまあ最期はやっぱりザマアミロと思ってしまうけど。そして全くの余談ながら数か月前まで「おっさんずラブ」というドラマに夢中だったせいで、ジャイルズがだんだん吉田鋼太郎に見えてきたり(笑)

    ラストはうん、これしかないだろうなと個人的には予想通りの終わり方。美女ではなくあえて不美人だけれどデル・トロ流の美女と野獣で異類婚姻譚。外見や種族の違いは障害にならないというファンタジー。そのロマンチックさよりもビジュアルだけでも個人的には十分満足。

    • 淳水堂さん
      こんばんは。
      ギンレイ二本とも気になりつつ、日程とれないので諦めていましたが、こちらのレビューで満足しました!
      いつも楽しいレビューあり...
      こんばんは。
      ギンレイ二本とも気になりつつ、日程とれないので諦めていましたが、こちらのレビューで満足しました!
      いつも楽しいレビューありがとうございますm(_ _)m
      2018/08/15
    • yamaitsuさん
      淳水堂さんこんにちは(^^)/

      私なんかのレビューで満足しちゃダメですよう!(>_<)
      こちらこそいつも楽しくレビュー読ませていただ...
      淳水堂さんこんにちは(^^)/

      私なんかのレビューで満足しちゃダメですよう!(>_<)
      こちらこそいつも楽しくレビュー読ませていただいてます!

      シェイプオブウォーター、あちこちで再映してたのですがギンレイでかかるまで我慢して待ってました(笑)お盆のせいか空いていて良かったです。

      先週までやってたグレイテストショーマンもとても見たかったのですけれど、平日から連日満席立見で諦めました・・・ヒット作上映ありがたい反面、混雑するのが辛いところです。
      2018/08/16
  • 俳優さんたちが地味なんだけどなかなか味があって楽しめるんだけど ファンタジーだからなのかちょっと感動できなかった。撃たれたのにいとも簡単に復活できるなんていかがなもんでしょう⁉︎ もうちょっとどうにかならない⁇

  • 宇宙人と聾女性との恋愛物語。二人を助ける同僚の黒人女性と同性愛者の絵描き。かたや仲を引き裂こうとする上司の白人男性。恋愛を謳いつつもマイノリティーが白人野郎と戦う二項対立の図式は現代アメリカを評した縮図か。と、率直な感想。

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著者プロフィール

映画監督・脚本家・小説家。
1964年10月9日生まれ。メキシコ出身。
劇場長編監督デビュー『クロノス』(92)が各国の賞で高く評価され、97年の『ミミック』でハリウッド・デビューを果たした。『デビルズ・バックボーン』(01)、『ブレイド2』(02)を経て、念願だったマイク・ミニョーラの人気アメコミの映画化『ヘルボーイ』(04)を実現。映画はヒットを記録し、続編『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』(08)はスタジオをユニバーサルに移して製作。その間にスペインで製作した『パンズ・ラビリンス』(06)は、アカデミー賞脚本賞にノミネートされたほか、カンヌ国際映画祭など各国で高い評価を受けて気鋭の監督として国際的に広く認知されるように。07年にはペドロ・アルモドバルらとメキシコで製作会社「チャチャチャ(Cha-Cha-Cha)」を設立。『ロード・オブ・ザ・リング』の前日談にあたる大作『ホビット』シリーズでは脚本を手掛けた。10年『パシフィック・リム』で、久々に監督に復帰。14年にはチャック・ホーガンとの共著で発表した初の小説「ストレイン」シリーズ(09年)のテレビドラマ化が実現。本作に続き、今後は『Pinocchio』『ヘルボーイ3』『パシフィック・リム2』などの話題作が予定されている。

「2016年 『ギレルモ・デル・トロ クリムゾン・ピーク アート・オブ・ダークネス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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