- Amazon.co.jp ・電子書籍 (155ページ)
感想・レビュー・書評
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リビウのある西部はほぼポーランド、
キーウのある中部が真のウクライナ、
ドンパス地方と黒海沿岸のロシア系住民が多く住む新ロシア(プーチンがそう呼んでいる)。これら家族形態も宗教も民族も大きく異なる三つの地域がソ連時代に1つになったのが「ウクライナ」であることなど、米国西欧偏重?のニュースを見てるだけだとわからない事実を教えてもらいました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
本屋さんでたまたま見つけた本。
実に興味深いです、良書です。
ものごとは片側からだけ見たのでは真実はわからない。未だ続くウクライナ問題、原因がどこにあり、背景はなんなのか。
力を取り戻すロシアとそれに対する西側諸国、アメリカがなにを狙っているのか。我々日本にとっても他人事ではないなと。
個人レベルでも自ら力を持っておくこと、依存しない他の選択肢を持っておくことの重要性もあらためて感じました。 -
フランスの人類学者(歴史人口学・家族人類学)、エマニュエル・トッドさんが、ウクライナ戦争について緊急出版した書籍。
興味深かった。
新しい視点を与えてくれました。
文藝春秋に掲載した記事(日本人向け)に加え、2017年のポーランド人ジャーナリストによるインタビュー記事、2021年のフランスでの記事をまとめたもの。
ウクライナ戦争が始まってから、いくつかの記事や書籍を目にしてきたけれど、トッドさんの考え方は視点が違って興味深かった。
普段私たちが目にしている情報は、日本が属している「広義の西洋」の視点であり考え方からのものなのだけれど、この方は、人類学者として、少し引いた視点から世界を見ているという感じ。
うまく言えないのだけれど、一言で私なりの解釈を書くと、
『おかしくなっているのはロシアではなく、(実は少数派である)西洋側なのではないのか?』
(※私の解釈です)
ということ。
最も進んでいると思い込んでいる「西洋」は、貧困化や分断や経済の歪みによって、非合理的な社会に変貌してしまっているのに、当の本人たち(西洋の中にいる人たち)はそれに気が付かずマウントだけ取ろうとしているのではないか。
そして、目の前で起こっているウクライナでの戦争は、米と英の支援を受けたロシア内戦、とも言えるのではないか。
今後、ロシアや、その他の国々と、ヨーロッパ+広義の西洋に含まれる日本や韓国が、どのように世界のバランスをとっていくべきなのかを、今一度引いた目で見つめるべきなのでは、ということを言いたかったんだと思う。
(※何度も書くけど、私なりの解釈です)
とても興味深かったのは、「専制国家」とか「民主主義国家」というものと、「家族人類学」の視点との相関関係がある、というようなことが書かれていたこと。
実は私が、エマニュエル・トッドさんの名前を知ったのは、少し前に読んだ本郷和人さんの「日本史のツボ」の中でした。
家族の形というのは、政治形態にも影響するということと、一番新しいと思われている「核家族」が、実際には一番「原始的な家族の形」なのだということが参照されていました。核家族→父系・外戚系家族→共同体家族、と進化している、と。
この分類で考えれば、西洋は「核家族」であり、ロシアは「共同体家族」。西洋の中でも、ドイツと日本は「父系家族」に近い。ウクライナは、もともとロシアではあったけれど「核家族」。政治がこの家族形態を作ったのではなく、家族形態の変化によって政治や国家が形作られている、と。
新しい共同体家族をベースとしている国々が、古くて不具合のある(※私の勝手な解釈)核家族をベースとしている国々(西洋)に対して考え直しを迫っている?
そんなふうに解釈することもできるのかも??(※私の勝手な解釈)
だからといって、作り込まれてきた社会をまっさらにすることはできないわけなので、この戦争を、どうやって終わらせればいいのか、どうやって両陣営が納得すればいいのか、政治家だけでなく、末端の私たちも考えていかなければならないのかもしれないと感じました。
難しすぎる。
いや、それにしても、この本は興味深かった。
新しい視点を与えてくれた。
こういう新しい視点を常に意識して物事を見なくてはならないと感じました。
…どうすればいいのかわからないけど…。 -
2022年2月に勃発した、ロシアによるウクライナ侵攻。
戦禍は長引き、この文章を書いている時点でも、終わりが見えない状況となっています。
新聞等の解説を読んではいるのですが、「なぜ、このようなことが起こったのか?」という疑問が晴れないままでいました。
また、日本での報道を見聞きしていると、「プーチン大統領はとんでもない人だ」という論調が強く、いちど感情面を排除して状況を理解したいと思っていました。
本書の著者は、フランス人の歴史学者。
この方の著書は以前、英国がEUを離脱した際に、読んだことがありました。
『問題は英国ではない、EUなのだ 21世紀の新・国家論』
https://booklog.jp/users/makabe38/archives/1/B01LZ5RKNG
本書はウクライナ侵攻発生の1ヶ月後から行われた、日本の雑誌社によるオンラインインタビューを新書化したもの。
冒頭で著者は、自分自身の主張は自国フランスでは反響が大きすぎると思われるため、日本のメディアの取材を最初に受けたと言っています。
そして今回の侵攻の経緯について、以下のような見解を示しています。
・東方拡大について、NATO(米国、欧州)は繰り返し、合意を破ってきた
・それに対してロシアは以前から警告を発しており、今回の侵攻は、(暴力的であるロシアの性質も踏まえ)予想されたことである
ロシア、ウクライナの両国以外では、米国、英国が大きな影響力を及ぼしたとし、特に米国については、第2次世界大戦以降、「戦争を売り込む」ような行為を継続していると批判しています。
さらにウクライナについては、ソ連時代以前には国としてまとまっていなかったこと、独立後も地域によりロシア他近隣国との親密度が異なり、国としての統治が弱かったことを指摘しています。
このあたりまでをAudibleで聴いて、日本では断片的に報道されていたロシア側の主張について、(賛同するかは別として)「こういうことだったのか」と、理解することができました。
また、この戦争に関わる各国が抱える問題点についての、(著者の専門分野である)家族構成を切り口にした分析も、興味深く読ませてもらいました。
米国そして欧州を合わせた西側諸国は、今も「世界の中心」と言えるのか。
日本は、安全保障を基軸とした日米同盟を、より深めるべきなのか。
自分が見聞きしている情報は正しいのか、正しいかどうかの判断基準は何か。
国際問題について、そして自らが接している情報の受け取り方について等々、考えさせてもらいました。
とはいえ、本書を読んだだけで、この問題を理解できた/理解して良いとも思えません。
他の視点から書かれた著作も読んで、自分なりに、理解を深めていきたいと思います。
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ロシアがウクライナを侵攻して、もうすぐ一年が経とうとしているが、今後の世界情勢が気がかりなものだ。
発端となったロシアが、次に敵と捉えているのが大国アメリカなのだから、友好国の日本にとっては、アメリカの動向を常に意識しておくべきなのではないか。
アメリカは第二次世界大戦後も戦争をし続けてきた国。
弱小国であれ、アフガニスタン、イラク、シリア、ウクライナと軍事介入をしてきた。
このたびのウクライナ侵攻は、ロシアが自分たちと同じようなことをしているといった目でみているというのです。
「戦争」は、もはやアメリカの文化やビジネスの一部になっている。
世界を戦場へと誘っているのは、もしかしたらアメリカなのでは?
本書では、東アジアにも戦争がもたらされる可能性は十分あるという。
危機が訪れて恐れるようでは、破綻国家になってしまうでしょう。 -
本人も「アメリカ嫌い」と言っているけど、ここまでボロクソに言うとは! ロシア擁護にも思えてびっくりするけど、本人曰く今回の戦争をフラットに捉えることを追求している模様。
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ウクライナとロシアの戦争。我々がニュース等で見ているのは、欧米側の視点というのを忘れてはいけない、と気づかせてもらえる内容。ウクライナ、と一言で言っても地域によって民族も異なるし…
強いロシアが弱いウクライナをいじめている、と見るか、強いアメリカが(自分の手を汚さずに)弱くなったロシアをいじめていると見るのか。
年を経て、これが「第三次世界大戦」と歴史の教科書に載るようになった時に、どのように評価されているのだろうか… -
ロシア・ウクライナ戦争のニュースを見ない日はないが、歴史的背景や西欧諸国の考えを知りたくて手に取った本。
ロシア目線ではNATOが東方拡大を進めることは死活問題で、アメリカが冷戦後にロシアに「NATOの東方拡大はしない」という約束を反故にされた。
さらにウクライナ西部にはネオナチの考えを組むアゾフ大隊がおり、第二次世界大戦でナチスと戦ったロシアからすると、ウクライナ西部は反乱分子に見える。
ニュースに目を向けると、プーチンの異常性が取り上げられてるが、ロシア国内ではプーチン政権への支持は高い。これはトッド氏によれば家族体制が関係している。共同体を重んじ、父系家族であるロシアでは権威主義的な考えに親和性がある。そのため、ロシア国民が独裁者を求めている。
ロシア・ウクライナの戦争は、権威主義(中国・ロシア) vs 自由民主主義(欧米諸国)という構図で見られているが、これは間違っている。なぜなら、欧米諸国はすでに自由民主主義は崩壊し、能力主義による不平等を寛容する社会へ変容しているからだ。
米国の家族体制に目を向けると、ロシアとは対照的に核家族が支配的である。これは兄弟間の不平等を受け入れることを意味するが、白人間の平等を担保することで、社会での平等主義を維持してきた。しかし、冷戦中にロシアへ対抗するために、黒人も含めた万人の平等を目指したために、能力主義の台頭を許してしまった。 -
ミアシャイマーの予言を引用、一部賛成、一部反対。
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タイトルがショッキングなので、手に取ったが、週刊文春を読んでいるのと同じ、週刊誌ネタ的論であった。
この手の論者によくある、私の専門は家族人類学なので、専門外のことではあるがと、弁明してから論が始まる。
ウクライナ戦争について、アメリカ嫌いのフランス人学者のロシア擁護論であった。外婚制共同体家族構造社会と絶対核家族構造社会の争いというが、キリスト教的二元論が根底にあるのは否めない気がする。世界はもっと多面的で、複雑だろう?
アジアの辺境から見れば、この戦争も、キリスト教徒の白人同士の領土争いとも見えるし、もちろんG7を中心とする西側が世界の大半とは思っていなし、アングロサクソンを中心に、西洋(フランスだって例に漏れない)が半世紀前まで、とても酷いことを世界にやって来たこともよく知っている。
それでも、その上で確立した主権国家を、いまさら、戦争という形で侵略するリーダーがいて、それに盲目的に従う国民がいることに仰天している。この本は、その「狂気」のリーダーが勝利しない限り、この戦争は終わらないという。世界を終末に導くのは、誰だ。