わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫 イ 1-3)

  • 早川書房 (2006年3月31日発売)
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本棚登録 : 1922
感想 : 186
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2023年5月21日読了。少年時代上海で両親が失踪した記憶を持つクリストファーは、長じて探偵となり共産党・国民党・日本軍が激しく戦闘を繰り広げる上海を訪れるが…。現在進行形で戦火をかいくぐる様子が描写されるのは従来のイシグロ作品と異なった印象を受ける。「少年のころ何が起きたのか?クリストファーは何を引きずっているのか?」の謎を後半まで引っ張るあたりこの作者の小説の巧みさを強く感じる。子どもの頃、周囲の人々や事件に対して働きかけができず傍観するしかなかった、という誰にでもありうる記憶を著しく刺激する小説だ…。再会した親友アキラがどのような人生を過ごしてきてその後どうなるのか、そもそも彼は本当にアキラだったのか・あるいはアキラは実在したのか?というあたりぼかされているような気もするが、自分の目から見た一面でしか事実を把握することはできない、というのも人生なのか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: その他フィクション
感想投稿日 : 2023年5月21日
読了日 : 2023年5月21日
本棚登録日 : 2023年5月21日

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