「読み終わるのがもったいない」という感想を聞いて、興味がわいて読んでみた。
その言葉の意味がわかったような気がする。
今まで読んだ村上春樹の作品で一番よかった。何がいいって、構成や世界観、セリフと、謎に満ちたストーリー展開、どれもすばらしい。
この小説では、二つの世界が交互に展開されます。
「私」が巻き込まれる形で現代の知られざる世界を冒険する「ハードボイルド・ワンダーランド」と、幻想的・牧羊的な世界観が魅力の「世界の終わり」。
二つの世界観が交互に展開することで、とても心地の良いストーリーの緩急が生み出されています。
「海辺のカフカ」でも二人のストーリーが交差していましたが、カフカの繋がりは同じ世界線で二つのエピソードが同時進行的に展開していました。
この小説では、一見つながりそうもない別の世界が、細い糸で繋がりそうな予感を与えてくれます。
まったくオチはないかもしれない、そんな予感もあるのですが、想像力を書き立てるような言葉の散りばめ方がとてもうまい。
キーワードがちょっとずつ繋がっていく感覚であったり、春樹ワールド専門用語が、抽象的な説明台詞によってなんとなく理解されてきたり、美味しそうな料理の描写や、先の見えない展開、そういった一つ一つの要素に惹きつけられて、文章一つ一つをかみしめるように読んでしまいました。
村上春樹の世界観に慣れていると「おなじみ」と感じるものも登場しますが、これまで読んだ作品にない独特の魅力があるし、二つの物語それぞれに文体にも違いが見られるのも大変おもしろい。
また、セリフもとても印象的でした。
「心」や「愛」に関する言葉にハッとさせられたこともあります。
「愛というものがなければ、世界は存在しないのと同じよ。」というとある人物のセリフ。これが「世界の終わり」と何かつながるんだろうか?次巻にも期待大。
- 感想投稿日 : 2018年10月15日
- 読了日 : 2018年10月15日
- 本棚登録日 : 2018年10月15日
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