高校3年生のたしかちょうど受験勉強をしていたころに一度読み、大学生のころにも一度読み、そして初めて読んでから10年以上たってもう一度読んだ。何度読んでも違う発見がある。
過去に読んだときには、物語の面白さと切なさにノックアウトされたきりで、中盤のキティとのラブストーリーの記憶ばっかり残っていたのだが、いまあらためて読んでみると、この小説の形式面に驚いた。
いくつもの口承の冒険譚(というかむしろほら吹き話に近いのだが)が入れ子の構造になっていて、さらに語り手と聞き手が実は偶然ではなく必然でつながっている。すべてが偶然の糸でつながっているかのような物語が実はずいぶん緻密な必然の結果であるということに舌を巻いた。
しかしこのオースター流の感傷的で饒舌な文体は読むたび切ない。それからノスタルジックな60年代~70年代のNYの雰囲気や時代背景の描写、月のモチーフの使い方もオシャレ度高し。
なんにしても、大好きな本です。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2010年6月13日
- 読了日 : 2010年6月13日
- 本棚登録日 : 2010年6月13日
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