青春三部作といわれる〝風の歌を聴け〟〝1973年のピンボール〟〝羊をめぐる冒険〟の続編です。この作品をあわせて、羊四部作とも呼ばれているようです。
本作も喪失感、空虚感、孤独感、そして死の気配が全編に満ち満ちているのですが、けっして暗くジメジメした仕上がりにはなっていません。それはやっぱり、言葉の選び方のセンスの良さなのでしょうネ。シニカルでファッショナブルで、その上とてもクールです。けれど、それでいて嫌味はありません。だれもが漠然と感じている、うまく言葉にできないもどかしさのようなものが、物語という形を取って目の前に展開されます。
主人公は現実と非現実の狭間で、辛うじて日々を送っているのですが、現実も非現実も、ボクらが生きていく上においては、実はどちらも現実的で、ボクらがみんな儚い存在であるという観点から見れば、実はどちらも非現実的なのではないかと、そんな思いがしました。
なにはともあれ、人は自らの意志で生きているようで、実はそうではなくて、なにか得体のしれない大きな流れに乗せられてしまっているのかもしれません。自分の思いとは異なった行動を取ってしまうことが、あまりに多過ぎるような気がします。それでも踊り続けなければならないのが人生です。
いずれにせよ、生きるということが常に死と隣り合わせである限り、喪失感、空虚感、孤独感は拭い去れるものではありません。謎は謎のまま、放置されることの多い村上作品ですが、物語を読み込んで、自分なりの解釈で謎解きをするというのも、読後の楽しみのひとつですネ。
べそかきアルルカンの詩的日常
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べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
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- 感想投稿日 : 2017年5月27日
- 読了日 : 2017年5月27日
- 本棚登録日 : 2017年5月27日
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