21世紀の資本

  • みすず書房 (2014年12月6日発売)
3.92
  • (88)
  • (99)
  • (73)
  • (10)
  • (6)
本棚登録 : 3352
感想 : 171
5

フランス人経済学者による、資本主義について書かれた本。
著者は、r>gという不等式を使って、過去に蓄積された富が、労働賃金の成長より上回ることを問題視している。フランスをはじめ、イギリス、ドイツ、イタリアなどのヨーロッパ諸国、あるいは米国、日本などに関する豊富なデータをもとに、論理を展開しており、論理的で説得力がある。問題解決策として、累進的な資本税の導入を主張している。
マルクスやレスター・サローと資本主義に関する分析は大きく違わないと思うが、不完全にしろデータの裏付けがある分、より学術的アプローチに挑戦していると言えるのではないか。

「資本主義は自動的に、恣意的で持続不可能な格差を生み出し、それが民主主義社会の基盤となる能力主義的な価値観を大幅に衰退させることになる」p2
「産業革命以来、格差を減らすことができる力というのは世界大戦だけだったことがわかる」p9
「マルクスの主要な結論は、「無限蓄積の原理」とでも呼べるものだ。つまり、資本が蓄積してますます少数者の手に集中してしまうという必然的な傾向だ。これがマルクスによる資本主義の破滅的な終末予測の基盤となる。資本収益率がだんだん下がってくるか(そうなると蓄積の原動力がなくなり、資本家同士の紛争が起こる)、国民所得における資本の比率が無限に上昇するか(そうなると遅かれ早かれ労働者たちが団結して反乱を起こす)。いずれにしても、安定した社会経済的、政治的な均衡はあり得ない」p11
「相続財産を持つ人々は、資本からの所得のごく一部を蓄積するだけで、その資本を経済全体より急速に増やせる。こうした条件下では、相続財産が生涯の労働で得た富より圧倒的に大きなものになる」p29
「過去の成長は、ほぼ常にかなりゆっくりした年率で生じており、通常は年率1~1.5%程度の成長でしかなかったのだ。年率3~4%以上の成長は、他の国に急速に追いつこうとしていた国で起こったものだけだ」p99
「ドイツは20世紀、どの国よりも、インフレで公的債務を埋めてしまった国だったと言える。両世界大戦で二回とも巨額の財政赤字を出したのに、いずれの場合もインフレによって負債はかなり低い水準まで急減した」p149
「1800年、奴隷は米国人口の約20%を占めていた。総人口500万人のうち、奴隷はだいたい100万人。南部では、奴隷が占める比率は40%に達した」p167
「長期にわたる純粋資本収益率の安定(18、19世紀は4~5%、現在は3~4%)は、たいへん重要な意味を持つ」p214
「最初に気づく規則性は、資本の格差が、労働所得の格差よりも常に大きいということだ」p254
「(財産構成)トップ十分位のほとんど全員が持ち家だが、不動産の重要性は富の階層を上がると激減する。トップ百分位では、金融、事業資産が不動産を凌駕する。資産1000万ユーロ以上では、不動産は10%以下で財産の大半は株だ。住宅は中流階級と小黄金持ちに人気の投資だが、本当の富は常に金融、事業資産が主体なのだ」p269
「今日では、資本所得が労働所得を上回るには、社会階層のずっと高いところまで登りつめる必要がある。資本所得が労働所得を超えているのは所得配分の上位0.1%に限られる」p286
「金融危機があっても米国の格差の構造的拡大は止まっていない」p307
「(米国)2000~2010年の所得階層上位の0.1%の大半がトップ重役だと言える。スポーツ選手や役者、さまざまな分野のアーティストは、グループの5%以下でしかない」p313
「長い目で見て賃金を上げ賃金格差を減らす最前の方法は、教育と技術への投資だ」p325
「どんな社会でも、富を蓄積する過程は主に二つある。労働と相続だ」p394
「(世界の富の格差)トップ千分位が世界の富の約20%、百分位が約50%、十分位が80~90%を所有している。下半分が所有しているのは、どう見ても5%未満しかない」p454
「(1990~2010年の資産変化)ビル・ゲイツは、10年以上「フォーブス」ランキングの第一位に君臨したが、その資産は40億ドルから500億ドルに増加している。ロレアルのリリアンヌ・ベタンクールは、20億ドルから250億ドルに増加している。どちらの財産も、1990~2010年の年間成長率は13%超で、インフレ調整後の実質資本収益は10、11%相当だ」p456
「報告されていない巨額の金融資産がタックス・ヘイブンに存在する。ガブリエル・ズックマンの推計によると、世界のGDPのおよそ10%に相当する。これを上回る(最大で2,3倍の)推計を出したNGOもある」p484
「保健医療・教育への国家支出と代替・移転支払い(年金、失業保険)を足すと、社会支出は総額で国民所得の25~35%となる。これは20世紀の富裕国における政府歳入増加のほとんどすべてを占める」p498
「70%以上の税率を試してみた最初の国は米国だった」p528
「(米経済学者)経済的、金融的なエリートたちは、自分の利益を死守するためなら、天井知らずの偽善ぶりを発揮する。かれらは、米国の所得階層の中でうらやむべき地位にいるのだ。自分の私的利益を擁護しつつ、それが一般の利益を守る行動なのだというあり得ない主張を平気でする。どうも米国の政治家たちは、民主党だろうと共和党だろうと、ヨーロッパの政治家たちよりもずっとお金持ちであり、平均的な米国人とは全く違う区分に属しているらしい。これでなぜかれらが、自分の私的な利益と社会全体の利益とを混同しがちなのか説明がつくのではないか」p537
「(中国が資本統制をしていること)この点で中国は明確に有利であり、資本統制で中国を負かすのは困難だろう」p563
「政府が支出をまかなう方法は主に二つ。税金と負債だ」p567
「(巨大な公的債務を減らす方法)手法は三つある。資本税、インフレ、緊縮財政だ」p568
「不安定化をもたらす主要な力は、民間資本収益率rが所得と算出の成長率gを長期にわたって大幅に上回り得るという事実である」p601
「不等式r>gは、過去に蓄積された富が算出や賃金より急成長するということだ」p602

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2018年10月30日
読了日 : 2018年10月30日
本棚登録日 : 2018年10月30日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする