高度な文明を失った代わりに、人々が特殊な能力を獲得した世界。
この世界を旅するラゴスという名の男が本書の主人公です。
ある時は奴隷として鉱山で働き、またある時はその知恵を称えられて王と呼ばれ。
旅先で出会う人々や出来事を綴った短編が積み重ねられ、だんだんとラゴスの目的やこの世界の背景が見えてきます。
ラゴスとの交流がもたらした刺激や知識により、人々の考え方や技術が向上していく様子を読みながら、どこかで不安を感じている自分がいました。
今は電気もない世界ですが、やがて産業が発達し、科学技術が世の中を変えていくだろう。
政治や社会の在り方もより洗練されていくだろう。
しかし、その先に待つのは、再びの滅亡なのではないか。
そんな予感にうっすらとした寒さを感じた読後でした。
初めて読んだ筒井康隆作品にあまり馴染めず、それ以降読んでこなかったのですが、本書はとても好みでした。
あとがきによると、筒井作品の中では異色作のようですが、これを機にほかの筒井作品にもチャレンジしてみたいと思います。
読書状況:読み終わった
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読みました。
- 感想投稿日 : 2018年11月6日
- 読了日 : 2018年10月17日
- 本棚登録日 : 2018年11月6日
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