訪問者 (1) (小学館文庫 はA 4)

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  • 小学館 (1995年8月10日発売)
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「トーマの心臓」の前日譚。9歳のオスカーのパパ、グスタフは売れない写真家でママ、ヘラとはケンカばかりだった。ある雪の日グスタフは夫婦喧嘩の末ヘラを射殺する。オスカーがグスタフの本当の子ではないと打ち明け離婚を切り出したからだ。真実を悟ったオスカーは警察に疑いの目を向けられるグスタフをかばい、グスタフはオスカーと犬のシュミットを連れて旅に出発する。グスタフの精神が不安定な中オスカーは必死で旅を続けるが、シュミットの死によりグスタフはオスカーの本当の父親が校長を務めるギムナジウムに彼を残し南米へ旅立つ。
「たとえあなたが裁きをおこなえる神様でも子どものいる家にきてはいけないんだよ」「ぼくは悪い子だったけど、どんな悪い子でも家にいていいんだって。」

他に「城」「エッグ・スタンド」「天使の擬態」を収録。第二次世界大戦下のパリを舞台に、ドイツからパリに逃げてきた不法移民のユダヤ娘ルイーズ、無垢な殺し屋の少年ラウル、ドイツ軍に抵抗するレジスタンスのマルシャンの3人を描く「エッグ・スタンド」は短編ながらも映画のように深い。
「戦争は人間の心の中にある欲望か何かの炎が狂ったように次つぎと人から人へ引火してとめどなくもえひろがる大火事だ」「大火事はすっかりもえつきないと消えないね」
「戦争はいちど始まったら終わりだ。平和!正義!そんなものじゃない。戦争は戦争。破壊だ。平和は平和の中にしかない」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2021年7月11日
読了日 : 2021年7月5日
本棚登録日 : 2021年7月5日

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