ムーン・パレス (新潮文庫)

  • 新潮社 (1997年9月30日発売)
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本棚登録 : 4203
感想 : 400
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主人公マーコ・フォッグが盲目の老人トマス・エフィングの見回りの世話をするバイトをするところを読んで、これは映画『セント・オブ・ウーマン』ではないかと思いました。アル・パチーノがアカデミー主演男優賞を取った映画、面白かった。1回目見た時はタンゴを踊るシーンしか覚えてないのですが、何十年後かに見た時はアル・パチーノの演説シーンの迫力に驚いたものです。こちらの2人は言葉と食べ方が汚い老人と青年が口論するような関係で、そもそも見た感じがだいぶ違います。ですが、青年が成長して老人が少し考えが変わっていくところは一緒です。

途中からマーコ・フォッグとトマス・エフィングの本当の関係が判明していく過程がこの小説のひとつの面白さです。ポール・オースターはNY三部作でも推理小説の要素をちらつかせて読ませてきましたが今作でも同じです。

マーコ・フォッグにとって月とは社会情勢にも人間関係にも影響されない場所という意味があると思います。それでマーコが月に行くための決断がすべて間違っています、ビクター伯父さんにもらった本を売る、お金がないのでセントラルパークで生活をする、トマス・エフィングのところでバイトを始める、妊娠したキティ・ウーと分かれる、ソロモン・バーバーを穴に突き落とす等々。彼のずれた言動、突発的な行動力、飛躍した思考が楽しいのです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年2月12日
読了日 : 2023年2月12日
本棚登録日 : 2022年11月14日

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コメント 1件

cybeleさんのコメント
2023/04/07

失礼します。
セント・オブ・ウーマンとあり嬉しくなりました。
脚本も素晴らしいし、
ガブリエル・アンウォーですね。

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