卒業 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (1989年5月8日発売)
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加賀恭一郎シリーズを読み直ししたくて。
加賀恭一郎といえば自分の中では『新参者』、そして阿部寛。
TVドラマの方はろくに観てなかったけど、原作から漂う雰囲気がばっちり決まった配役だなぁと当時から感心したもの。
それからは、『新参者』含めて何作か加賀恭一郎シリーズを読んだ記憶があるが、いずれも脳内では阿部寛が登場。
そして今作も。

なのだが、今作は加賀恭一郎の原点ともいうべき一作で舞台はなんと加賀の大学時代。
流石に阿部寛に大学生はキツいわと思いながらもどうしても登場してしまう雰囲気の重なり。

高校からの付き合いで、学部は違えど同じ大学に通う7人(加賀、沙都子、波香、藤堂、祥子、若生、華江)の友人達。
4年生の秋から冬にかけての卒業間近の時間を描いた青春ミステリ。

加賀は冒頭いきなり、友人グループの一人、沙都子に交際もしていないのにプロポーズをする。
それだけを取ると、ぶっとんだ奴にしか思えないのだが、特に答えを求めていないというところや、それを境に関係がぎくしゃくすることもなく、泰然とただ己の道を突き進む、それでいてその後発生する事件に対して周囲への観察を怠らず抜け目ない分析をする姿に、トンデモ言動は凌駕され漢気すら感じてしまう。
シリーズ一作目にしてのキャラ造形の確立ぶりには脱帽。

さて事件の方は、祥子が寮でリストカットした状態で遺体で発見されるところに始まる。
自殺であることが濃厚だが、他殺の線も捨てきれないという中、仲間内でも沙都子、加賀を中心に調べを進めていたとろ発生した第二の事件。
祥子の死を偲びつつも毎年の恒例行事、高校時代の恩師宅での茶会(ただのお茶飲みではなく、茶道の雪月花之式に則ったもの)中に波香が青酸カリの服毒死に見舞われる。
こちらも一見自殺にしか考えられない状況なのだが。。。

ミステリのトリックとか動機とかは、まぁ国内の本格物っぽいなという印象で、可もなく不可もなく。
普通にすらすら楽しめるもの。

最後に沙都子が下した決断と加賀の返答が渋い。
そんなにしっかりとシリーズを追っていなかったので全く的外れな引っ掛かりかもだけれど、このエピソードが今後の展開で効いてくる場面があるのか無いのか気になるところ。
加賀の原点を掘り起こせたことが良かった一冊。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 国内ミステリ
感想投稿日 : 2024年3月16日
読了日 : 2024年3月10日
本棚登録日 : 2024年3月16日

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