これは間違いなく日本ミステリ界の歴史的名作のひとつ。
度重なる改版の中でブラッシュアップされた面ももちろんあるだろうが、デビュー作にしてこの完成度は驚異でしかない。
いきなり始まる関口と京極堂の認知を巡るそこそこの分量の議論なんて、新人作家が仕掛けるオープニングとして大胆にも程があるし、ここぞのところで響く風鈴の音がもたらす間と余韻による空気の引き締めなど技あり。
その風鈴の音と「この世には不思議な事など何もないのだよ」のキラーワードが終始意識を捕まえて離さない絶妙なストーリーテリング。
京極堂の語る小難しい理屈は分かったような分からなかったような気にもなるけど、たぶんそこにこそ魅力を感じるファンもいるだろうし、生半可な理解だったとしても十分に楽しめる内容。
色んな挿話がちゃんと事件の背景を構成していて、後で回収されたり、雰囲気を高めたり、それがどうした?みたいなところが殆どない。
唯一、関口と涼子の過去だけが朧げにしかわからなかったけど、それがまたこの本を読み終わった後の談議ポイントとなるのか、そこまでつまびらかにするのは無粋、という境界線ということなのか、いずれにしろ読み終えてなお記憶へのしこりを残す。
と凄いなー、と言葉を並べ立てた後にwikipediaで京極さんのページを見ると、「暇な時間に会社でなんとなく書いた作品」との来歴情報が。
!?
これがなんとなく書いた。。。
どんな才能なんだよ。
次は『魍魎の匣』。
絡新婦ぐらいまでは読んでた気がするが、全く記憶にない。。
- 感想投稿日 : 2023年11月18日
- 読了日 : 2023年11月11日
- 本棚登録日 : 2023年11月18日
みんなの感想をみる