お葬式を同窓会の材料にする者、どこか憎めない悪人……。彼らをゆるすわけではないけれど、切り捨てずに気持ちを想像してしまい、悩む義理などないのに悩んでしまう。温かい気持ちが灯っているのだ。私も悩む人間で在りつづけたい。知りあえないまま別れが来てしまったとき、愚かでも繋がろうとしたい。主人公がミヤちゃんに誤解したように、誰かを冷たいと思ってしまうことは私自身これからも多くあるだろう。でも深く知ろうとして、伝わったかわからずとも、伝えようと挑みつづけると決めた。重松はやはり大切なことを、上巻だけで教えてくれた。
■タイトル ★★☆☆☆
きれいにはまとまっている。うどんの話って、と興味は惹くかも。でも母が借りてきたのだが、私だったら重松清でなければ手に取っていなかったと思う。「峠」というのはお葬式などとかけているのかもしれないが、昇華がされずよくわからなかった。
■書き出し(序章) ★★☆☆☆
おじいちゃんがお店の屋号を『峠うどん』に変えたのは、十四年前――わたしが生まれた年のことだった。
・タイトルの提示、地(舞台)、人(主人公の年齢と性別、祖父=祖母の連想)
インパクトこそないが、この文のあとにつづく序章によって、斎場の前にあるうどん屋。つまり「またお越しください」が言えない店。というおもしろい設定が説明口調にならず、わかりやすく伝えられている。
しかしこの序章は書き下ろしのようなので、本来は第一章を評価すべきか。
■書き出し(第一章) ★★★★☆
おばあちゃんは挨拶もそこそこに本題を切り出した。よけいな前置きの嫌いな、せっかちなひとだ。
・人(おばあちゃん=主人公・孫の連想、祖母の性格)
お通夜があるから手伝ってほしい、「けっこう来るかも」、中学に入学してすぐにお店の手伝いを……。インパクトは大きいし、斎場などという言葉が出てきていても、主人公の年が近いので私などの若い人にも読みやすいと思う。
■登場人物 ★★★★★
一話一話で、故人および故人にまつわる人(峠うどんに来るお客さんがメインなので、故人と遠い人が多い)が出てくるので人物は多い。
しかしさすが重松といおうか、一人ひとりの気持ちをきちんと描写している。でも一話につき取りあげるゲストは少なく、全話を通して主人公(淑子/よっちゃん)およびおじいちゃん、おばあちゃんはいつも登場。このおじいちゃん、おばあちゃんがまたいいキャラ。
- 感想投稿日 : 2012年11月8日
- 読了日 : 2012年11月8日
- 本棚登録日 : 2012年11月8日
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