ツーリストとは、CIAのもっともダーティーな私設極秘機関「ツーリズム」のエージェントのこと。ツーリストであるが故の苦悩がこってり描かれる。上司と部下だったり、同僚だったり、あるいは偽名キャラの自分自身だったり。それと並行して展開していくのが、国家間を行き来する大掛かりな策略。この策略がなかなか凝った入れ子プランになっており、上巻はひたすら風呂敷を拡げるに終始するが、下巻に入ってからの怒涛の展開は一読の価値あり。
前作ではミロの物語という印象だったが、本作品ではどちらかというと巻き込まれ型。脇役キャラも魅力的。敵味方のボーダーラインが曖昧なのがスパイ小説の面白い部分よね。一対一のシーンでは常にピリピリ緊迫感。この独特の雰囲気がたまりません。
シビアなオチもいい。何のためにここまで徹底的にやるのか、っていう動機付けがシンプルなので、一周回って共感できる部分に落ち着いたように思う。フィニッシング・ストレートも気に入った。三部作で終了するのが勿体ないなあ。でもこの作者のスパイ小説が読めればそれでいいか。間違いなく今の世界のトップクラスでしょう。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
海外ミステリ
- 感想投稿日 : 2013年12月30日
- 読了日 : 2013年12月30日
- 本棚登録日 : 2013年12月30日
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