本当はひどかった昔の日本: 古典文学で知るしたたかな日本人 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2016年8月27日発売)
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貧しければそれこそ耐え難い多くの悲しみがある。しかし豊かさのなかにも、根の深い不幸というものが生まれる。人間は時代も人種も宗教も超えて、総じて同じようなものだし簡単には変わることなどできない。
本書では多くの古典から現代に起きた事件に似た事例現代を挙げ、あえて日本の恥部・暗部をとして紹介している。学校の古典の授業では絶対出てこない記述、解釈なので、古典や昔の風習に関しての知識が学生時代に仕入れたきりの人が読んでみたら結構ショッキングなのかもしれない。
これによると育児放棄、離婚問題、いじめ、自殺、殺人……おおよそ現代人が起こしている事件というものは、すでに昔から起こっている事件に類似していることが多いとわかる。過去の事件の背景と真相を読み解けば、現代特有であるかに見える社会の病理もそうでないと知ることができ、かつ、同じ事件、同じ悲劇を繰り返さないよう対処法を考えることができるのではないだろうか。
簡単に変わることができないと書いたが、それでも社会も、福祉も、道徳も、先人の苦しみから少しずつ学び、向上しているはずだから。

なお、私としては昭和初期の新聞を読んでみることをおすすめする。社会面などに載っている事件をみると、大体今と同じ内容で驚くことと思う。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 作家名:あ行(その他)
感想投稿日 : 2016年12月11日
本棚登録日 : 2016年12月11日

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