新装版 世に棲む日日 (1) (文春文庫) (文春文庫 し 1-105)

著者 :
  • 文藝春秋 (2003年3月10日発売)
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2chで高杉晋作を心酔した破天荒な人物が登場するスレ(http://lolinewvip.blog.fc2.com/blog-entry-2091.html)を読んだことから,高杉晋作に興味を抱き,手に取ったのがこの本です.
つまり,動機は極めて不純でした..
いきなり横道にそれますが,上記2chスレもかなりおもしろいので,お時間のある方は読んでみてください.

今全4巻を一気に読み終わったところなのですが,なんともいえない放心状態に陥っています.なぜなら,吉田松陰,高杉晋作を始めとする幕末の志士達の驚愕するほどのエネルギーの前に圧倒されているからです.
感想を整理できていないのですが,今の日本と同じところと違うところという視点でまとめてみます.

【違うところ】
1.エネルギーに満ち溢れる多くの若者が登場すること.
わずか150年ほどの昔に,日本にこれだけ多くの決断力・行動力にあふれる人たちがいたとは知りませんでした.しかも彼らの多くは20代前半という若さで,日本を文字通りひっくり返すほどの働きをしています.

2.激烈な思想家たちが多く登場すること.
吉田松陰にしろ,高杉晋作にしろ攘夷や開国という思想を強烈に持ち,それを行動原理としています.しかし,強烈な思想家というのは外からみれば,「狂」と映ります.実際,作者もこの二人について「狂」という表現を多用しています.ただ,世の中を動かしたのは,このように狂信的なまでの思想を持った人たちであるのが事実です.
今の日本で,自分の行動原理として,この時代のように強烈な思想を持った人がどれだけいるのでしょうか.私が真っ先に思いついたのは,元大阪府知事の橋本さんです.彼は今,この本の時代に行われた明治維新によって基礎が作られた中央集権体制を壊し,地方分権すべきということを「狂」信的に信じています.私は,橋本さんの思想を評価する知識を備えていないため判断は控えますが,この姿は,260年間続き,当時は常識的な人の間では未来永劫続くと思われたであろう,幕藩体制を崩壊させた高杉晋作にダブります.

【同じところ】
1.多くの人は世論に流されること.
晋作が功山寺で挙兵したとき,賛同した者はわずか80人でした.それがついには,長州藩を転覆させるのですから,晋作の能力は抜きにしても,いかに多くの人が尻馬に乗ってきたかが想像できます.
2.だいたいの男は好色家
松陰は例外ですが,高杉晋作や伊藤博文は札付きの女好きだったようです.今の日本の性産業が世界トップレベルにあるのも,昔からの遺伝子を受け継いでいるからかもしれませんね.ただ,この時代の遊郭は密談にも多用されているようなので,今のピンサロとかキャバクラより役割が多かったようです.

私自身,まだ学生の身ですが,小さくまとまろうと保守的になっている自分がいます.この本を手に取って,もっとエネルギーにあふれた生き方をしようと思わされました.また,エネルギーが出なくなったときに,この本を開き,着火剤にしたいと思います.

最後に,あまりに有名ですが,高杉晋作の辞世の句を紹介します.
おもしろき こともなき世を おもしろく

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2011年11月17日
読了日 : 2011年11月17日
本棚登録日 : 2011年11月17日

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