みかづき

著者 :
  • 集英社 (2016年9月5日発売)
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感想 : 601
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学校教育が太陽なら、塾は月。
子どもたちを優しく照らす‥
塾の始まりから親子三代にわたる物語。力作です。

昭和36年、小学校の用務員をしていた大島吾郎。
勉強がわからない子に教えてあげていて、教員免許を持っていない吾郎の教え方がわかりやすいと評判になっていました。
通ってくる生徒の一人の蕗子は、教える必要もなさそうな成績の良い女の子。
蕗子の母親の千明が吾郎のもとを訪れ、教える才能を見込んで、塾を立ち上げようと誘います。
千明は、半ば強引に、結婚まで持ち込み(笑)

教育の話、塾の話というと、真面目で説教臭いかもしれない気がしますが。
気が強く個性的な千明と、大らかで人望があるがいささか女にだらしがない吾郎というコンビで、いたって人間的に、躍動するように話は進みます。

当初は勉強についていけない子どもたちに補習していたのが、しだいに進学指導がメインに。
方針を巡っての対立から、夫婦仲にも影響が出ます。
二人の子どもたちの性格の違い、それぞれの進路も時代を映して。

文部省は、長らく塾を白眼視していたのが、年月を経て学校を補完するものとして認めるようになります。
しかし、「ゆとり教育」の真相というのは、ちょっと衝撃的でした。
優秀な子がもっと上へ行けるよう、そうでない子は放っておくということだったとは‥?
そればかりではないような気もしますが、時代の風潮として一面の真実かと。

孫の世代の一郎がフリーターだったり、そんな子がまた教育の場を設けるようになったり。
戦後の激動期を経て数十年、こんな時代が来たと。
ある意味、教育には終わりがない‥
いい締めくくりでした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 国内小説
感想投稿日 : 2018年2月26日
読了日 : 2017年4月23日
本棚登録日 : 2018年2月26日

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