劇場

著者 :
  • 新潮社 (2017年5月11日発売)
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感想 : 429
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又吉の小説2作目。
今度はお笑いではなく、演劇の世界で芽を出そうともがく若者の恋と葛藤を描いてあります。
お笑いのほうが、体験も滲んでいて、ユニークと言えばユニーク。
個性的な表現を追求する気持ちには、演劇のほうが感情移入しやすかったです。

永田は、友達と上京、小劇場で活動していました。
たまたま画廊で一緒になった感じのいい女性・沙希に声をかけます。この人ならわかってくれるだろうと。
永田の方はともかく、紗希がよく付き合う気になったな~という出会いですが。
沙希もじつは演劇が好きで上京したので、何かを感じ取ったのでしょう。

暗くて不器用な、演劇に取り憑かれている永田。
それでも二人は暮らし始め、楽しいひとときを経験し、微笑ましくいたわりあいます。
芝居はうまくいかないほうが多く、永田は沙希が関わる他の人達に嫉妬するようにも。
後半は、好きな女性にしてはいけないことのオンパレード。
何度かやり直そうとするのですが‥
真剣に仕事に集中して、やっと少し成功し始めても、取り返しがつかない。

最後に懸命に愛を伝えようとするのが切ない。
そんなに好きなら、互いに気持ちが残っているのなら。
とも思うけど‥
紗希はぼろぼろですよね。この後も苦労をかけられそうだということを考えると、こんないい子はもっと平和な環境で暮らしたほうがいいのかもしれない。
そんなことを思いながら読了。
「出会わなければもっと早く東京に負けていた」という沙希の言葉に説得力がありました。
ただ苦しんだだけではない、必然的な出会いだったのでしょう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 国内小説
感想投稿日 : 2018年11月8日
読了日 : 2017年7月24日
本棚登録日 : 2018年11月8日

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