たゆたえども沈まず

著者 :
  • 幻冬舎 (2017年10月25日発売)
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19世紀末、パリ。
ジャポニスムの波に乗って、世界に挑んだ日本人の画商と、画家のゴッホ、その弟テオとの出会い。

1886年、画商の林忠正のところへ、助手の加納重吉が到着します。
良質の浮世絵を日本人の手で届けたいと考え、画廊の仕事を進めていく。
そして、ゴッホ兄弟に出会うのだった…

才能に溢れるゴッホは、それを世間に認めてはもらえない。日本に強く憧れ、理想の国である日本へ渡りたいという夢も抱いていた。その時点では日本までは行けないため、フランスでの理想郷を求める。
弟のテオは兄の理解者で、献身的に支えるのだったが。
テオ自身の仕事が上手くいかなくなっていった時、思わぬ亀裂が‥

印象派の勃興する時代。
そこでの日本の存在感、その意外なまでの大きさ。
日本人の画商がここまで関わっていたなんて!と目を見張るのだが、それは事実そのままというわけではなくて、加納重吉は架空の人物なのです。
引き込まれる臨場感と、もしかしたらあり得たかもしれない、と思わせる心の交流。
ああゴッホがもし日本に来ていたら、素敵な思い出が出来ただろうか。素晴らしい作品が出来ただろうか。でも嫌な思いもしたのではないだろうか。これはあくまでも仮定の話。

ゴッホの作品の有無を言わせない素晴らしさは、こちらも知るところ。
型にはまらない才能ゆえの大きさと苦悩が、いかばかりか。
悲しいところもありますが、救いとなるところも。
そして、運命を生きた兄と弟だったのだなと、これは史実としても疑いようがなく、しみじみと胸をうたれます。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 国内小説
感想投稿日 : 2023年8月11日
読了日 : 2018年3月28日
本棚登録日 : 2023年8月11日

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