新選組血風録 新装版 (角川文庫 し 3-1)

著者 :
  • KADOKAWA (2003年11月22日発売)
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感想 : 511
5

【あらすじ】
『竜馬がゆく』『燃えよ剣』の2作の長編小説が立て続けに発表された1962年(昭和37年)は、司馬遼太郎の目が「幕末」という動乱に向いていた年である。
同年5月に連載が始まった本書は、その先駆けとなった作品だ。
斎藤一、加納惣三郎、井上源三郎、沖田総司などの新選組隊士たちの生き様15編を、抑制の効いた筆致で描ききった連作短編集である。
そこには、司馬が追い求めた「漢(おとこ)」の姿が息づいている。
生きては戻れぬ死闘を前にしながら、ひょうひょうと振舞う篠原泰之進。
好きな女のために新選組にもぐりこみ、惨殺される深町新作。
池田屋事変で一番の活躍をしながらも、その運命にもてあそばれているような寂しさを漂わせる山崎蒸。
武芸で身を立てることに戸惑いながらも、敵方にひとりで切り込んでいく長坂小十郎。
時代に逆らって生きる個性豊かな隊士たちは、いずれも無骨で、真っ直ぐで、さわやかだ。
なかでも、「沖田総司の恋」「菊一文字」で、沖田への不器用な心配りを見せる近藤勇と土方歳三の姿が印象深い。
「総司のことになると目が曇る」近藤と土方の姿を、おかしみさえ滲ませながら人間臭く描くことで、司馬は、激しい風雲に飲み込まれざるをえなかった者たちの悲劇をいっそう際立たせている。
新選組という「類のない異様な」集団を多角的な視座を用いてとらえた本書は、1個人の人生から、歴史の壮大なうねりを照らす司馬の持ち味が、いかんなく発揮された傑作である。


【内容まとめ】
1.やはり新撰組は超絶ブラック企業(但し、奥多摩からの仲間は除く)
2.この時代最強なのは「新撰組」ではなく薩摩藩


【感想】
「燃えよ剣」を読んだ後は、やはりこの本を読まないといけないでしょう!!
過去に一度読んだ時は断片的でしかなかったこの本だけど、「燃えよ剣」読了後は補足に最も適した1冊でした。
読む順番を間違えなければ最高の別冊小説ですね。
(昔はこの本が司馬遼太郎の「新撰組バイブル」と勘違いして先に読んだ為、何が何か分からなかった。)

「解説」にこの本の全章の簡略があった為、読み返すのに非常に楽だった。
普段よく読書メモを取るが、この2作品はあまりにもスラスラ読めすぎて読書メモが全く取れないからね・・・

ただ、これほど京で猛威を奮った新撰組ですら、薩摩藩から見ればただの浪人集団だったというのが驚き。
幕末の物語や力関係は、やっぱり面白いなぁ。

今度は長州藩を描いた「世に棲む日日」を読もう。

【引用】
p428
「友情」というのは当時そういう言葉もない。
明治以後に輸入した道徳だし、概念であった。
当時は「忠孝」というタテの関係のモラルが男子の絶対の道徳である。


p519
新撰組に、と大久保は言ったが、実のところ薩摩藩としては新撰組などを歯牙にもかけていない。
が、いずれは敵対せねばならぬ会津藩の内情や、京都守護職の動向を知る上では、新撰組という出先機関で探るのが最も容易であるように思われた。


p532
薩摩人の特質は、その現実主義にある。
その点、英国の外交感覚に似ている。
水戸人のように理想にこだわらず、長州人のように理屈好きでもない。
情勢が変わって必要とあれば、どういう相手とでも手を握るところがある。

その変幻さ、薩摩人というのは、あるいは日本人の中で最も政治能力のある種族であろう。


p633
「油小路の決闘」
新撰組の批判派である伊藤甲子太郎らの、悲劇的な結末に至るまでを「耳を洗う癖のある」新撰組取締役 篠原泰之進を主役に描いている。

「芹沢鴨の暗殺」
水戸天狗党の生き残りで、狂人的天才剣士 芹沢鴨が、近藤・土方らの黙契によって暗殺される有名な話だが、それに菱屋太兵衛なる大阪商人を絡ませて味わい深くしている。

「長州の間者」
京都浪人 深町新作が、その腕を買われて新撰組に入るが、深町は女との腐れ縁から長州の間者となり、沖田総司に見破られ、「人斬り主膳」こと松永主膳に斬殺される話。

「池田屋異聞」
有名な池田屋騒動を、「いざ勝負となると、相手を食い殺したいほどの異常な闘争心を沸かせる」山崎烝(すすむ)を主役に描いたもの。

「鴨川銭取橋」
隊の兵学師範であった武田観柳斎が、薩摩屋敷に出入りするようになったことから、銭取橋で、剣術指南役 斎藤一に斬殺されるまでの話。

「虎徹」
近藤勇の愛刀・虎徹にまつわる由来話を、やや皮肉をまじえて描いた「日蔭町虎徹」物語。

「前髪の惣三郎」
加納惣三郎という女と見間違えるような美貌の剣士が、「おかま」騒動を起こし、土方歳三に斬られるまでの話

「胡沙笛を吹く武士」
胡沙笛という尺八に似た音色の笛を吹く隊士・鹿内薫の悲劇を描いたもの

「三条磧乱刃」
新撰組で最長老の井上源三郎と、芸州浪人 国枝大二郎の奇妙な絡み合いを綴ったもの

「沖田総司の恋」「菊一文字」
若き天才剣士、沖田総司を主役にした異色の物語

「槍は宝蔵院流」
宝蔵院流の槍の使い手 谷三十郎の話

「弥兵衛奮迅」
薩摩藩脱藩浪士 富山弥兵衛の物語

「四斤山砲」
出羽浪人 大林兵庫という不可解な人物の新撰組撹乱物語

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2017年12月24日
読了日 : 2017年12月24日
本棚登録日 : 2017年12月24日

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