私が彼を殺した (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2002年3月15日発売)
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【感想】
加賀恭一郎シリーズの、「読者マターの謎解き小説」第2弾!
前作の「どちらかが彼女を殺した」では辛うじて犯人がどちらなのか辿り着きましたが、本作は読んだだけでは全く分かりませんでした。。。
前作ほどややこしくて難しいトリックじゃなかったにも関わらず。
加賀刑事が探りあてた真相に、読者の私は到底迫ることができませんでした。。。

読み終わって感じた事として、被害者の穂高誠は、兎にも角にもクズ野郎だったの一点ですね。
そんな男が殺された事に対して、またその謎の究明に対して、なぜ神林美和子はあそこまでムキになったのか?
誠の新妻という立場上、気持ちが分からないでもありませんが、そのあたりが一番の謎でしたね。
美和子目線での描写がなかった為かもしれませんが、読んでいて正直なところ、誠と美和子の2人のどこにも「愛」があったとは到底思えなかったので・・・

本作の謎解きが出来なかったという敗北感に対し、腹いせ・妬みも少々ありますが(笑)、この作品はちょっとばかし欠落した要素が多かったんじゃないかな?
神林美和子と高明の関係性から考慮して、最後でもう少しドンデン返しがあるのでは?と期待していたのですが・・・・

また、加賀恭一郎の痺れるようなキザな台詞も少なくて、読んでいて物足りなさに拍車がかかりました。
辛口が続きますが、期待していただけに、加賀恭一郎シリーズでは一番肩すかしの作品だと個人的には思いました。


【あらすじ】
婚約中の男性の自宅に突然現れた一人の女性。
男に裏切られたことを知った彼女は服毒自殺をはかった。
男は自分との関わりを隠そうとする。
醜い愛憎の果て、殺人は起こった。容疑者は3人。
事件の鍵は女が残した毒入りカプセルの数とその行方。
加賀刑事が探りあてた真相に、読者のあなたはどこまで迫れるか。



【メモ】
p174
身体の中から湧き上がってくるものがある。それをどう発散していいかわからず、あたしはただ拳を握りしめた。
あたしは蘇った。穂高誠によって、心を殺された雪笹香織が、今日生き返ったのだ。
あたしはやったのだ。あたしが彼を殺したのだ。


p197
長い1日が、ようやく幕を閉じようとしていた。
俺の中に罪悪感はなかった。俺は、しなければならないことをしただけなのだ。
ガラスに映った猫の顔に浪岡準子の顔を重ね合わせ、こころのなかで呟いた。
準子、仇をとってやったぞ。
俺が穂高誠を殺してやったぞ。


p385
「封筒には」神林は答えた。
「ビニール袋が同封されていました。そこにはカプセルが一つ入っていました。白いカプセルです。それを穂高誠が常用している鼻炎薬に混入させろ。指示はそういうものでした」
がたん、と後ろで音がした。見ると美和子が床に膝をついていた。顔を両手で覆っている。

無理もなかった。あたしも心底驚いていた。そういうからくりが潜んでいたとは夢にも思わなかった。あたしは駿河に殺させようとした。そのチャンスを与えた。だが駿河は違った方法で、別の人間を操ろうとしていたのだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2019年9月25日
読了日 : 2019年9月25日
本棚登録日 : 2019年9月25日

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