新装版 坂の上の雲 (8) (文春文庫) (文春文庫 し 1-83)

著者 :
  • 文藝春秋 (1999年2月10日発売)
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感想 : 347
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▼エンタメと考えれば、この小説は(日露戦争は)いろいろあっても最後が日本海海戦で圧勝して終わるので、溜飲が下げられて素晴らしい。その、苦しい辛い中で最後スッキリというヤクザ映画的な語り口がこれまた上手い。海戦でも、まずは三笠が被弾しまくる描写も延々とやる。その次にロシア側の(日本軍と比べ物にならない)被弾を描く。そういう順番構成とか。上手い。

▼一つ勘違いしていたことがあって。ポーツマスの和平のあとで、日比谷焼き討ち事件がある。つまり民衆が「より戦争を、戦果を」と暴動を起こした。その戦慄の描写があって。そして、日本海海戦の完勝、その成果であるポーツマス条約。だがその中から昭和の戦争と完敗に向けた胎動が始まっている…というドロドロした思いが湧き上がって終わる。・・・と思っていたら、間違っていて、全然その描写は無かった。恐らく、同じ司馬遼太郎さんの「明治という国家」か、「昭和という国家」か、あるいは吉村昭さんの「ポーツマスの旗」か、どれかと記憶が混同していました。

▼今、個人的な興味関心で、「第一次世界大戦とは」というテーマに向けた読書の旅を続けていて、実は「明治日本と帝国主義先行国家とのせめぎあい」を畫いた坂の上の雲は、このテーマの流れとしてもとても良かった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年12月1日
読了日 : 2023年11月27日
本棚登録日 : 2023年11月27日

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