あったかい。
終盤わけもなく涙がでる感じ。
おかあさーん!って気持ちになる笑
自分が母になって、また読んでみたくもある。
私はつくづく、「暗い、辛い、でも空は青く、緑はきれいだ」的な話が好きだなあと改めて。
読了するまでインターバルとっちゃったけど、
いつ、どのページを開いても、
ああ、私ばななさんの小説読んでるなあ!って思えるところが好き。
スピルチュアルがいきすぎてないというか、
そういうものに疎い私にもわかるくらい、
他の作品と比べてリアルな世界の話だったなあという印象。
以下引用
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自分の中での小さなつまずきをそのままにしておくと、それがかなり早い時期に自分にはっきりと返ってくることを、私は学び始めていた。食は人間の本能に関係がああるから、いっそう露骨にいろんなことが出てしまうのだ。はじめは自分の胸だけにしまっておいても、なにか別の形で必ず表に出てしまう。まじめに、地味に、個性や思い入れをなくして、ていねいにやること以外にはなにもできることはないのだ。
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みじめだ、そう思った。少しも立ち直れず、ずるずると生きている。夜は明けないし、後悔は取り戻せず、言いたかった言葉は言えない。もう二年ちかくたっているのに、一歩も進んでいない、もしかして一生進まないのかもしれない。
それでも私は明日の朝になれば、パンをこね、お湯をわかし、サラダの野菜をちぎり、掃除をしているだろう。体が自動的に動いてくれるし、いらっしゃいませと笑顔になるだろう。それだけができることなのだ。
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「あんたが口に出してそう言うってことは、本気だっていうことよね。たしかに、あのサラダは命のサラダだったな。死んでくらいたいくらいみじめで行き場がなくて胸がどろどろもやもやしていた私だったけど、あのサラダは私を否定しなかったんだ。あの中にまだ自分のかわいい、小さな命があるのを見つけたの。」
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「僕はなにもできない。平凡な人間だ。でも僕の目が見てきたものは、語り尽くせないくらいたくさんなんだ。」
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なんで生きていると、体だけは勝手に立ち直っていくのだろう。
いや、だからこそすばらしいのだ。体が助けてくれるから。
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都会にいるとわからなくなることのひとつに、個人の力の大きさというものがある。
たとえば、大きなビルの中の大きな書店だって、名物店員はいるだろうし、その人が別の支店に異動したら、やはりみんな淋しいだろう。でもお母さんがいつか言っていたように、テンポよくすぐに新しい人がやってきて、書店は変わらずに営まれていくだろう。都会の人はそういうことにこそ安心するのだと思う。自分がいなくなっても世界は変わらないし、会社はつぶれないし、街は動いているって。
でも、それではどこか満足できないのも、人間というものだ。
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夜の道が涙でにじんでいた。もう失うのがこわいから、なにもかもそのままにしていたかったから、続けていた恋だったんだ、そう思った。淋しい、新谷くんがいないと淋しい、だから好きになったんだ。でも愛してない、そこそこしか好きになれない。ずっと知っていたけど、ごまかしていたんだ、そう思った。
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話してみるとなんていうことのない話なので、重くとらえていた自分自身の問題なのだということがよくわかった。お母さんもわりとあっさりした顔で聞いていた。少しだけ眉をひそめながら。
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「よっちゃんはなんでも言葉で考えるからだよ。ぐるぐるぐるぐる回っても、答えが出ないことがいっぱいあるでしょう。でもよっちゃんにとって、それこそが時間をやり過ごすやり方なんだと思うから、幼いとかよくないとか思ったことはない。でも、なんでのない空間をただじーっと、なにも考えないで見てるような、ぐっとこらえ抜くようなやり方もある。おふくろさんは、そっちのタイプの人なんじゃないかなあ。」
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お父さんの死んだ場所は何回見ても変わらず殺伐とした気持ちになる人気のない淋しい場所だったし、お父さんと死んだ女性のこともすべて謎のままだし、お父さんの気持ちだってほんとうのところはわからないままだ。でも、そんなものではないだろうか。それなのに空はきれいで空気は澄んでいて、私の毎日は続いていき、お母さんは生きている。だれのほんとうの気持ちもはっきりすることなんかない。答えは別に必要ない。もうあの日と同じものはなんにも残っていない。
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楽しかった、新谷くんといるのは楽しかったなあ、いつまでも錯覚していたかったなあ、そう思ったのだ。
(中略)もう、仕事の帰りにふたりで飲みにいくことはないのだ、そう思うとほんとうに悲しかった。実らないものには実らないものだけが持つ良さがあった。
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「(略)僕たちは、イモの不可解な死を通して、なにか大きくて暗くて正体のわからないものを見ているだけなんだ。でも人生なんてほんとうはほとんどそういうものでできてるだろ。それがこわいから、みんなわかりやすいことを必要としているんだろう。」
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引用おわり。
また長くなった。
- 感想投稿日 : 2013年8月6日
- 読了日 : 2013年8月5日
- 本棚登録日 : 2013年8月5日
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