理性の限界――不可能性・不確定性・不完全性 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社 (2008年6月19日発売)
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感想 : 319
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社会科学における理性の限界をアローの不可能性定理を中心にゲーム理論などもからながら論じる。

自然科学における理性の限界をハイゼンベルグの不確定性原理を中心に論じる。

そして、論理学や数学における理性の限界をゲーデルの不完全性定理を中心に論じる。

という流れで、人間の理性の限界を論じた本。

というと難しそうだけど、これが、さまざまな仮想の参加者によるディベート形式による説明で、すごく取っ付きやすいし、かなり分かりやすく書かれていると思う。

実は、この手の話しは、個人的な知的興味のかなり中心部分で、関連するような本はいろいろ読んできたわけなのだが、この3つの限界を関連づけて示す本はあまりなかったわけで、そういう意味では待望の本ともいえる。

一方、一般にも分かりやすく書いてある分、自分にとって全く知らないことが書いてあるわけでもない。このため、知的スリルがあるというよりも、一度読んだ事があるようなことを、違う角度から確認する、という感じに近いかな?

どちらかというと文系(?)の著者が書いたためか、とくに不確定性原理に関する部分は、新たに知るような中身は少なかった。

一方、アローの不可能性定理などの投票のパラドックスの説明は、これまで読んだ中で一番分かりやすかったと思う。

アローの定理は、他の2つの定理に比べ知名度が低いが、この社会的な意思決定に関するディレンマについては、もっと注目されても良いと思うな。

と、やや熱意の足りないレビューになってしまったが、こうした領域についてあまり読んだことがない人に対しては、ぜひ読んで欲しいと思う。

私たちの理性には限界がある。
ということは、理性の最先端によって、すでに証明済みなのである。
ということまで理解した人間は、ある意味、理性を超えてた存在なのであろうか?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年5月2日
読了日 : 2010年5月16日
本棚登録日 : 2017年5月2日

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