新潮社ホームページより引用。
「六十歳を前に、離婚して静かに人生の結末を迎えようとブルックリンに帰ってきた主人公ネイサン。わが身を振り返り『人間愚行の書』を書く事を思いついたが、街の古本屋で甥のトムと再会してから思いもかけない冒険と幸福な出来事が起こり始める。そして一人の女性と出会って……物語の名手がニューヨークに生きる人間の悲喜劇を温かくウィットに富んだ文章で描いた家族再生の物語。」
「folly」とは「愚かさ」「愚考」というような意味合いの言葉だそうで、その名のとおり、読み始めて物語が始まってかなり長い時間、なんか冴えない話だし読むのやめようかな・・・と思っていた。
しかしある人物の登場から突然潮目が変わり、ドライブ感が出てきて、冴えなかった主人公ネイサンも鈍く光ってくる。
「2、3分のあいだ、私はルーシーが芝の上を駆けめぐり犬に棒を投げるのを見ている。トムは私の左でドン・デリーロの戯曲を読んでいる。私は空を見上げ、過ぎていく雲を眺める。タカが1羽、旋回して視界に入ってきて、また消えていく。タカが戻ってくると、私は目を閉じる。何秒も経たないうちに、私はぐっすり眠っている。」
小説が始まった時はこのような幸せな描写がなされるとは想像できなかった。
解説にもあるが、オースターは2000年代に入ってから「自分の人生が何らかの意味で終わってしまったと感じている男の物語」を発表し続けているそうだ。
僕が読んだのは確か自叙伝『冬の日誌』だった。読むのがなかなか辛かったが心に残った場面がいくつかある。5年ほど前に読んだと思うが、自分も当時の著者の年齢に近づいてきた。
- 感想投稿日 : 2023年1月14日
- 読了日 : 2023年1月9日
- 本棚登録日 : 2023年1月9日
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