彼女がエスパーだったころ

著者 :
  • 講談社 (2016年4月20日発売)
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本棚登録 : 342
感想 : 61
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火を操ることを覚えた猿の群れ、スプーン曲げを繰り返して有名になった女性、脳の一部を破壊することにより暴力衝動を消してしまう手術、「ありがとう」と言うだけで浄化される水、記録しないことで精神を救うホスピス・・・さまざまな対象を取材するライターの視点で描かれる連作短編集だ。

途中まで、同じ人物が語り手だと気づかず、独立した短編なのかと思っていた。それくらい、主人公の影は薄く、読んでいる当初は男性なのか女性なのかもわからない。
対照的に語られる「取材対象」は奇想に満ちていて、強く引き込まれる。

宮内氏の頭の中っていったいどうなっているんだろう。巻末の参考文献等を見ると、各短編の核になる部分には、実際にどこかの学者が提唱している何がしかの「根拠」があることがわかるのだけれど、その根拠を胚にして野放図にどこまでも拡がっていく世界の危うさに翻弄される。

各短編の冒頭に、オマージュされた文章が引用されているのだけれど、それがまた気が利いていて、いい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 不思議なきもちになる
感想投稿日 : 2019年5月25日
読了日 : 2019年5月23日
本棚登録日 : 2019年5月23日

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