なんで、この本を読もうと思ったのかを、もはや忘れてしまった。
前半と後半で、テイストがやや違う。
前半では、小川洋子が観察する人の話が中心。
その人を観ている自分の話というより、その人をいかに浮かび上がらせるかという、なんだか黒子のような透明感があった。
ああ、この方は、こんな風に人を見つめているんだな、そして自分は無色透明の語り手なんだな、という感じが小説に繋がる気がして、腑に落ちた。
『博士を愛した数式』を読んでいる女性をクローズアップしたエピソードが、なんか好き。
後半は、本の紹介が多くなる。
ラジオのアナウンサー藤丸さんとの話が良かった。
本を介した話のなかで、相手を知ってゆくこと。
そういう会話が成り立つことは素敵だと思う。
『こころ』『錦繍』『枕草子』『夜と霧』。
自分も触れてきた作品を、こんなに愛おしく語る人に出会えるとは。
感銘を受けた映画の感想を「かなしかったね」で終わらせた相手に、幻滅するエピソードもあった。
自分は自分の感じ方を豊かに出来ているだろうか、急に恐ろしくもなった。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
2019年
- 感想投稿日 : 2019年11月17日
- 読了日 : 2019年11月17日
- 本棚登録日 : 2019年11月17日
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