ブラフマンの埋葬 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2007年4月13日発売)
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感想 : 434
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最近のエッセイ集「遠慮深いうたた寝」の中で、
「ブラフマンの埋葬」ほど、のびのびと書けた小説はない。
と振り返られていた作品。

南仏の小さな町が舞台のようだ。
登場人物は、僕、碑文彫刻師、雑貨屋の娘、レース編み作家、ホルン奏者その他数名。
名前が出てこないだけでなく、人物像もほとんど説明されない。
名前があり詳しく描写されるのは『謎』の生物「ブラフマン」だけ。
だが「ブラフマン」の正体は最後までわからない。

ストーリーも無いに等しい。
夏の初めに「ブラフマン」に出会い、ひと夏を一緒に過ごし、秋の初めに亡くなった「ブラフマン」を埋葬する。
簡単に言えばこれだけの話。

ブラフマンとは何かを調べてみると、
個の根源であるアートマンに対して、宇宙全体の根源をブラフマンというらしい。
主人公の僕は芸術家たちの創作の場である<創作者の家>の管理人だ。
小川洋子さんは、芸術家たちを「アートマン」としてみたときに「ブラフマン」の存在を感じたのだろうか。

でも「ブラフマン」が死んでしまって「アートマン」たちが埋葬するって逆じゃないの?
この物語の意味を考えすぎると宗教的になってしまう。

ずっと「ブラフマン」て何だろうと思いながら読んでいた。
そして何だか分からないまま突然死んでしまった。
「ブラフマン」は『謎』の生物だ。
世の中いろんな謎が現れたり消えたりしているということなのだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: *小川洋子
感想投稿日 : 2024年3月3日
読了日 : 2024年3月3日
本棚登録日 : 2023年11月4日

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