新装版 坂の上の雲 (6) (文春文庫) (文春文庫 し 1-81)

著者 :
  • 文藝春秋 (1999年2月10日発売)
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感想 : 230
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 なんだか戦況がだんだんよく分からなくなってきました(苦笑)。戦況の話はなぜか頭にはいらないのに日・ロの政治体制とかの話や、ロシアの艦隊のグズグズっぷりの方がスッと頭に入るのは、
権力者のそうしたグズグズさの方が面白く感じる自分の性格の悪さのせいでしょうか。

 この巻で面白かったのは諜報員の明石源次郎。
 諜報員なのに偽名を使わず時に体当たりでスパイ活動をする何とも型破りな人物。その活動の根底にあったのが作者の語るように、国のために死んだとしてもスパイだと名前が残らないことに対する抵抗だったのかは分かりませんが、もしそうならなんだかとても人間臭い人物だな、と思いました。

 ロシアの革命の機運や欧米の動きも書かれていて、それもまた興味深く面白かったです。読めば読むほど日本が日露戦争で負けなかったのは、当時のロシアの国内混乱や革命気運のおかげだったのだな、としみじみと感じます。

 司馬遼太郎が作中で日露戦争後、日本がロシアの敗因を分析していれば、神風の信仰もなくその後の無理な太平洋戦争に突き進むこともなかっただろう、と書いているのですが、
それが非常に的を得ているな、と感じました。大国ロシアに対して奇跡的に負けなかったのもきっと、奇跡なんかではなく様々な要因が積み重なった必然で、それを見誤ると大変なことになるのは、国家でも個人でもきっとあまり変わりはないのでしょうね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 時代小説・歴史小説
感想投稿日 : 2015年3月11日
読了日 : 2015年3月8日
本棚登録日 : 2015年2月25日

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