これも暇つぶし用の一冊。
同じようにヒーローの牧場に働きにきて最初はすげなく追い返されるヒロインものは、 にもあるけれど、断然、あっちのほうがいい。
このヒーローは取り柄が無さ過ぎる。
まず働きにきたヒロインの紹介状を読まずに破るところが、訳わからない。それで本当に経営者か?相手がヒロインだろうとそうじゃなかろうと、基本的な礼儀というものがあるだろう。
ロマンスに関しては、うーん。ヒロインがヒーローに惹かれてしまったのは、わからなくもない。いままでヒロインのまわりにはいなかったタイプだろうし。人の話を聞かず、傲慢で、人でなし、な人物はそうはいない。そういうところに魅力を感じてしまうのは、仕方ないのかも。
ヒーローはただの人でなし。
これほどいいところのないヒーローもいないだろう。
ヒロインに惹かれているのに、素直に認められず、挙げ句、自分の気持ちの捌け口にヒロインを詰り、さらに誘惑する。
ここまで最低なのに、どうしてヒロインはヒーローがいいのか疑問しか感じない。

ヒロインはオリンピックを目指す飛び込み選手で仕事を求めてヒーローの牧場を訪れたわけだけど、ヒロインが強く牧場や自然に魅入られた理由づけも弱く唐突感が否めなかった。

2012年4月11日

読書状況 読み終わった [2012年4月11日]
カテゴリ 上司と部下

オリンピックを間近に控えた馬術選手のレインは、会場となるカリフォルニアの峡谷でコースを下見していた。留守がちな政府高官の父、父の影に徹する母の背中を見て育った彼女は、決して母のような生き方はしないという思いを胸に、馬術にうちこんできたのだ。メモをとっていたその時、背後から何者かに襲われた。一瞬、男の姿が目に入り、地面に組み伏せられる。「ここで何をしている?」俊敏な動きに冷静な口調。そう、父の周りを囲むこの種の人々のことはよく知っている。訓練を受けた、特殊任務に就く男。どうして私を…。

移動中の暇つぶし用に購入したので、特に期待はしてなかったけれど……あまりに安直なおはなしだった。
ロサンゼルスオリンピックをベースにしてあるだろうとは思うけど、見事にオリンピック臭がしない。確かに馬術は花形スポーツとはいえないかも知れないが、あまりにも描かれているものが地味。と言うか、有り得ないだろうよ。馬だけでなく選手だってそうそう自由にならないだろうに、宿泊は女子だからモーテルとか、勝手に下見に行けるとか。挙げ句に誘拐を警戒するからってトレーラーハウスに宿泊とかね。
普通は選手村にいなければならないんじゃないのか。
なんかそのあたりだけで、ぐったりで、政府要人の娘なのに危機意識をまったく持たずに育ったとか、そういうところまで突っ込む気力は萎えた。

うーん、なによりもヒーローもヒロインも魅力がなかったのが痛い。ヒーローなんかテンプレなテロ対策特殊部隊職員なだけで、彼自身の良さが伝わらない。確かに馬の扱いには長けているのかも知れないけど、だからといってそれがヒーローをグッと引き立てたかと言えば、そうでもなかったし。
怪しげな仲間とか堅牢なトレーラーハウスとか小道具は目一杯なのに、それが生かし切れてない感じ。ヒーローの悲願の敵の存在もあまりにもテンプレで薄い。
題材的にはもっと面白くなるはずなのに、全体に生かし切れずに消化不良、残念。

2012年4月10日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2012年4月10日]

離婚専門弁護士のハーパーはモンタナ州で行われる妹の結婚式に出席することになったが、気が進まない理由があった。それは妹の結婚相手が“元夫”ニックの義理の弟だということ。行けば当然会うことになるが、すれ違いが続いて離婚した彼と会うのは複雑だ。しかも12年ぶりに再会したニックは昔よりも魅力的になっていた。取り乱すまいと冷ややかな態度を貫くハーパーだったが、国立公園でクマに襲われたところを助けられたうえ、「ずっと愛しつづけていた」と言われてますます気持ちが揺れ動いてしまう。ようやく結婚式も終わり、これで離れられると思った矢先、トラブルで帰りの飛行機が飛ばなくなり、愛犬ココと一緒にニックの車で別の空港まで送ってもらうことに。だが、それは元夫婦と一匹のおかしなおかしな旅の始まりに過ぎなかった―。RITA賞受賞2回の人気作家が描く、傑作ロマンティック・コメディ。

12年たってからの元サヤ話。
結局、お互いがベターハーフだったということだろうけど、どうもしっくりしない。
っていうか、ヒロインの自己批判とか自己の再構築とかは丁寧にかかれていて読み応え充分だったけど、ヒーローはあれでいいのか疑問。

大学卒業したばかりのヒロインと半ば強引に結婚したくせに、知らない土地に彼女を放り出してかえりみなかったヒーローは、12年たっても本質は変わってないように思える。なんだかんだと元サヤ状態に戻っても、彼は当然のようにヒロインがニューヨークに住むと決めつけてるし、仕事のペースも変わらない(ヒロインがランチミーティングに行けと言ったんだけどね)。だいたい再燃して三日、ヒロインにも生活や仕事があるというのに、ニューヨークに留まれと言うのが信じられない。それこそ大人になって分別がついて然るべきだろうに。離れられないというなら、ヒーローがヒロインのもとに行くという選択肢だってあるだろう。そんなわけでヒーローには男のエゴが強く感じられて好感は持てなかった。
また再婚して離婚したことや義理の娘がいることなど、真剣なつきあいを考えているなら話して然るべきだろうに、打ち明ける気配がなかったこともマイナス。

だいたいヒーローがヒロインを最優先に考えてはいないことに、ヒロインも気づいているのに、愛があれば……ともう一度、結婚を決意することにもちょっと納得できなかった。なんだかヒロイン側の譲歩ばかりな気がして。
たしかにヒロインが元彼のプロポーズを受けたのは軽率だったかも知れないけれど、空港の出口で一族郎党を引き連れてのプロポーズを披露されては、なかなか断りづらいことはよくわかる。そのあとの展開がグダグダになってしまったのも、一概にヒロインだけが悪いということはないだろうし。またここでもヒーローが短気を起こしたのもマイナス。ニューヨークからヒロインが去るときに冷たく突き放しておきながら、しれっとあらわれて、ヒロインの説明を聞こうともしない。なんだかヒーローはまったく悪くないかのよう。もう少しヒーロー側の反省を読みたかった。

というわけで、結局は破れ鍋に綴じ蓋ってことになるのか、とは思うけど、どうも納得できないおはなしだった。
もっともヒーローがまったく変わらなかったわけではないらしい、というのは、エピローグにちょこっと書かれてはいる。ただ、こういう夫婦再生ものの場合、やっぱりお互いの変化が等分にあってこそ、なんじゃないかと。

最後に。
なんかこういう関係って聞いたことがあるような……と、つらつら考えてたら、「虹とスニーカーのころ」だと思い出した。文字通り聞いたことがあったというオチ。
「わがままは男の罪、それを許さないのは女の罪」

2012年4月6日

姉の結婚式の翌朝、ベッドで目覚めたアナベルは、自分の隣に幽霊を見た。いや、幽霊ではなく、亡くなった恋人にそっくりな男を。彼は、新郎の親友であるマイクで、酔っぱらっていた彼女は、出会ったばかりの彼をベッドに迎え入れてしまったのだ。アナベルの困惑とは裏腹に、彼女を気に入ったマイクはうかれていた。医者という仕事柄、なかなか素敵な出会いがなかったが、ついに特別な相手に出会えたと気づいたからだ。彼は部屋の掃除やプロ級の腕前のイタリア料理を披露したりと、アナベルにつくしまくるけれども…。

「ドメスティック・ゴッド・シリーズ」の第二弾。
前作の「大富豪と結婚しない理由」は登録してなかったので、読み直して再登録してみたり。
基本的にホット過ぎる作品は好きじゃないのだけれど。このシリーズはホット場面は多いけれど別腹で大好き。
とにかく!ヒーローがマメ男クンでね、大型ワンコのようですよ。

今作のヒーローは、医師で、料理が抜群で、片付け魔だけど笠に着ないで、そして体がイイ!ときたら、百点満点ありがとうございます!!なイイ男じゃないですか。こんな万能なヒーローに対するのが、なんと前作ヒロインの妹。いけ好かない葬儀社の男と婚約してた、なんか自分の美貌を鼻に掛けているよくわかんないけど自己中な女。
……それってどうよ?
世の中は間違ってる!もっと性格のいい女がたくさんいるはず!と普通の女としては思ってしまったのだけど。それはさすがにヒロインともなれば、まあそれなりにヒロインの性格も補正が入るわけで。
っていうか、ヒロインの実家が変なんだよね。もしかしたらイタリア系アメリカ人家庭というのは、そういうものなのかも知れないけれど、娘には結婚至上主義というのは、どうしたもんだろう。それで前作ヒロインもうんざりしていたわけだけど。
あとロマ本を読んでるとたいていでてくる「さあ、みんな話して!悩みは共有すれば軽くなるわ」的な明け透けな関係をヒロインはヒロイン姉と築けてなかった、というのは以外……、イタリア系アメリカ人家庭としては。それこそがヒロインの家庭の問題なのかも知れないけれど。
もっともその部分がオープンになっていたら、このおはなし自体が成り立たなくなってしまうだろうから、作者としてはそういう打ち明け話はしない姉妹設定にするしかなかったとは思うけれど。

なんか前置きばかり長くなってしまったけれど、今作も!体からはじまる関係です。しかも!前作よりもベッドインまでの時間は短く出会ったその晩に、さあ、レッツゴーです。
でもまあそれはね、大人の男女がやることですから、お互いの了承があればいいわけなんですが。
翌日の朝、ヒロインはそのことをまったく覚えてないという。けっこう珍しい展開ktkr!翌日の朝に覚えていないといえばヒーローという基本を覆されました。
さらにヒロインが寝た相手が、死んでしまった以前の恋人に瓜二つときたら、大騒ぎは必定なわけで。もうね、揉めるだろうことがこの時点で丸わかり。まだ1ページ目なんですがね。
というわけで、ロマ本につきものの葛藤は基本的にヒロイン側に。ヒーローはといえば、初対面からヒロインにメロメロ。もうね、甲斐甲斐しいという描写がこれほど似合う男はいないだろうというマメ男ぶり。なにしろ完全なる一目惚れ、マジで『Yes!foreign Love!』な展開。
もちろん、ヒーローも順風満帆な人生を歩んでいるわけではないので、それなりに問題はあるのだけれど、少なくとも翌朝に飛び起きて「幽霊とセックスしちゃった!?」というほどの問題はなく。
そうそうヒーローは前作ヒーロー、ドミニクの親友で、前作ヒロインの肺炎の主治医だったマイク。前作ヒーローと同じようにイタリア料理店で働いた経験があり、ドミニクに呼びだされてコトの最...

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2012年2月11日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2012年2月11日]
カテゴリ 体から

スカーペッタが責任者に就任した法病理学センターがある街で、犬と散歩中だった若者が心臓発作で倒れ、死亡が確認された。だが、外傷のなかった遺体から、翌日、大量に流血していることがわかった。それは彼が生きたままモルグの冷蔵室に入れられたことを意味していた!緊迫の『検屍官』シリーズ第18弾。

なんだかんだとつきあい続けて二十年以上になるシリーズ。最初のころはミステリーでありサスペンスであり、ヒロインであるケイと一緒に事件解決にむけてハラハラドキドキしながら読み進めたものだったけれど。
最近のは事件そのものよりもケイを取り巻く人々のほうに重点が置かれてしまって、初期の検屍官シリーズが好きだった者としてはちょっと不満。

確かに物語の深みは増した、というか、事件そのものというよりも、その背景にあるもの、社会だったり政府だったりへの踏み込みが鋭く、またそれらへの登場人物の関わり方の違いの描写がなんとも秀逸。さすがと唸らされる。
しかしなんかちょっとすっきりしない。
別にケイにはスーパーパーソンになってほしいとは思っていない。だけどやはり主人公として、胸のすくような場面は用意して欲しかったと思ってしまう。
奥歯に物の挟まったようなベントンやルーシーとの会話は、ケイだけでなくこっちにもストレス。たぶん彼女の属している社会はそういうものだとわかってはいても、そこは物語。やはりケイにはスクッと格好良くあって欲しい。
そういうわけで今回の星は三つ。

2012年2月11日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2012年2月11日]
カテゴリ その他

スカーペッタが責任者に就任した法病理学センターがある街で、犬と散歩中だった若者が心臓発作で倒れ、死亡が確認された。だが、外傷のなかった遺体から、翌日、大量に流血していることがわかった。それは彼が生きたままモルグの冷蔵室に入れられたことを意味していた!緊迫の『検屍官』シリーズ第18弾。

レビューは下巻に。

2012年2月11日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2012年2月11日]
カテゴリ その他

麻酔医として勤務するケイトのチームに、新任の心臓外科医アンガスが加わった。アンガスに笑顔を向けられると、ケイトはいつも落ち着かなくなる。しかも会ったばかりの彼に、両親も妹も亡くしているケイトは、早く子供を持ちたいと、幼いころからの夢まで語ってしまった。でも、4歳の息子がいるシングルファーザーのアンガスは、我が子を見るとき、そのまなざしにいつも暗い影がさす。この人はなにか悲しい経験をして、まだ苦しんでいるの? もう子供を持つつもりはないとも言っていたけれど……。ただの職場の同僚に、必要以上に興味を抱くのはよくないのに、ケイトはアンガスのことが気がかりでならなくなっていた。

メレディス・ウェバーの医者ものシリーズ「ドクターたちの真実」のスピンになるのかしら。とりあえずいままでの五冊まではシリーズだったけど、これはシリーズ表記はなし。それが理由じゃないかも知れないけど、内容的にはうーん……。
どうも深みがないというか、これといってどうということもないおはなしだった。
基本的に一目惚れの二人。で、惹かれあう気持ちを持て余して……という王道物語なのに、マジで内容がそれしかなかった。いちおう、ヒーローの前妻の死とか、ヒーローと子供との距離感とか、ヒロインの家族観とか、ヒロインの流産とか、いろいろ要素は散りばめられているというのに、すべてが生かし切れてなかった感じで、とってつけたよう。
前作までを読んでいて病院や医師など背景がわかっているから良かったけど、もしこれだけ読んだら、病院のこと自体も???だったんじゃないか、ってくらいに説明がなかったし。

肝心のヒーローについては……「最低だなこの男!」って感じ。いやね、医師としての技量なんかはちゃんとしてると思うんですよ。でも前妻の死を乗り越えられず、彼女が生んでくれた息子をまともに見られないってとこでマイナスポイント。
次にヒロインに「将来は約束できない」と言いながらお互いに惹かれあってるんだから関係を持とうって言っちゃうところでさらにマイナス。
ヒロインはどうしてこんなダメ男に惹かれちゃったんだろう、とても不思議。

ヒロインはわりと普通のヒロイン。容姿はたぶん普通ってことなんだと思う。ゴージャスな同僚がいたりするわけで、それに比べれば一般的なイメージ。
自分の職務に忠実で、さらにできることはなんでも手伝おうとする献身的な性格。このシリーズでは珍しくないヒロイン像。そんないい感じの女なのに、どうしてこんなヒーローに惚れちゃったんだろうね。

もっともヒーローにいいところがまるでなかった、ってわけじゃない。いわゆるスーパーヒーローじゃないごく普通の人なんだと思う。いきなり妻に先立たれ、乳飲み子を抱え、職場での同情の視線に耐えられず、心にバリアーを張り巡らせて、ささくれだった気持ちを持て余してる。そういう心情はよくわかるけど、だけどそれだけじゃハーレヒーローになれないってところが問題なわけで。
最終的にはハッピーエンドだとわかっているからこそ、そこへ至る過程でドラマが欲しい。そしてそのドラマでキュンとさせてくれるのがヒーローやヒロイン、それがハーレなんじゃないかしらん。そういう要素が足りなかったってことがどうにも残念。

2012年2月5日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2012年2月5日]
カテゴリ 職場で出会い

高級ギフトショップ〈ベリッシマ〉を経営するジアンナは、ある日、夫ラウルから受けた電話に顔が青ざめた。3年別居する夫とは、そろそろ離婚の手続きにかかるつもりだが、折しも夫の母が末期癌と判明し、ジアンナに会いたがっているという。ラウル――本当は今でも心から愛する私の夫。彼とは数年前、偶然訪れたマヨルカ島で出会って恋に落ちたが、結婚後、夫の情熱はすぐに失われてしまったのだ。もし今マヨルカ島に戻れば、忘れかけていた悪夢が甦るだけなのに。なぜ今ごろ、名ばかりの妻である私が呼ばれたのだろう。ジアンナはいぶかったものの、出発を決意した。

いわゆるいつものビアンチン。
しかしこのヒーローは我慢強いというかなんというか、三年もヒロインを放っておくとは。いやはや気が長い。しかもヒロインに連絡を取った理由が母親の病気。もしそういう理由がなかったら、もっと長く放っておいたんじゃないかという雰囲気まであって、基本的に傲慢なビアンチンヒーローらしくない。
ヒロインは鉄板のビアンチンヒロインで、本当は夫であるヒーローを深く愛しているのに、なかなか素直にそれを認められない。その理由がだいたい三パターンくらいあるわけだけど、今回のはヒーローの浮気疑惑。
で、いつものように悪役登場。例によって例の如くストーカー女ですよ。このパターンはあれだね、まるで金太郎飴状態ではたして読んだことがあるのかないのか、パッと見じゃ判別不能。しかもなんとなく登場人物まで見たことあるような感じで、???って思いました。……あらすじだけじゃ判断できないんで、せめて名前くらいは似た名前はやめてください……混乱します。

そういうわけで、いつものビアンチンだったわけですが、うーん、パンチが足りなかった。そりゃ同じ筋立てだということは百も承知で読んでいるわけですが、なんかもう少しピリッとくる部分が欲しかった。
このヒロインはスペインに行くまでは意外と気骨のあるところを見せてたのに、スペインについてからは文句を言いながらもヒーローの言いなり。それがまず惜しい。
むこうの文化圏じゃほかの人のいるところで口論するのはかなりお行儀が悪いこと、っていう基本設定があるようだけど、嫌なことは嫌!と言ったほうがいいんじゃないかといつも思う。なんか結局、ヒロインはお行儀を気にして言いたいことを言わない。で、それをヒーローが楽しむ、みたいなパターン多くね?ですよ。少しはあってもいいけど、そればっかりじゃ食傷気味。パーティの席なんかじゃ仕方ないと思うけど、ブティックの店員にまで気を遣ってどうするよ?服ぐらい自分で買う気概を見せて欲しかった。

それと別れの原因となったヒーローの浮気疑惑、あんなにあっさり解決でいいんですか?三年間はなんだったんでしょうかね?
そりゃ流産直後でヒロインの精神が不安定だったということはあるでしょうが、それならヒーローがもっとはやくに手を打っても良さそうなもの。放置しとくようなものじゃない。ちゃんと証拠を提示すれば、もっとはやい時期にヒロインは戻ったんじゃないかと。もっとも三年の歳月はヒロインにとって必要なものだった、ということなんだろうけど、結局は成功させたビジネスをあっさり手放しちゃうわけだし、なんかすごく勿体ない三年間。
たぶんビアンチンとしてはそういうものすべてよりも、ヒーローとの愛を取ったヒロインという姿を描きたかったのかなあ、とは思う。……思うけれども!でもそこで愛もビジネスも、と欲張ったほうが、いまどきっぽかったような。

あとここ重要!このヒーロー、ビアンチンにしてはモノローグでちゃんと心情を吐露していて、よかったわ。ビアンチンヒーローには、ヒロインをどう思っているのかさっぱりわからないというのが多い。最後の最後、あと二、三ページで終わっちゃうってとこでよ...

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2012年2月3日

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読書状況 読み終わった [2012年2月3日]
カテゴリ 夫婦の危機

裕福な実業家の娘グレースは、知的で聡明でありながら婚期を逃がし、もうこのまま一生独身の身でいいと思っていた。そんなある日、書店で容姿端麗な貴族ジャックと出逢う。気さくで家柄もよい彼は社交界の人気者、自分など相手にするはずもないのに、なぜか行く先々でジャックに再会し、求愛されてしまう。グレースは戸惑いながらも華やかな外見とは異なる彼の知的な一面にも触れ、次第に心を許すように…だが結婚式の直前、ジャックがグレースの父親とある取引をしていたことが発覚して!?―。

ロマンスといえばホット、ではあるけれど、実はあんまりホットシーンは好きじゃない。なんか意味なくヤッてるだけ……なときがあって、そーいうのを読むならもっとそーいうのを買いますって思ってしまうわけです。
そんなわけでホット重視な作家さんのは買わないし読まないようにしてたんですが。トレイシー・アン・ウォレンはホット系な作家さんでしたっけ?
そうじゃないと思ってたんですが、なんか勘違いがあったかも。

物語はけっこう典型的な契約結婚もの。親族の負債の形に嫁入りというのと同じパターンで、違うのは負債を負ったのがヒーローのほうだということ。つまりヒーローは自分の負債を払って貰うために望んでいない花嫁を押しつけられたっていう。
ただ肝心なのは、そのことをヒロインは知らないし、悟られてもいけない、というのが条件。
そんなわけで嫌々ヒロインを誘惑することになったヒーローに、わけわからないうちに誘惑されているヒロイン。そんな二人が真実の愛に気がついて……。うわーうわーありきたり。でも大好物です!!ごっつあんです!になるはずだったんですけど。
そうはならなかった、残念。

まずヒーロー。公爵家の三男坊でこれまでの実績がほぼない。自慢できるのが賭博に負けないことと、放蕩者であること、って。しかも今回の発端はその賭博に負けた結果だし。で、放蕩者らしく魅力的な外見の持ち主。愛人アリ。
ヒロインのほうは、中産階級のお嬢様。挿絵画家として少しは収入があるけれど、自立できるほどじゃない。漠然と自立に憧れながらも、特にこれといって手は打ってなく、母亡きあとの家の切り盛りをして暮らしている。若き日に破れた恋があって自分に自信がないし、恋愛に拒否反応。
嫌々ながらこんなヒロインを誘惑することになったヒーロー。そりゃ誘惑はお手の物で、けっこうあっさり誘惑成功。なんかこのあたりでちょっとアレ?と。
確かにヒロインの父親からお墨付きもらっての誘惑だけど、ヒロインはちょっとした触れあいにも顔を赤らめる初心さの持ち主、もちろんバージン。それなのに心の隙につけ込んでのベッドインは、紳士としてどうよ?偽りの関係だからこそ、そこは自重して欲しかった。それくらいの敬意はヒロインに払ってくれてもいいんじゃないかと。
ヒロインのほうもいままでもてなかったというなら、少しはヒーローを疑えと。だいたい25歳にもなっての純情ぶりはいただけない。もう少し世間ズレしてていいんじゃないの?なんかちょっと優しくされてコロッといっちゃったって感じで、ヒロインにももにょる。

そして肝心のバレですよ。ヒーローが自分に近づいたのは、父親に賭けで負けたからだと知ったヒロイン。はてさてどうなる!?です。
このヒロインが選んだのは、条件付きでの結婚。このあたり確かにそーいう考え方はあるかな、と。婚約破棄してもこのままバージンではないオールドミスとして生きていかなくてはならないわけで、それならヒーローと結婚するという選択は確かに一考の価値はありそう。
ただね、こうなった以上、ヒロインは二度とヒーローに体は許して欲しくなかった。最初は「さわるな!」と抵抗していたのに、ずるずるとヒーローの手管にって感じで、なんかそんなにセックスが好きかと。...

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2012年1月30日

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読書状況 読み終わった [2012年1月30日]
カテゴリ ヒストリカル

英国の保養地バースで女学校を経営する女性クローディア。彼女は訳あって貴族を毛嫌いしていたが、ある日、ジョゼフという名のハンサムな侯爵が訪ねてくる。彼はクローディアの親友からの手紙を携えており、所用でロンドンへ行く予定のクローディアをエスコートさせてほしいと強引に頼み込んだ。やむなく承諾したクローディアは、旅のあいだにジョゼフの人柄を知り、意外にも心を惹かれていく。しかし、彼には父親が強く推す花嫁候補が存在していた…。『ただ忘れられなくて』で開幕した珠玉のヒストリカル・ロマンス四部作完結。

シンプリー・カルテットの最終巻、バースの女学校の女校長クローディアがヒロイン。待ちに待った期待作ですよ。いままでも何度も登場してきたクローディアは前三作のヒロインたちの保護者であり理解者であり友人であり、そして貴族嫌い、特に公爵嫌いを公言してきたわけで。そのヒロインのお相手がいずれは公爵を継ぐことになっている侯爵だというので、もう読む前から期待度MAXなわけで。
で、とりあえず最初に言わせて貰いたいのは!せめて誤字はヤメテ!お願いってことですか。

四部作の最終巻ともなれば、前三作の登場人物たち大集合はお約束。しかもこの四部作とは別にメアリ・バログにはスライトリー(ベドウィン)・シリーズというのあって、同じ世界を共有してるときた。で、そのスライトリー・シリーズは邦訳が完全ではなかったり。なのにこの「ただ魅せられて」はそのシリーズからも時代があとってことで、そのシリーズからも登場する人物たちもけっこういたりと。
だいたい19世紀英国ヒストリカル。当たり前の常識として親や親戚の称号と自分の称号が違ったりするのは良くあることで。今回のヒーロー、ジョゼフもいまはアッティングズバラ侯爵だけど将来はアンベリー公爵。同じように親が公爵や侯爵で子供が伯爵とか子爵とか、各種よりどりみどりに入り乱れ……。で、それぞれに配偶者がいてレディなんちゃらがたくさん。それも公爵家の次男以降はファーストネームでなんたら卿なので、その配偶者はもちろんそのレディ・ファーストネームなんたら……。
だけど!
そうだけどですよ、物語のなかでは親しい人たちはもちろん敬称じゃなくファーストネームや愛称で呼び合ってるわけで。
「えーと、つまり、レディ・エイダンはイブのことなんだよね?」
「ホールミア侯爵夫人ってフライヤだよね?」
みたいなことを読みながら確認するというとても大変な作業。
つまり!人物相関図を!いますぐ持ってきて!!ってことです。
なのにときどき「侯爵」が「公爵」と間違ってたりされると、もうね、いい加減にしてって感じですよ。
もともと「公爵」は「Duke」で、「侯爵」は「Marquis」なんだから、そうそう間違えることはないと思うんですが。
えーと、なんかそういうわけで、作品自体を楽しむ前にいろいろ疲れるというか、あっちこっち確認しながらというか、とてもたいへんでした。

それで。
肝心の作品はというと。……わりと普通。
いや面白かった、それは確か。登場人物がやたら多くてってことはありますが、しっかりした筋立てだし、ヒロインの貴族(公爵)嫌いの理由もすっきりしたし、スライトリーのほうで登場したポーシャ・ハントもなるほどという使い方だったし、貴族社会の常識や考え方と自分で生活している庶民階級の常識や考え方の差異とか、女学校の匿名の援助者がばれるところとか、読ませどころもたくさん。
ヒロインの考え方、生き方。そしてヒーローの考え方、生き方。貴族の考え方、生き方。それぞれに理由があって簡単に溝は埋まらないもの。それをかなりうまく描いてて、すごく良かった。面白かった。
だけど。ロマンスとしてはなんか普通って気がしちゃうのは、前三作ほど障害が大きくなかった...

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2012年1月28日

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読書状況 読み終わった [2012年1月28日]
カテゴリ ヒストリカル

ヴィクトリア時代、ロンドン。理不尽な理由で仕事をクビになったデイジーは、、夢だった作家になろうとマーロウ子爵の経営する出版社に小説を持ち込む。ところがひょんなことから著名な作家でもあるアヴァモア伯爵セバスチャン・グラントの新作舞台の批評を、新聞に書くことになってしまう。感じたままに彼の舞台を酷評したデイジーだったが、翌日激怒して出版社にやってきたセバスチャンとばったり会い、激しく文学議論を戦わせる。後日、マーロウと再会したデイジーが頼まれたのは小説を書くことではなく、セバスチャンの執筆を手伝うことだった。じつはセバスチャンは、4年近く前にマーロウが依頼した新作をまだ書き上げていなかったのだ。最悪の出逢いにも関わらず、憧れの作家と仕事ができることにデイジーの気持ちは浮き立つが、セバスチャンはどうしても執筆しようとしない。あの手この手で彼に書かせようとがんばるデイジー。そんな彼女と接するうちにセバスチャンの心にも情熱が芽生えはじめる。忘れていたはずの創作と、そしてデイジーへの熱い思いが……。

ロマンス小説なのに、まるで純文学のようなスゴイ命題ktkr!ってことにまずは驚いた。いやはや『作家にとって創作とは?』っていうのはそれはもう古今東西の名作家たちがそれこそ血反吐を吐くように挑むテーマだというのに、あっさりロマ本のなかの名も知らぬ作家がやってのけてしまいましたよ。
あらま。
しかし著者のローラ・リー・ガークも思い切ったものだ。それこそ自分の魂を削るような部分があっただろに。確かに悩んでのたうち回っているのは、当の作家であるヒーローであるわけだけど、彼の言葉は著者の言葉。それを思うとこれからだってずっと書き続けていくであろうローラ・リー・ガークにとって、このテーマに挑んで書き上げたと言うことは、かなり意味深いものであったのでないかと。

で。
肝心の内容。
うん、いやとてもへたれなヒーローで。いやー、このガールズ・バチュラーシリーズはあまり「うわ、すご、カッコイイ!!」なヒーローとはちょっと違うヒーローたちなので、これも右に同じなヒーロー。でも彼の潔いへたれっぷりは、逆に清々しいほど。自分は父親の期待にはこたえられない、自分の書くものなど価値などない、自分はもう書けない、と様々に悩みながら、でも彼はただのウジウジちゃんじゃない、ちゃんと最後の最後で踏ん張れる。「死にたくない!」と。
まじで、彼のこの苦悩だけにスポットを当ててしっかり書いたら、けっこうな純文学ですよ。しかしこれはロマ本なので、ヒーローに対してはヒロインが必要。
そのヒロインが前向きで明るくて楽天的。……はっきり言います、序盤ではこのヒロインにかなりむかつきました。感じたままをすぐに言葉にしてしまう、そんなヒロインは、見方を変えれば空気が読めず如才なく振る舞うことができない、自分本位な女なわけで。ヒロインの姉のルーシーが運営している職業安定所から仕事を紹介されても、すぐに首になってしまう。それに良心の呵責は感じてはいても、やっぱり姉が次の仕事を探してくれるだろう、って。
そりゃお金に困っていないなら、それくらいお気楽でもいいでしょうが、働いて食べていかなくてはならないなら、やっぱり如才なく振る舞うというのは持って生まれた性格がどうのこうの、ではなく、仕事をする上の重要なスキルでしょう。ルーシーが怒るのも仕方ないところ。
で、そんなヒロインが三作目のヒーローのマーロウ卿から受けた仕事が、ヒーローに本を書かせること。
人生に関する考え方が真逆な二人が、どう惹かれあい、愛を育んでいくのか、それがこの作品の醍醐味なわけですが……。残念ながらその部分の書き込みは足りなかったような。やっぱり『作家にとって創作とは?』って重いテーマで、全体がそれに引き摺られてしまった感...

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2012年1月24日

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読書状況 読み終わった [2012年1月24日]
カテゴリ ヒストリカル

1819年、イギリス。おじから遺産相続する地所へと馬を走らせていたナッシュは落馬し、気を失ってしまう。重傷を負った彼を助けたのは近くで5人のきょうだいたちと暮らす貧しく美しい娘、マディだった。その献身的な看病のおかげでナッシュは意識を取り戻すが、目覚めた時、自分が何者であるかの記憶を失っていた。ナッシュは戸惑いつつも一家のやさしさに触れ、マディの魅力に惹きつけられていく。 しかしある日、地所の差配人がマディたちに立ち退きを迫る際に口にした名前が、彼の記憶を呼び覚ました。ナッシュはイギリスの外交官であり、マディたちの住むまさにその地所を相続するためにロシアから一時帰国したこと……そして伯爵の息子である自分と身分違いのマディとは結婚できないことを――。運命的な出逢いをしたふたりの愛の行方は?  ジュリアン・クイン推薦のアン・グレイシー最新作!

定番展開のヒストリカル。
ヒーローは遺言によって相続した地主で、ヒロインは店子。それはもうありがちな設定。ただやはりアン・グレイシーだけあって読ませる。なによりキャラクターがしっかりしてる。その役割どおりに。なんか冷めた書きようだけど、褒めてますよー。
でもね、なんか定番すぎてしまって、ズキュンとこなかった。
確かにヒロインは健気。父親に捨てられ、母親に先立たれ、頼りの祖母も亡くし、そして父親に呼び戻されたと思ったら、幼い異母弟妹と病気の父親の世話に追われる。挙げ句に父親も亡くなって借金の形に結婚させられそうになる。なんとか逃げ出してあばら屋に身を寄せ、弟妹を必死に働いて育ててる。「おしん」以上のおしんヒロイン。だけど泣き言は言わずに生き抜こうとしてる。
なんかこう、凄すぎてひく、くらい。
たぶんそういう弱さの、欠点のない、ヒロインだというのが、あまり心に響かなかった理由かも。もちろんいろいろとヒロインには不備はあるのだけど、上流の作法を知らないとかね。
でもってヒーロー。
これまた定番の愛を信じていないヒーローで。便宜的に妻を求めてはいても、愛をともに育てる気持ちはない。そんなヒーローがたまたまヒロインの目の前で落馬(馬が足を滑らせて)して、記憶喪失に。
自分の暮らしていた環境とはあまりにも違う(記憶喪失でもそれはわかる)場所で目覚めたヒーローは、次第にヒロインに心惹かれていって、ヒロインもヒーローを憎からず思うようになって……。
そのあとはお定まりの展開。ほかにヒロインの周囲でおこる事件なんかも関わってくるわけだけど、基本的にはヒーローが愛を認められるか、というありがちなネタ。もちろんありがちだけど、おいしいネタですが。
ただね、シンデレラストーリーというなら、もうちょっと華々しさがあってもよかったかなーと。

2012年1月23日

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読書状況 読み終わった [2012年1月23日]
カテゴリ ヒストリカル

若くして女学院(フィニッシングスクール)の校長となり、奮闘の日々を送るエマに最大の危機が訪れた。領主の甥であるグレイが地代の大幅な値上げを要求してきたのだ。
玉の輿を狙う女性に辟易し、女学院を”結婚斡旋所”と呼ぶ放蕩貴族グレイと、生徒の幸せを願い、レディのたしなみを教えるエマは真っ向から衝突。
ついには女学院の存続をかけて、どちらがより効率的な領地の管理計画を立てられるか、そしてどちらの授業が生徒たちのためになるのか勝負することに。
しかし口論の最中ふいにグレイがエマの唇を奪い、事態は思わぬ展開に……?

「リング・トリロジー」の三作目。
大団円で華々しく……、とはならなかった、残念ながら。
例によって頑張ってるヒロインと誤解してるヒーロー、という定番。しかしロマ本ヒーローというのは、思いこみだけでよくもまあ突っ走れるな、と。ちょっとは自分の過去の経験だけに囚われずに、調べようよ。そしたらこんなページ数は要らなかった。それを言っちゃオシマイだけど。
で、やっぱりロマ本としては欲しいわけですよ、さっそうとヒーローがヒロインを救いに現れる場面というのが。
それが……。落馬して泥だらけで登場って。しかもただ結婚を申し込んだだけで問題解決って。それってあんまりにもあんまりじゃありませんか、長々と読んできただけに。いえね、面白くはあったんですよ、面白くは。
頑固だけど一生懸命なヒロイン。生意気なところもあるけれど、ヒロインを大好きで慕っている生徒たち。ともに学校をよくしようとしている同僚教師たち。ヒロインの気持ちを理解して援助してきた伯爵夫妻。ヒーロー側でもいかにもなヒーローの女友達?たち。なんだかんだ言って頼りになる友人。ヒーローに取り入ってうまくやろうと策略を巡らす青年、とか。
そういう魅力的な登場人物たちが織りなす物語にはグイグイと引き込まれたし、二人の賭けの行方にはハラハラしたし。
それなのに、肝心のラストが……。
せめて賭けくらいすっきりと終わらせられなかったのかしらん。それがあればカタルシスが感じられたのに。
あと前二作のヒーロー、ヒロインたち。せっかく登場したのに登場しただけっていうのは残念。そりゃちょっと凄んだりした場面はあったけど。もうちょっと活躍の場があっても。

2012年1月21日

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読書状況 読み終わった [2012年1月21日]
カテゴリ ヒストリカル

シャーリーの父は生前、画家としてそれなりに名を馳せていた。今夜は、その父が遺した裸婦画の展覧会初日だ。収益を寄付するつもりで展示に踏み切ったものの、裸婦画のモデルが皆、父の愛人だったという噂を思うと、心境は複雑だ。そんな彼女のもとに、画廊のオーナーがひとりの男性を連れてきた。父の最後の作品である、黒髪の女性がモデルの裸婦画を買った客だという。男性に目を向けた瞬間、シャーリーは息を飲んだ。褐色の肌、端整な顔立ち、たくましい体。信じられないほど魅力的だ。シャーリーはまったく気づかなかった―彼が残酷な復讐を胸に秘めていようとは。

ヒーローが良くわからない。

十九歳のソフィはシチリアで初めての恋を経験した。相手のマックス・クインターノはイタリア有数の実業家で、恋の噂も絶えない大人の男性だ。とうてい手の届かない存在だと諦めていたところに、ソフィを見初めたマックスが接近してきて、夢がかなう。彼女は幸せに酔いしれた。しかしほどなく、ある出来事のせいでソフィは恋を断ち切る。不意に終わった恋に、マックスの心の奥底に憎悪が根を下ろした。七年後ヴェネチアで偶然ソフィと再会した彼は、復讐を思いたつ。彼女を愛人の身におとしめ、飽きるまで利用しよう、と。

ヒーローが復習を考える理由が身勝手すぎ。

ベス・ローレンスは義理の兄マイクにどうしてもと頼まれ、彼の会社のパーティで余興を演じることになった。当日、セクシーな格好で会場に赴いたベスは、マイクのリードで踊って見せたが、くるくるまわされたせいで、彼が手を離したとたん、みっともなく床に尻もちをついてしまう。大笑いする男たちのなかに、ひとりだけ笑っていない男性がいた。きわめて魅力的だが、ベスを見る目はひどく冷たい。しかし、次の瞬間彼は表情を一変させ、にこやかに手をさしだした。その男は十年で巨大なビジネス帝国を築いた実業家として評判の、
デクスター・ジョルダンニというイタリア人だった。ベスは彼から翌日の食事に誘われ、一週間後には婚約指輪を渡される。あまりに速い展開に驚きながらもベスは舞い上がり、
デクスターが自分に近づいた真意など疑いもしなかった。

ヒロインを勝手に誤解していたのに自分は悪くないと悪びれないヒーローはあまりにも身勝手。そんなヒーローのどこがいいんだか。

ハリーは魔の手から逃げるようにロンドンをあとにした。都会に留まっているかぎり、なんとしても彼を結婚させようという縁結びが好きなご婦人方から逃れられないからだ。彼は愛馬の手綱を取り、郊外の道を飛ばしていた。その途中、道の真ん中に大型の馬車が横倒しになっている現場にでくわした。中に人が閉じこめられている。急いで助け出そうと扉を開けた瞬間、ハリーはくらくらした。極上の真珠を思わせる女性がこちらをひたと見ていたからだ。

放蕩者がメロメロになる定番。それでも必死に繕うヒーロー。展開は淡々としていてちょっと残念。

社交界でも屈指の放蕩者ジェイソンは弟の死により、爵位を継承する必要に迫られた。継承するからには結婚して、跡継ぎをもうけなくてはならない。美しく、知性もあり、屋敷の切り盛りもそつなくこなせて…そんなすばらしいレディがこの世にいるだろうか?女性関係は豊富な彼も、いざ結婚となると困惑を隠せなかった。耳よりな情報が飛び込んできたのは、そのときだ。花嫁の条件にぴったりの令嬢がレスター家にいるという。ジェイソンはいさんでレスター家主催の晩餐会に出かけていった。そしてドレスの上にエプロンを着けた、眼鏡の令嬢と対面した。三部作一作目のヒロインはレスター家の令嬢レノーア。ロンドンの喧噪をきらい、田舎の屋敷にひきこもる彼女が、とびきりのレディに変身する。

わざとださい格好をしているヒロインの魅力に気がついたヒーロー。求婚は強引だけど誠実でヒロインを愛していることに気がついてからは涙ぐましい。

『二人のバレンタイン』
ゾーイは二十歳のバレンタインデーの夜に、初恋の男性であるジャスティンと結ばれ、結婚した。ところが、寝室は別々のうえ愛し合うのも控えめで、楽しい新婚生活を期待していたゾーイの心は満たされない。さらに、ジャスティンとの深い仲をあからさまに語る女性が現れ、ゾーイは家を飛び出した。身ごもっていることも告げずに…。
『バレンタインの約束』
アルバイトで資金を得ながら全米を一人旅しているジル。二月の初め、彼女はコロラド・スプリングズに着き、さっそく仕事を得ようと街のキャンプ用品店にとびこんだ。店主のスペンスはジルに仕事を頼むことに消極的だったが、店に居合わせた老人がなぜか彼女の採用を急に勧めはじめた。だが、スペンスに危険な魅力を感じた彼女は逆に尻ごみしてしまう。

ライザは常夏のランサローテ島で休暇を楽しんでいた。そのとき突然誰かに名前を呼ばれ、振り向いた彼女は凍りつく。ニック・メネンデス!彼がどうしてここに?母親同士が親友なため、ニックのことは昔から知っている。ライザにとってニックは兄であり、英雄でもあったが、ある事件を境に二人の関係は最悪の形で砕け散ったのだ。ニックは六年前よりもさらに魅力を増していて、過去のことなど忘れたかのように、好意的な笑みを向けてくる。いつの間にか彼をうっとり見つめていたライザは、ニックの瞳に浮かんだ勝利の色に気づかなかった。

ヒロインが犯罪に荷担しているのでは、と近づいたヒーロー。そんなことには気づかずにただ再会に喜ぶヒロイン。正直になれば良かったのに。

エレノア・コギンズはパーティが行われている最中の豪奢なウェストフィールド邸に忍び込んでいた。目的はバナー・ウェストフィールドと結婚していた親友・ジャネットの死の真相を探るため。そのバナーの書斎でエレノアが机の引き出しを調べていると、突然謎の男に咎められる。二人は言い争いになるが、誰かに見られている気配を感じると、男は物陰でいちゃついている男女を装うため、エレノアに情熱的なキスをした。謎の男の正体はバナーの異父兄、ジャック・ペイトン。ふたりは互いの目的のために協力し、偽りの婚約者を演じることになるのだが…。著者の初邦訳作、サスペンスと家族愛が交錯するコンテンポラリーロマンス。

すったもんだしながらもお互いが必要なことに気がついていくふたり。思いがけない娘の存在とか、事故の真相とか、盛りだくさん。

グレースは親友のメリーの頼みで、彼女の幼い頃に決められたという顔も知らない許婚に会うための旅に同行する。親友とその父親を懸命に守りながら続ける旅の途中、馬車が大嵐に巻き込まれてしまう。グレースは彼女たちを助けようと、雨の中、城の使用人らしき美しい男に声をかけるがなぜか突然キスされてしまい…。使用人と思っていた男は親友の許婚であり、その城の主であるデーカー卿だった!「月影のメロディーを胸に」に続く、『麗しのメリデュー姉妹』シリーズ第4弾。

価値観が違いながら互いに惹かれあって、末っ子のグレイスは最後まで「足先嬢」だったし、ヒーローの夢のクリスマスだし大団円。

結婚した相手に妻と子供がいることを知ったフェイスは、身も心も傷つきながら、フランスの砂漠をさまよっていた。そんな彼女を助けてくれたのが、帰還兵のニコラスだった。そして身の上を知った彼は、思わぬ言葉を口にし。「君は俺と結婚するんだ」と。思惑があっての申し出だろうと思ったが、これでイギリスに戻れるし、住む家も得ることができるならと、求婚を受け入れることに…。フェイスの揺れ動く気持ちは、次第に愛へと変わるのか―RITA賞ファイナリスト作家アン・グレイシーが放つ、珠玉のヒストリカル・ロマンス。

こういう展開があるとは思わなかった。ヒロインは確かに愚かだったけどけっこうしっかり者だった。

読書状況 読み終わった
カテゴリ ヒストリカル

「ええ、あなたと踊るわ」そう言って、ホープはセバスチャンの手を取った。成り上がりで無骨者と噂されるセバスチャンとラストワルツを踊るなんて、社交界から後ろ指をさされるに違いない。でも、彼と目が合った瞬間、雷に打たれたような気がした。彼こそ、幼いころ夢に出てきて、愛と希望を教えてくれた男性そのものだと感じたからだった。しかし、セバスチャンには、すぐに求婚予定の女性がいて…。

ヒロインはけっこう天真爛漫で明るく現代的(その時代的に)。ヒーローは影を背負っていて家族にも問題有り。だけどヒロインに惹かれる気持ちが抑えきれず、とふたりがお互いをすりあわせていく過程が丁寧。

2010年8月5日

読書状況 読み終わった [2010年8月5日]
カテゴリ ヒストリカル
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