フェイクドキュメンタリー好きなので、本書も面白かった。続きが気になって一気に読んでしまった。
 細部はよくわからないところもあるが、未解決事件好きの人なら、あーこれはあの事件がモチーフね、みたいなところもあってリアリティが感じられると思う。
 ラストはまあそうだろうな、と予想通りだったけど、構成が優れてる。1人で書いてるのかな。だとしたらすごい才能。
 ただ作者とされる方がSNSで楽し気な投稿してるのはちょっと興ざめかも。

 ところで、山へ行きませんか?

2024年5月5日

読書状況 読み終わった [2024年5月5日]
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稀代の名優の自伝。
山﨑氏本人の語り口調で書かれているが、朗読が聴こえてくるよう。
「素人に見えるくらいうまい」が理想というのは、すごく印象に残った。若いころの苦労や挫折と、それを乗り越えてきた努力と俳優への熱意も伝わってくる。
今なお「勇気をもって投げ出すこと。守ってはいけない。」という。老害にならない秘訣かもしれない。
個人的には「男はつらいよ」や「必殺仕置人」、「九門法律相談所」の話も「聴き」たかった。

2024年4月30日

読書状況 読み終わった [2024年4月30日]
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著者が好きな某番組の放送作家で番組内で紹介されていたので、読んでみた。
ミステリーだけど、何というか全体にやさしい。いわゆる安楽椅子探偵もので、各章のトリックを理詰めで解いていく展開もまあまあ面白いし、ミステリーの蘊蓄なんかも興味深い。でもこういうゆったりした感じのミステリーは個人的には甘すぎるかなあ。それでも最終章は、作品内でも紹介されていたネタも使われていてうまいなあと思いました。
本作は『このミステリーがすごい!』大賞受賞作ですが、全選考委員の選評も面白い。評価が大きく分かれている候補作もあったことがわかり、ミステリーに正解はないんですな。

2024年3月22日

読書状況 読み終わった [2024年3月22日]

 人の知覚、感情、思考は、脳だけでなく、自らの身体的特徴、今いる環境、育ってきた文化に大きく依拠することを心理学的知見からわかりやすく解説する一冊。
 いわゆる決定論の立場に連なるが、宿命論ではなく、人の感情・思考もまた同じように外部の影響を受けて変われる、ということを明らかにしてくれる。
 昨今、AI(人工知能)が進化し、人間も「脳」の重要性がクローズアップされるが、身体、環境、文化の影響を受けるかどうかで、AIと人間とは決定的な差異があると感じた。

2024年2月26日

読書状況 読み終わった [2024年2月26日]
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 「青春小説」とされているけど、少し違う気がする。かといって恋愛小説でも、ミステリー小説でも、ホラー小説でもない。不思議な短編集。
 登場人物は、みんな何か抱えていて、夏がそれを解放してくれるような、悪い方向に助長するような・・・。かといって読後感が悪いわけでもない。

 一番のお気に入りは、「生き残り」。
 
 以下ネタバレを含むが、野球部の虐待的しごきといじめにも耐えた「篠くん」を高校生活最後の期間限定の彼氏に選んだ「梨奈」。ところが、篠くんは継父に虐待されていた。それへの同情もあって篠くんを本気で好きになる梨奈。だが、実は本人が気づいていないだけで、梨奈もシングルマザーの母親にネグレクトされてる。そんな二人が結ばれて、夏の最後に逃避行をしようと試みる。二人には幸せになってほしいが、梨奈は「この夏が終わっても、私はまだ生きられるのかしら」と思う。このラストで、切ないというか、うすら寒さを覚えるというか、何とも言えない気持ちになった。

2023年12月4日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2023年12月4日]
カテゴリ 読もうよ!

 フォロワーの方の本棚から知り、猫好きということもあって、読みました。
 短編集で、どれも優しい物語。照れくさくなるほどいい話ばかりだけど、分かり合えないと思ってる人のことを理解できた瞬間や、自分の思い込みの殻を破った瞬間の描写が見事で感動した。
 特別な事件が起こるわけではないし、誰もが人生で抱える悩みのお話だけど、ちょっとした悩みだからこそ、神さまにたまには頼ってもいいのかなと思ったり。
 各話が微妙にリンクしているのも楽しい。 

2023年11月20日

読書状況 読み終わった [2023年11月20日]
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 まず文章が硬すぎる。アリストテレスを道学者風などと批判的に分析するが、著者もそれに劣らず、といった感がある。おそらく最後に検討したラッセルに依拠して、人の幸せとは、地味でひかえ目で身近な穏やかな生活を隣人と片寄せあって過ごすこと、というのが著者の「幸福観」であると思われる。その帰結から、古代、近代、20世紀の西欧哲学者の幸福論が論断されていて、全体に客観的な記述ではない。 
 勿論、いいたいことはわかるし、間違っているとは思えないが、個々人が他者との共存を守る範囲では、派手で目立つ華やかな生活を送ろうとすることも、個人の自由であるし、その人の「幸せ」であることは否定しえないように思う。国との関係では「大状況の色に染まらない、自分独自の幸福」というのは、その通りではあるが、著者の主張は、身の丈に合った慎ましい生活を甘受せよ、という押しつけ風にどうしても聞こえてしまう。
 他方で、経済学の祖・アダム・スミスが共感の道徳を踏まえて、各人の差異に応じて、他人との取引・交換をするという社会活動こそが経済活動の根幹をなす、と考えていたという趣旨の分析は面白かった。また時代ごとの社会の変化・当時の思想潮流とを踏まえて、哲学史が検討されているのも参考になる。
 それにしても、やはり全体として堅苦しさがあることは否めない。

2023年11月7日

読書状況 読み終わった [2023年11月7日]
カテゴリ 学ぼうよ!

 現在からすると、タイバ重視、中身のないコンテンツ量産の何とかチューバーへの風刺がつまってる。
 
 作者が、この物語は、過去のものかもしれないし未来のものかもしれない、と述べているとおり、現在社会のひずみを見事に予見していた、といえる。

 小難しいことをおいても、時間泥棒との対決は、ハラハラして最後は一気に読んでしまった。モモの友だちへのけなげな想いが胸を打つ。また、観光案内人のジジが有名人になって金持ちになったのに、それでも満たされない「地獄」に留まらざるをえない、と独白するシーンで、涙ぐんでしまった。大人も感動して、考えさせられる一冊。

 タイパ重視の若者には、一息ついてぜひ読んでもらいたい。時間泥棒にやられて、もう心に響かないかもしれないけど。

2023年10月31日

読書状況 読み終わった [2023年10月31日]
カテゴリ 読もうよ!

 スタートレックなどのSFTVドラマを面白おかしくディスる内容かと思いきや、パラレルワードにタイムスリップをひねりをきかせて、大胆に展開。そして少しホロッとさせる佳作。
 ただ、自分はラストあたりでよく理解できない箇所があったし、イントレピッド号の顛末はどうよ?とも思った。
 ともあれ、特にスタトレファンは一読の価値あり。 

2023年10月27日

読書状況 読み終わった [2023年10月27日]
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 ラストが評判通りすごかった。内容自体は普通かもしれないが、アイデアの大勝利。最後の最後は少し鳥肌立った。
 著者はすごく頭がよく、そしてすごく努力したと思う。敬意を表したい。
 書籍の電子化に一石を投じる一冊でもある。

2023年10月6日

読書状況 読み終わった [2023年10月6日]
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乾いた文章は好きだけど、登場人物に感情移入できなかったかな。武士道とか男の心意気とかに興味ないからかな。「碁盤の首」はラストのどんでん返しがよかった。

2023年10月2日

読書状況 読み終わった [2023年10月2日]
カテゴリ 読もうよ!

 日本の知識人・オピニオンリーダー11人の思想とその原点をわかりやく解説している。各人の経歴など、多少退屈に感じるところもあったが、文章もよみやすく、その時代の思想風潮もよく理解できた。
 各人は、多かれ少なかれ、「天皇」をどう位置づけるかにも心を砕いており、天皇は日本独自の思想背景としてなくてはならぬ存在であったこともよくわかった。近年はむしろ天皇に触れることはタブーのような風潮があるが、(どう位置づけるかにかかわらず)天皇抜きに日本の思想は論じられない、というのが、本書の裏テーマなのかな、と感じた。
 知ってるようで知らない日本の代表的な知識人達の主張の概要を学ぶには最適の一冊。

2023年9月25日

読書状況 読み終わった [2023年9月25日]
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 政治や生存・財の配分について、「くじ引き」を活用することの意義を各論者が哲学、政治学、関連法学の観点から、多角的に検討する一冊。
 結局のところ、おおざっぱに言えば、哲学的な思考実験にすぎないのだが、覇権主義の台頭、特に日本での投票離れなどから、民主主義の根幹が問われている中で、くじ引きを通じて、平等や政治の在り方を問う意欲的な内容。特にくじ引きが、モイラ(公正・公平)として、古代ギリシア時代に、神意的な問題解決の手段としてとらえられていたという1章の内容は興味深かった。

2023年8月27日

読書状況 読み終わった [2023年8月27日]
カテゴリ 学ぼうよ!

 いわゆる倒叙もの。だが、スケールがでかい。場所はイギリスからイタリア、期間も1年近くを要している。
 探偵(元刑事)と犯人との心理戦が見どころの1つのだが、現代的にみると、今ひとつ。
 ラストは、少しほんわかさせられる。

2023年8月5日

読書状況 読み終わった [2023年8月5日]
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 人間には尽きることのない、知りたい、という好奇心がある。その好奇心によって、まずありのままにあることを受け入れたうえで、そのあらゆることの本質を自分の殻に閉じこもらずに探求することが哲学である。これがアリストテレスの言いたいことだ、ということかなあと思う。アリストテレスもすごいけど、彼の思想を批評・発展させてきた哲人たちもすごい。
 個人的には、著者によるアリストテレスの考え方のまとめ、4つの「し」、信頼、収集、習熟、知るが印象に残った。ただ本書は、決してタイパ重視のアリストテレス哲学のお手軽入門書ではないことを記しておく。

2023年7月28日

読書状況 読み終わった [2023年7月28日]
カテゴリ 学ぼうよ!

 試みも素晴らしく、悪い本ではないが、とにかく読みにくい。語彙の例中の別の語彙にも解説が適宜加えられ、1つの語彙が頭に入りにくい。索引もネット上にしかないのも不便。余白が多いのだから、紙媒体にも索引はあってほしかった。
 それでも知らなかった語彙やなんとなくわかっていたような語彙の正確な意味を知ることができた。ただここでの語彙のほとんどは一般的に共通認識がないので、使いづらいかもしれない。
 
 個人的に今後使ってみたい語彙
「地を易うれば皆然り」、「無音」、「耳食」、「顰みに倣う」、「痛惜」、「肯綮に中る」、「批正」。

2023年7月2日

読書状況 読み終わった [2023年7月2日]
カテゴリ 学ぼうよ!

 人が生きるとはどういうことか、失敗から何を学ぶか、といった現在の子どもにも大人にも通じる人間の価値を考えさせる一冊。とても戦前に書かれたとは思えない。
 でも、活字離れで、タイパとかバカなことを追求する今の子どもや若者たちは読まないだろうなあ・・・。

2023年6月19日

読書状況 読み終わった [2023年6月19日]
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 短編集。
 1話の惨者面談は、最後にやられた、という感じ。2話のヤリモクと3話のパンドラは、途中で筋がわかっちゃったかな。4話の三角奸計は複雑な割に凡庸な内容。
 5話の拡散希望は、文句なしに面白かった。最後が少し強引な気もするが、ラストはゾッとさせられた。タイトルもラストを読むと意味深。
 5話があったから星4つ。

2023年5月9日

読書状況 読み終わった [2023年5月9日]
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 イラストも多く、解説も平易なので、読みやすい。ただ、これが知識として頭に残るかは少し疑問もある。

2023年4月7日

読書状況 読み終わった [2023年4月7日]
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 プラトンとアリストテレスとの架空の会話をもとに、古代ギリシア思想に基づいて、正義と権力との関係を明らかにしようと試みる一冊。
 内容は表面的にはわかりやすいが、実質的にはかなり奥深い。徳における中庸、節制、揺曳、フェア精神とヘイトの禁忌、これを万人は極められなくても、愛好はできる、そこから善き国家、善き生き方の第一歩を踏み出そう、ということかと思う。コロナ禍、ウクライナ侵攻で、分断・対立が深刻になった現在社会でこそ、本書の内容を噛みしめたい。

2023年3月20日

読書状況 読み終わった [2023年3月20日]
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ドイツの政治と思想の歴史が凝縮して整理されており、現在に至るまでの流れがよくわかった。ナチ政権の反省から、過去を忘れようという動きだけでないとか、西欧の普遍とドイツの固有との狭間で、今もドイツは(実は)悩んでいるということも知ることができた。
 ただ、史的事実に忠実に描かれ、著者の意見はほとんど書かれていないので、読むのに少し退屈した面がある。著者撮影のものも含めて写真も多いのだが、各年代ごとの地図(一部しかない)や年表などの資料もあるとよかったかなと思う。

2023年1月23日

読書状況 読み終わった [2023年1月23日]
カテゴリ 学ぼうよ!

 表紙では、ベーシックインカムの導入、一日3時間労働の主張が強調されているが、多数の統計・実証的研究に基づいている地に足の着いた本。貧困が人の長期的な視野・冷静な判断力を奪うという分析は衝撃的だった。
 著者の支持するハイエクの新自由主義がどこまで正しいかはわからないが、福祉をやめベーシックインカムを平等に分配することが、むしろ自立につながる、という主張はよく理解できる。ベーシックインカム導入はともあれ、平等な負担で貧困を解消しないと、既得権益(?)を受けている高齢者の福祉制度を維持することも困難となり、共倒れになる。そこでま現状が来ていることを再認識させてくれる一冊。

2022年12月27日

読書状況 読み終わった [2022年12月27日]
カテゴリ 学ぼうよ!

 心(精神)と身体との関係をわかりやすく解説した講演をもとにした一冊。

 意識の抑圧などの精神状態が身体的な病気の要因となることが、具体例を挙げて説明されているところが面白かった。

 基本的にはフロイトの理論に則り、身体、エス、自我、上位自我(良心)と外界との関係が平易に示されている。
 
 人は、元々良心を兼ね備えており、毎日、外界からの影響を受けつつ、睡眠をとることで、抑圧された無意識から解放され、(元々持っている)真の道徳的・宗教的自由を獲得する。それは、国家・都市も同じで、心身共に正しいリズムで生活を送ることで、より良い方向に進化することができる。少しわかりにくいところもあるが、これがボスの言いたかったことのようである。しかし、この点をもう少し掘り下げてほしかった。
 
 とはいえ、人の心(精神)と身体との医学的関係をざっと知るには最良の一冊といえる。

2022年12月4日

読書状況 読み終わった [2022年12月4日]
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 西欧文明における動物裁判の発祥を多角的に検討する一冊。動物裁判の生々しい様子は、興味深かった。

 ただ、その考察に関しては、難解だった気がする。機械による自然の克服と宗教、哲学などが微妙に絡み合い、動物(自然)を人間の支配下に置こうとした、というのがおそらく主題だと思われる。近代以降は、動物裁判を野蛮なものとして克服し、動物保護の思想も定着したが、その反面、人間中心の動物・自然の支配という観念が生まれ、それが深刻な環境破壊の根深い要因になっている、というのが著者の主張なのだが、わかったようなわからないような、少ししっくりこないものが残った。

2022年11月29日

読書状況 読み終わった [2022年11月29日]
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