武器よさらば (新潮文庫 ヘ 2-3)

  • 新潮社 (1955年3月1日発売)
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本棚登録 : 532
感想 : 36
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第一次世界大戦を体験し、そのた体験をもとに書かれた小説がヘミングウェイの『武器よさらば』である。
十年くらい前に読んでいた本を、久しぶりに再読。

第一印象:アメリカ人、常に酒飲んでる。
主人公はアメリカ大使の息子ながら、イタリア軍に従軍しているアメリカ人衛生隊員ヘンリー。
話の舞台はイタリアであり、なので常に酒を飲んでいるのは主人公だけではなくてイタリア人もなのでしょう。
病める時も健やかなる時も、愛する時も哀しむ時も、傍らには酒。
そこは別に突っ込むべきところじゃないんでしょうが、日本人としては違和感がありました。やっぱり文化が違うんだなあ、と。

文化の違い、と言えば、翻訳ものの小説にはいつでもそれを感じずにはいられません。
一度日本語に翻訳されているのだから、どういう意図をもってその言葉が紡がれているのか分からなくなる。
その二度の言語変換が感情をダイレクトに使えてこなくて、どの文章を読んでも淡々としたものを感じてしまいます。でもそれが、作者が伝えたかった虚無感なのか、単に翻訳の弊害であるのかが自分には読みとれない。

もう一つ感じたのは、『戦争』というものへの認識の違い。
自分は日本人です。なので、自分が身近に(と言うのもおこがましいですが)感じる戦争といえば、太平洋戦争か、もっとずっと遡って関ヶ原の戦いです。
つまり、兵隊以外も常に死の恐怖に怯える戦争と、もっと原始的な武器しかなく、長引かない戦です。

この小説の中にあるように、前線では銃によって人がどんどん死んでいる。でも、飛行機や自動車等はそんなに発達していないので、ちょっと前線から退くと、バーで酒を飲んだりビリヤードしたり出来る、という事態が、自分の『戦争』についての認識と違って不思議でした。
日露戦争や日清戦争は、こんな感じだったのでしょうか。
まあ主人公は金持ち権力持ちの設定だったので、高級ホテルに泊まったり娯楽品をどんどん買える身分だった、ということも十分影響があると思いますが。

ちなみに『武器よさらば』というタイトルから、自分は「戦争反対! 武器なんか持たなくなれば幸せになれるんだ!」という話を想像していましたが、そんな話ではありませんでした。
最後がちょっと意外です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外作品(小説)
感想投稿日 : 2011年1月22日
読了日 : 2011年1月18日
本棚登録日 : 2011年1月5日

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