本を読んでいて、物語や登場人物に救われることは多々あったけれど、本に殺されるかもしれないと感じたのは初めてかもしれない。それほど、この本を読んでいて死にたくなりました。
大学のオーケストラの学生と指揮者の恋、学生同士の友情。エゴにまみれた身勝手な、それでいて断ち切れない依存と妄執が、「恋」と「友情」の二つのパートで、それぞれ主人公とその親友の視点から書かれています。
順調だったはずの恋と友情が、次第に泥沼化して、「相手は自分のもの」という強い思い込みが相手や周囲への疑いになり、妄想になって我が身を苛む。決して初めて読むような話ではなかったですが、辻村さんの文体で書かれてしまうと、とても他人事には思えない、真に迫った感じがしてしまいました。
「友情」パートを読んだとき、「わたしは留利絵だ」と思いました。留利絵ほどの執念深さも計算高さも持ってはいませんでしたが、蘭花を思いやるような言葉や態度の裏が、すべて自分自身のためだったということ、そしてそのエゴを認めたくないあまりに、すべてに「親友のため」という言い訳を自分自身にしていたこと、さらに、蘭花以外の存在をさも敵のように思い込んで、がんとして考えを改めなかったことまで、シーン一つひとつがいちいち胸に刺さって苦しかったです。
美波のように軽やかに人生を歩める人もいれば、留利絵のようにコンプレックスに押しつぶされそうになりながら生きる人もいる。
かつて留利絵のように生きてきたわたしが、美波の気持ちも少しわかるようになれて良かったなと、いまは思います。
同時に、留利絵の存在はこの先もわたしのなかから消えることはないだろうとも思います。
- 感想投稿日 : 2017年2月18日
- 読了日 : 2017年2月18日
- 本棚登録日 : 2017年2月18日
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