文庫版 絡新婦の理 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2002年9月5日発売)
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本棚登録 : 6746
感想 : 553
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「あなたが蜘蛛だったのですね」。珍しく冒頭から黒衣の京極堂が登場する。一面の桜という舞台設定も相まって、その人との対話のシーンはひどく幻想的にうつった。最後まで読み切って、改めて最初のシーンに戻ったのは言うまでもない。ああ、この物語も美しさをはらんでいるのだなあ……。
久しぶりの再読、相変わらず記憶を失っていたが、織作家姉妹が登場した瞬間に真犯人だけはパッと思い出してしまった。折角ならすべて忘れきったまま読みたかった……。
学院での美由紀の視点は、ひたすらにしんどかった。こんな八方塞がりの状況に子どもが置かれているなんて……あまつさえ暴行も受けるとは……と十代に関してはどうしても親目線的なものを向けてしまう。関口君が最終章にしか登場しないため、事件を見つめる目として必要なポジションだったのは分かるが、しんどかった。
過去の事件の登場人物が関わったり、新たな展開にいたったり、そうやって関係性が折り重なっていくのが楽しくなってきている。益田君は榎木津と上手くやっていけるのだろうか。今回はちゃんと順を追って読み返してて良かったと思う(姑獲鳥の夏はまだだけど)。
最後に、再読しはじめて薄々感じていたのだが、私はやはり木場がたまらなく好きみたいだ。外面は厳つい刑事として作り上げてるのに思索の沼に沈むところなど特に。なので今作はまっとうに(?)活躍していて、その視点思考を辿れて、本当に美味しかったです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 講談社文庫
感想投稿日 : 2023年10月27日
読了日 : 2023年10月26日
本棚登録日 : 2023年10月26日

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