幻想的なタイトル。自殺へと仕組まれた3人の女性の死と次は自分ではないかと怯える4人目の女性。彼女たちが隠し持つ現実的な社会問題。そして彼女たちともその社会問題とも関係のなかった16歳の少年。
全く接点が見えなかったものたちの糸が次第に結ばれ絡まり、徐々にほどけて最後に1本の糸となる、そんな社会派ミステリー。
父が失踪し母が病気で亡くなったあと、伯母のより子一家と暮らすことになった16歳の少年、日下 守。
守を通して事件は解明されていくのだけど、この物語は単なるミステリーではなくて、守を救済するための物語でもあったんだろうなぁ。
だって守がいい子すぎなんだもの。本当に聡い子。
そしてその賢さが彼の過去を通じて身についたものなんだとしたら……
わたしはなんだか彼の頭を撫でてあげたくなった。
伯母のより子が、「あんたは強いからね、心配なんだよ。強い人間は独りでいたらいけないんだ。みんな自分で抱えこんじゃう」みたいなことを守に話すんだけど、本当にそうだよ。
守自身は気づいてないのかもしれないけど、すでに人生を悟ったと思い込むことで、ギリギリのところで立ってるんだろうなと想像せずにはいられなかった。
守はどうなっていくのだろう、どうすればいいのだろう。そんなことを考えてるうちに、善と悪、過去と現在、そういうものを単純に2つに分けることってできないよねと改めて気づく。
感情って簡単に割りきれるものじゃない。
赦すことと赦さないことも然り。
だから心は揺れ動く。
わたしにとってこの物語は単なるミステリーでは終わらなくて。守が独りでかかえこんでいた何かから解放される、そんな救いの物語でもあったのだ。
- 感想投稿日 : 2021年4月30日
- 読了日 : 2021年4月30日
- 本棚登録日 : 2021年4月30日
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